商業登記関係 一般社団法人が解散した後の財産の行方
一般社団法人の解散と残余財産
一般社団法人が解散したときは、清算人が債務の弁済、基金の返還、残余財産の分配等の清算手続きを行い、清算を結了させます。
法人に対する債務の弁済、基金の返還をした後に残った財産は分配されます。
株式会社の清算手続きにおいては、残余財産は株主に分配されますが、一般社団法人の清算手続きにおいては、単純に社員に分配されるわけではありません。
一般社団法人の残余財産の帰属先
一般社団法人の残余財産の帰属先は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、法人法といいます)第239条に定められています。
法人法第239条によると、残余財産の帰属先は次のように決まります。
- 定款の定めがあるときは、定款の定めによる
- 定款に定めがないときは、社員総会の決議により定める
- 上記1.2.で決まらないときは、国庫に帰属する
国庫に帰属する、とは国のものとなるということを意味します。
1. 残余財産の帰属は、定款で定めるところによる。
2. 前項の規定により残余財産の帰属が定まらないときは、その帰属は、清算法人の社員総会又は評議員会の決議によって定める。
3. 前2項の規定により帰属が定まらない残余財産は、国庫に帰属する。
定款に残余財産の帰属先を定める
定款にあらかじめ残余財産の帰属先を定めることができます。
残余財産の帰属先の定め方としては、次のような記載が一例となります。
なお、非営利型一般社団法人や公益社団法人ではない社団法人が財産の帰属先をあらかじめ定めておくことは必須ではないため、定めないケースも少なくないのではないでしょうか。
第○条 当法人が清算をする場合において有する残余財産は、東京都に贈与するものとする。
第○条 当法人が清算をする場合において有する残余財産は、社員総会の決議を経て、当法人と類似の事業を目的とする他の公益法人又は国若しくは地方公共団体に贈与するものとする。
非営利活動法人や公益社団法人と残余財産の帰属先
非営利型一般社団法人は、その要件として残余財産の帰属先につき、国もしくは地方公共団体あるいは公益社団法人・公益財団法人等に帰属する旨の定めが定款にあることが必要とされていますので、残余財産はその規定に従い分配する必要があります。
また、公益社団法人についても同様の規定があるため残余財産の帰属先はあらかじめ定款に定められています。
定款に残余財産の帰属先として社員を定めることができるか
残余財産の帰属先を社員としてあらかじめ定款に定めることはできるのでしょうか。
社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは、その効力を有しない(法人法第12条2項)とされていますので、残余財産の帰属先をあらかじめ社員として定めることはできません。
社員に残余財産を分配するのであれば、定款に残余財産の帰属先を定めずに、解散後に社員総会の決議によって残余財産の帰属先を社員として定める方法によります。
社員総会による残余財産の帰属先の決定
定款に残余財産の帰属先が定められていないときは、社員総会の決議によって帰属先を決定します。
社員総会の決議により残余財産の帰属先を、社員にすることはできないという法律の定めはありません。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。