商業登記関係 みなし解散がされた日よりも前に、役員の変更が生じていた場合の登記
みなし解散と継続の登記
12年以上登記がされていない株式会社(休眠会社といいます。)に対して、ここ数年においては毎年10月に法務大臣による官報公告が行われ、かつ、同日付けで管轄登記所から通知書の発送が行われています。
対象会社が当該公告掲載日から2ヶ月以内に管轄登記所に事業を廃止していない旨の届出をしないとき、あるいは役員登記等の何かしらの登記をしない限り、その2ヶ月の期間の満了の時に、解散したものとみなされます(みなし解散といいます。会社法第472条)。
令和7年(2025年)においては、令和7年10月10日(金)に官報公告が行われており、対象会社が令和7年12月10日(水)までに上記対応をしない限り、令和7年12月11日(木)付けで解散となるようです。
≫令和7年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について(法務省)
みなし解散後の継続の登記
みなし解散がされた後も、解散したものとみなされた後3年以内に株主総会の決議で継続する旨を決定することで、会社の解散状態を解消し継続することできます(会社法第473条)。
みなし解散日から3年以内に株主総会で継続する旨の決議をした場合、みなし解散日から3年を経過した後でも継続の登記をすることは可能です。
みなし解散日前に生じた役員登記
株式会社Xには唯一の取締役Aがいたところ、令和6年(2024年)12月11日付けでみなし解散の登記がされていたが、みなし解散日よりも前の2024年10月1日付け臨時株主総会において取締役Bを新たに選任していたようなケースはどうなるでしょうか。
取締役Aは2022年5月31日付けの定時株主総会の終結時に任期が満了していたものとします。
みなし解散がされた後の登記簿には、みなし解散がされた旨の記録の他に、取締役Aの氏名及び代表取締役Aの氏名及び住所に下線が引かれていますが、代表取締役Bを申請人として役員変更登記及び継続の登記を申請することになります。
なお、登記懈怠の期間が長いため、会社法第976条に基づき過料に処される可能性は低くないものと思われます。
登記の添付書類
本件登記の添付書類の一例は次のとおりです。各会社の定款その他の内容によって変わることがあります。
- 2024年10月1日付け臨時株主総会議事録 ※1
- 上記1.に係る株主リスト
- 2024年10月1日付けBの取締役就任承諾書
- Bの個人印鑑証明書
- 2025年1月1日付け臨時株主総会議事録 ※2
- 上記5.に係る株主リスト
- 2025年1月1日付けBの取締役就任承諾書
- 定款
※1 作成者B+Bの個人実印を押印します。Aの任期満了日=退任日を議事録に記載することが一般的です。
※2 作成者B+Bの個人実印を押印します。
上記の他に、Bの印鑑届書1通も併せて提出し、印鑑カード交付申請書も準備します。
登録免許税
株式会社Xにおける登録免許税は、株式会社Xの資本金の額が1億円以下の場合は49,000円であり、資本金の額が1億円超の場合は69,000円です。
登記申請後の登記簿の記載
本件登記後の登記簿の記載は、役員に関する事項は次のとおりです(Bにつき代表取締役住所非表示措置の申出をした場合)。
取締役 A | 平成24年5月31日重任 平成24年6月13日登記 令和5年5月31日退任 令和7年1月10日登記 |
取締役 B | 令和7年1月1日就任 令和7年1月10日登記 |
東京都港区新橋一丁目1番1号 代表取締役 A | 平成24年5月31日重任 平成24年6月13日登記 令和5年5月31日退任 令和7年1月10日登記 |
東京都中央区 代表取締役 B | 令和7年1月1日就任 令和7年1月10日登記 |
清算人 B | 令和7年1月10日登記 |
東京都中央区 代表清算人 B | 令和7年1月10日登記 |
令和7年1月1日会社継続 | 令和7年1月10日登記 |
令和6年12月11日会社法第472条第1項の規定により解散 | 令和6年12月11日登記 |
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
![代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]](/js/wp-content/themes/shiodome/dist/img/mr.ishikawa_02.jpg)
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。