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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

ベンチャー企業への投資における残余財産分配優先権とみなし清算条項

残余財産分配の優先権

株式会社は残余財産の分配について内容の異なる2以上の種類の株式を発行することができます(会社法第108条1項2号)。

残余財産の分配について内容の異なる2以上の種類の株式は、残余財産の分配において一方の種類株主を優先させて、他の種類株主を劣後させる、というような用いられ方をします。

≫残余財産の分配に関する種類株式

事例としてはあまり無いかもしれませんが、特定の種類株主には残余財産を一切分配しないと定めることも可能です。

ベンチャー企業への投資と残余財産の分配

ベンチャー企業へVC等から出資が行われるときは、種類株式を使用されることが少なくありません。

その場合、種類株式の内容として必ず残余財産の分配に関して優先される旨が盛り込まれます。これは何故でしょうか。

例えば、株式会社X(代表取締役A)の発行済株式の全てを創業者Aが保有していて、Aは1株1000円で1000株(資本金100万円)分の出資をしていました。

株式会社XにVCが1株20万円で200株(4,000万円)を出資をしたとします。

この場合、出資後の持株比率は、Aが1000株(約83%)、VCが200株(約17%)です。

ここでAが、自身が株主総会の特別決議を成立させることができるとして株式会社Xを解散するとどうなるでしょうか。

1種類の株式しか発行していない株式会社においては、残余財産につき、株主の有する株式の数に応じて残余財産を割り当てなければなりません(会社法第504条)。

仮に出資後しばらくして解散が行われ、そのときの残余財案が3,600万円であった場合、分配される残余財産はAが3,000万円、VCが600万円となります。

残余財産分配優先権

上記のようなリスクを回避するために、VCは残余財産分配優先権の種類株式を用いて出資をすることが少なくありません。

会社が解散したときは、普通株主(A)に対して、VCが少なくとも出資額の1倍~1.5倍(上限はありません)を優先して分配を受けられるように設計します。

定款記載例

当会社は、残余財産を分配するときは、A種優先株式の保有者(以下「A種優先株主」という)またはA種優先株式の登録株式質権者(以下「A種優先登録質権者」という)に対し、普通株式の保有者(以下「普通株主」という)または普通株式の登録株式質権者(以下「普通登録質権者」という)に先立ち、A種優先株式1株につき、金200,000円(以下「A種優先分配額」という)を支払う。

このように定めておくとどうなるでしょうか。

上記の株式会社Xにおいて、解散時の残余財産が3,600万円となるケースにおいても、3,600万円全てがVCに分配されることになります。

このように残余財産優先分配権を付けておくことで、株主Aが自身の利益を図って解散することを防ぐことができます。

また、もし解散されたとしても、投資資金の一定額を回収することもできます。

参加型と非参加型

VCが残財産分配優先権を保有しているケースで、株式会社Xの残余財産が4,600万円だった場合はどうでしょうか。

まず、種類株式の残余財産分配優先権に従い、VCに対して4,000万円を分配します。

残った600万円をどのように分配するかについては、当該種類株式の残余財産の分配に関する規定につき、参加型か非参加型で結果が異なります。

参加型であれば、残った600万円につき、Aに500万円、VCに100万円が分配されます。

非参加型であれば、残った600万円全てをAに分配します。

みなし清算条項

残余財産分配優先権は、あくまで解散、清算手続きにおける残余財産の分配に関して、優先権を保有している株主が優先されるという条項です。

ここで、株式会社Xを3,600万円で買いたいという会社があった場合、その対価はどのように株主へ分配されるでしょうか。

この対価は残余財産ではないため、残余財産分配優先権をVCが保有していても、それによってVCが優先的に分配されるわけではありません。

この対価は持株比率に応じて分配されることになりますので、Aが3000万円、VCが600万円取得することになります。

これではVCは困ってしまいますね。

そこで、みなし清算条項を投資契約に盛り込むことが考えられます。

みなし清算条項とは、会社が合併その他手段によってM&Aされたときに会社を清算したとみなして、残余財産分配優先権を適用し、投資家が優先してその対価の分配を適用することをいいます。

みなし清算条項がある場合、上記の例ではVCが3,600万円全てを受け取ることができるため、Aが株式会社Xを3,600万円で売り自分だけが利益を得るというインセンティブは無くなります。

Aが会社を売却するのであれば、少なくとも4,000万円以上で売るために動くことになるでしょう。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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