商業登記関係 法務局から休眠会社に関する通知が届いたときはどうするか
休眠会社への通知
休眠会社及び休眠一般法人(以下、併せて単に休眠会社といいます)には、平成26年度以降は毎年法務局から、休眠会社に関する公告が行われた旨の通知が郵送されてきます。
毎年行うとされているため、平成29年度も休眠会社の整理が行われる予定となっています。
休眠会社とは
休眠会社とは、次のように定義されています。
- 最後の登記から12年を経過している株式会社(有限会社は除く)
- 最後の登記から5年を経過している一般社団法人または一般財団法人
変更する事項がないのですが…。
12年間、会社名も変更なし、本店もずっと同じ場所、資本金も変更なし、役員も同じ人、だから登記をしない会社もいるのではと思われる方もいるかもしれません。
しかし、役員の任期は最長で約10年と定められています。
≫取締役、監査役の任期の計算方法
そして、役員の任期が満了した後は、同じ人が継続して役員となるときも、その選任と重任登記が必要です。
そのため、約10年以上変更登記をしていない会社は、役員の選任行為を懈怠しているか、何らかの変更登記を懈怠していることになります。
一般社団法人や一般財団法人の理事の任期も約2年以内と定められているため、5年間何も登記をしていないということは理事の選任懈怠あるいは登記懈怠であることが確定しています。
そのような会社・法人は活動していない会社・法人とみなされてしまうということです。
平成29年度の通知時期
平成29年度においては、平成29年10月12日時点の休眠会社が、平成29年12月12日までに、次の行為をしないときは登記官の職権により解散の登記をされることになっています。
- 何らかの変更登記をする
- まだ事業を廃止していない旨の届出をする
どのような通知が送られてくるか
休眠会社に対する通知は、
- 休眠会社について法務大臣による官報公告が行われたこと
- まだ事業を廃止していない旨の届出の方法
が記載されています。
通知の見本は、下記URLの「2 管轄登記所からの通知について」に記載されています。
平成28年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について(法務省)
休眠会社の通知が送られてきたらどうするか
休眠会社へ法務局から通知が送られてきたときに取り得る選択は次の3つです。
- 変更登記を申請する
- 事業を廃止していない旨の届出をする
- 何もしない
変更登記を申請する
休眠会社に該当している会社は、少なくとも役員変更の登記を申請する必要が生じています。
以前と同じ人が役員であり続ける場合も再度選任して重任登記をしなければなりません。
役員が法定の人数に足りず後任がいないのであれば、定款の変更や取締役会を廃止する等して法定の役員の人数を減らす、あるいは後任を探して役員の変更登記をします。
事業を廃止していない旨の届出をする
休眠会社に対する通知書を利用して、事業を廃止していない旨の届出を管轄法務局に行います。
通知書を利用せずに事業を廃止していない旨の届出をするときは、次の事項を記載して、会社実印を押印した書面を管轄法務局に提出します。
- 商号、本店及び代表者の氏名・住所
- 代理人によって行うときは、代理人の氏名・住所
- まだ事業を廃止していない旨
- 書面を作成した年月日
- 宛先となる管轄法務局の表示
なお、事業を廃止していない旨の届出をしても役員の選任懈怠、登記懈怠の状態からは脱していませんので、当該届出をした後速やかに必要な登記申請を行う必要があります。
何もしないとどうなるか
休眠会社の公告から2ヶ月以内に上記のような行動を何もしなかったときは、登記官により解散の登記をされてしまいます。
取引相手が相手方の登記簿を確認したとき、解散している会社であることが分かったら取引をしたくなくなってしまうかもしれません。
なお、登記官の職権により解散の登記がされた後も3年以内であれば継続の登記をすることができます。
継続の登記とは、みなし解散状態となっている会社の登記簿につき、そうではない(解散していない)状態とする登記のことをいいます。
ただし、役員変更等の登記をしておいた方が費用的には安く済み、手続きも継続の登記と比較をすると容易です。
事業を行っている会社であるならば、役員変更等の登記をみなし解散の期限までにしておきましょう。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。