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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

残余財産の分配に関する種類株式の内容と定款の記載例

残余財産分配に関する種類株式

株式会社は残余財産の分配について内容の異なる2以上の種類の株式を発行することができます(会社法第108条1項2号)。

株式会社は解散をすると、残余財産を確定させ、債権者に債務の返済をし、それでも会社の残った財産(残余財産)を株主へ分配することになります。

残余財産の分配について内容の異なる、とは、例えば他の株式より残余財産の分配を優先される株式や、他の株式より残余財産の分配が劣後する株式、全く残余財産の分配がない株式が考えられます。

残余財産の分配について内容の異なる株式を発行していないときは、1株当たりの残余財産の分配額は同じものとなります。

≫種類株式の基本

剰余金の配当も残余財産の分配もない種類株式

剰余金の配当を受ける権利及び残余財産の分配を受ける権利の、両方を全く与えない種類株式は認められていません(会社法第105条)。

そのため、残余財産の分配を受ける権利を全く与えない種類株式は、少なくとも剰余金の配当は(劣後しても)受けられるように設計します。

なお、残余財産を全く分配しない種類株式は実務上用いられているケースはほとんど見かけません。

100%減資やキャッシュ・アウトをするために全部取得条項付種類株式の当て馬として用いられることがあった、くらいでしょうか。

残余財産の分配に関する種類株式の使われ方

ベンチャー企業への出資に種類株式を用いる際は、残余財産の分配に関する事項が入っていることがほとんどです。

出資額の1倍(何倍でも設計は可能ですが、多くのケースでは1倍)の金額につき、残余財産を優先して分配を受ける種類株式の内容にしておくことにより、出資後に解散されることへのケアをすることができます。

また、併せてみなし清算条項についても定款に定められることが少なくありません。

≫ベンチャー企業への投資における残余財産分配優先権とみなし清算条項

残余財産分配種類株式

残余財産の分配に関して内容の異なる種類株式を発行するときは、定款を変更し、変更登記を法務局へ申請します。

残余財産分配種類株式としては、一例として次のような定め方がある他に、参加型と非参加型の定め方があります。

当会社は、残余財産を分配するときは、A種類株式を有する株主に対して、普通株式を有する株主に先立ち、1株につき金1万円を支払う。
当会社は、A種類株式を有する株主に対しては、残余財産を分配しない。
参加型の残余財産分配優先種類株式

参加型の残余財産分配種類株式とは、株式会社が他の株式に優先して残余財産の分配を行った後においてもまだ分配すべき残余財産が残っている場合に、他の株式とともに残余財産の分配を受けることができる残余財産の分配に関する種類株式のことをいいます。

参加型の方が非参加型に比べて、当該種類株主にとっては有利です。

定款の記載の一例としては、次のようなものとなります。

1. 当会社が残余財産を分配するときは、A種類株式を有する株主(以下、「A種類株主」という)に対して、普通株式を有する株主(以下、「普通株主」という)に先立ち、1株につき金1万円の優先分配金(以下、「優先分配金」という)を分配する。

2. A種類株主に対して優先分配金が分配された後に普通株主へ残余財産を分配するときは、A種類株主はA種類株式1株当たりにつき、普通株式1株当たりの残余財産分配額と同額の残余財産の分配を受ける。

非参加型の残余財産分配優先種類株式

非参加型の残余財産分配種類株式とは、株式会社が他の株式に優先して残余財産の分配を行った後においてもまだ分配すべき残余財産が残っている場合に、優先して受け取った残余財産以外の分配金を受けとることができない残余財産の分配に関する種類株式のことをいいます。

定款の記載の一例としては、次のようなものとなります。

1. 当会社が残余財産を分配するときは、A種類株式を有する株主(以下、「A種類株主」という)に対して、普通株式を有する株主に先立ち、1株につき金1万円の優先分配金(以下、「優先分配金」という)を分配する。

2. A種類株主に対しては、優先分配金の他に残余財産を分配しない。

発行可能株式総数と発行可能種類株式総数

普通株式を含めた各発行可能種類株式総数の合計数が、発行可能株式総数より多いということも可能とされています。

発行可能株式総数、発行可能種類株式総数については、こちらの記事をご参照ください。

≫株式会社における発行可能株式総数のいろいろ

既存株主の株式の内容を変更

種類株式の発行は、出資を受けて新しく株式を発行するときに行うことができる他、既存の株主が所有している株式の内容を当該種類株式に変更することも可能です。

例えば、普通株式しか発行していない株式会社の株主ABCがいたときに、Aが所有する株式を普通株式から種類株式に変更することができます。

既存株主の株式の内容変更につきましては、こちらの記事をご参照ください。

≫発行済株式の一部の株式の内容を変更する登記手続き


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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