商業登記関係 取締役の再任をした定時株主総会日の翌日以降に代表取締役を選定すると「退任」「就任」
定時株主総会と取締役の再任
株式会社の取締役には必ず任期があり、任期が満了した後も同じ人が取締役であり続けるのであれば、任期が満了するタイミングで当該取締役を再任する必要があります。
定時株主総会における取締役の再任手続きや登記については、詳細はこちらの記事をご確認ください。
≫定時株主総会における取締役・代表取締役の変更登記と添付書類(取締役会設置会社)
取締役の地位喪失と代表取締役選の退任
他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合を除き、取締役は、株式会社を代表します(会社法第349条1項)。
代表取締役の地位は取締役の地位をベースとしていますので、代表取締役が取締役を退任したときは、原則として代表取締役も退任します。
取締役の任期満了に伴う重任とは、退任と就任が同時に生じることですので、取締役を再任したとしても、取締役を一度退任することにより原則として代表取締役も退任することになります。
同じ人に代表取締役を続けてもらうのであれば、取締役の再任と同様に、代表取締役の再任の手続きが必要です。
権利義務代表取締役
取締役の再任をしなかったとき、取締役の再任はしたけれども代表取締役の選定をしなかったときは、既存の代表取締役が権利義務代表取締役になることがあります(会社法第351条1項)。
権利義務代表取締役につきましては、こちらの記事をご確認ください。
代表取締役の登記が重任となる場合、退任+就任となる場合
最もオーソドックスなパターンは、定時株主総会を開催して取締役を再任し、それが終結した後に取締役会を開催して代表取締役を選定するパターンです。
この場合、取締役の退任=代表取締役の資格喪失による退任と代表取締役の就任の間に時間がありますが、同日にその就任承諾をする限り、代表取締役につき「重任」の登記をすることが可能です。
代表取締役の予選
定時株主総会より前に、一定の条件を満たすときは、代表取締役を予選することも可能です。
株主総会の招集の決定に関する取締役会決議(会社法第298条1項)において、定時株主総会で取締役に選任され就任することを条件として、代表取締役を予選するケースも少なくありません。
代表取締役の予選をできるケースは、こちらの記事をご確認ください。
≫取締役会の決議で代表取締役の予選をできる場合、できない場合
代表取締役が選定の効力発生日までに就任承諾している場合、代表取締役につき「重任」の登記をすることが可能です。
選定をしたが就任承諾が後日になった
取締役を再任した定時株主総会と同日に取締役会の決議で代表取締役を選定したけれども、代表取締役の就任がその翌日以降になったときは、代表取締役につき「重任」ではなく「退任」+「就任」となります。
代表取締役につき退任と就任が同時(同日)に発生していないため、一度「退任」の登記を入れなければならないためです。
なお、実務上このケースは見たことがありません。
取締役会の決議が後日になった
取締役を再任した定時株主総会に取締役会を行うことができず、後日に取締役会を開催して代表取締役を選定するケースです。
定時取締役会が定時株主総会の数日後にあるのでそこで代表取締役の選定をしたい、というケースは少なからず見かけます。
この場合、代表取締役は定時株主総会の日に一度退任していますので、「重任」ではなく「退任」+「就任」の登記を申請します。
みなし総会日を祝日・休日に設定してしまい、同日に取締役会を開催できない場合は、(「重任」と登記を入れたいのであれば)取締役会のみなし決議を利用して同日にメールの返信(提案に対する同意)をもらうか、条件が合うのであれば代表取締役を予選しておくことが考えられます。
取締役の任期が満了し、後日に改めて選任した
取締役の任期が満了していることに気付かず、任期満了日より後に取締役の選任及び代表取締役の選定をしたときは、取締役・代表取締役ともに「退任」+「就任」となります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。