商業登記関係 一般社団法人の解散事由と解散・清算人就任の登記手続き
このページでは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を「法人法」といいます。
一般社団法人の解散事由
一般社団法人は、次の事由によって解散するとされています(法人法第148条)。
- 定款で定めた存続期間の満了
- 定款で定めた解散の事由の発生
- 社員総会の決議
- 社員が欠けたこと
- 合併による消滅
- 破産手続きの開始
- 解散命令又は解散を命ずる裁判
定款で存続期間や解散の事由を定めているケースは少ない印象がありますので、解散の原因として多いのは社員総会の決議ではないでしょうか。
なお、上記の「社員が欠けたこと」とは社員が1人もいなくなったことをいいます。一般社団法人は、設立時には社が2名必要ですが途中で社員が1人になっても解散はしません。
社員総会の決議要件
解散の承認をする社員総会の決議要件は、特別決議です。特別決議には、定款に別段の定めのない限り、総社員の半数以上であって、総社員の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(法人法第49条2項)。
清算人の選任
一般社団法人が解散したときは、1人又は2人以上の清算人を置かなければなりません(法人法第208条1項)。定款に定めることにより、清算人会又は監事を置くこともできます(法人法第208条2項)。
なお、清算開始時において大規模一般社団法人又は大規模一般財団法人であった法人は、監事を置かなければなりません(法人法第208条3項)。
清算人は次のように決まります(法人法第209条)。
- 理事がそのまま清算人へ(法定清算人)
- 定款で清算人を定める
- 社員総会の決議で清算人を定める
- 裁判所が清算人を選任する
法定清算人
定款で定めた清算人、社員総会で選任した清算人がいないときは、解散前の理事がそのまま清算人、代表理事がそのまま代表清算人となります。
社員総会で清算人を選任
清算人を選任する社員総会の決議要件は、普通決議です。普通決議には、定款に別段の定めのない限り、総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席社員の議決権の過半数の賛成が必要です(法人法第49条1項)。
裁判所が清算人を選任
法定清算人、定款で定めた清算人、社員総会で選任した清算人もいないときは、利害関係人の申し立てによって、裁判所が清算人を選任します(法人法第209条2項)。
清算人の解任
裁判所が選任した清算人を除き、清算人はいつでも社員総会の決議によって解任することができます(法人法第210条1項)。裁判所が選任した清算人も、重要な事由があるときは利害関係人の申し立てによって、裁判所が解任することができます(法人法第210条3項)。
解散登記の添付書類
以下は解散登記、清算人(代表清算人)選任登記の添付書類の一例です。
- 定款
- 清算人の選任を証する書面
- 清算人の就任を証する書面
清算人の就任登記には本人確認証明書は必要とされていません。また、登記申請の添付書類として代表清算人の印鑑登録証明書も不要です。但し、印鑑届書には代表清算人のうち印鑑を届け出る人の印鑑登録証明書(発行後3カ月以内のもの)が必要です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。