商業登記関係 単独株主権
株主の権利
株式会社の株主は、その発行会社に対して有する権利(以下、株主権といいます)があります。主な株主権として次の3つが挙げられますが、詳細は割愛します。
- 株主総会における議決権
- 剰余金配当請求権
- 残余財産分配請求権
単独株主権
単独株主権とは、株式会社の株主権のうちの1つであり、1株以上の株式を保有する株主が行使できる権利のことをいいます。
公開会社の場合は、株式の保有については、6ヶ月前から引き続き保有していることを要求する場合があります。
少数株主権
単独株主権に対して、一定の割合または一定数以上の株式を有する株主が行使可能となる権利を少数株主権といいます。
少数株主権についてはこちらをご参照ください。
単独株主権一覧
単独株主権の主なものは次の表のとおりです。
招集請求権 | 取締役会招集請求権 | 一定の条件の下、取締役会の招集を請求することができる。 |
閲覧等請求権 | 定款の閲覧等請求権 | 定款の閲覧の請求、その謄本等の交付の請求をすることができる。 |
株主名簿の閲覧等請求権 | 株主名簿の閲覧または謄写の請求をすることができる。 | |
株主総会議事録の閲覧等請求権 | 株主総会議事録の閲覧または謄写の請求をすることができる。 | |
取締役会議事録の閲覧等請求権 | 権利行使のため必要があるときは、取締役会議事録の閲覧または謄写の請求をすることができる。 | |
計算書類等の閲覧等請求権 | 計算書類等の閲覧の請求、その謄本等の交付の請求をすることができる。 | |
合併契約書等の書類の閲覧等請求権 | 合併契約書等の閲覧の請求、その謄本等の交付の請求をすることができる。 | |
差止請求権 | 募集株式発行、自己株式の処分、新株予約権発行差止請求権 | 一定の条件の下、募集株式の発行、自己株式の処分、新株予約権の発行をやめることを請求できる。 |
取締役の違法行為差止請求権● | 一定の条件の下、取締役の違法行為等をやめることを請求できる。 | |
略式組織再編行為差止請求権 | 一定の条件の下、略式吸収合併等をやめることを請求できる。 | |
訴えの提起権 | 株主総会決議取消の訴え提起権 | 一定の条件の下、株主草加決議の取消しを、訴えをもって請求できる。 |
会社の組織に関する行為の無効の訴え提起権 | 設立、募集株式、減資、組織再編などの会社の行為の無効を、訴えをもって主張できる。 | |
代表訴訟提起権● | 会社に対し、役員等の責任を追及する訴えの提起を請求できる。 |
※●がついているものは、公開会社の場合、6ヶ月前から引き続き株式を保有していることが条件とされています。
取締役会招集請求権(会社法第367条)
取締役会設置会社の株主は、取締役が会社の目的の範囲外の行為や、その他法令・定款に違反する行為をしたとき、またはするおそれがあるときは、取締役会の招集を請求することができます。
※但し、業務監査権限のある監査役がいる株式会社の株主には、取締役会招集請求権はありません。
株主総会における議案提案権(会社法第304条)
株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項につき議案を提出することができます。
取締役会非設置会社の株主は、取締役に対して、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができます(会社法第303条)。
※取締役会設置会社の場合は当該権利は≫少数株主権となります。
また、取締役会非設置会社の株主は、取締役に対して、株主総会の日の8週間前までに、株主総会の目的である事項につき当該株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知することを請求することができます(会社法第305条)。
※取締役会設置会社の場合は当該権利は≫少数株主権となります。
定款、株主名簿、議事録、計算書類等の閲覧請求権
株主は、株式会社の営業時間内に、定款、株主名簿、株主総会議事録、取締役会議事録、計算書類等の書類を閲覧することを請求することができます。
但し、閲覧の請求等をするときに請求の理由を明らかにしなければならないケース、謄本等の請求をするときに一定の費用を支払わなければならないケースがあります。
募集株式発行等の差止請求権(会社法第210条、第247条)
株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、募集株式の発行、自己株式の処分、募集新株予約権の発行をやめることを請求することができます。
取締役の行為差止請求権(会社法第360条)
株主は、取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をしたとき、またはするおそれがあるときにおいて、当該行為によって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます。
略式組織再編行為差止請求権(会社法第796条他)
例えば吸収合併において、消滅会社が存続会社の議決権の10分の9以上保有しているときは、存続会社における株主総会の決議は不要となります(略式合併)。略式合併の手続きを選択したときに、存続会社の株主が不利益を受けるおそれがあるときなど一定の条件の下、株主は当該吸収合併をやめることを請求することができます。
株主総会決議取消の訴え提起権(会社法第831条)
株主は、株主総会の招集の手続、決議の方法が法令・定款に違反していたときや著しく不公正であったときなど一定の理由があるときは、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができます。
会社の組織に関する行為の無効の訴え提起権(会社法第828条)
株主は、会社の次の行為(一例)の無効を、訴えをもって主張することができます。
- 会社の設立
- 募集株式の発行
- 募集新株予約権の発行
- 減資
- 組織変更
- 組織再編
代表訴訟提起権
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。