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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

株式会社が発行することのできる議決権制限株式(種類株式)とは

議決権を制限する種類株式

株式会社においては定款で特段の定めがない限り、1株に対して1議決権が与えられています(株主平等の原則)。

一方で株式会社は、株主総会において議決権を行使することができる事項に関して、異なる定めをした内容の異なる2以上の種類の株式を発行することができます(会社法第108条1項3号)。

例えば、ある種類の株式の内容として、一定の決議事項についてのみ議決権を制限することや、全ての決議事項について議決権を制限することも可能です。

一定の決議事項についてのみ議決権を制限するとは、一例として取締役の選任にかかる議案ついてのみ議決権を制限するようなケースをいいます。

あるいは、一部の議案(例:監査役の選任)についてのみ議決権を行使することができる、というような定め方もすることができます。

≫種類株式の基本

公開会社と議決権制限株式

公開会社も種類株式を発行することはでき、公開会社であっても議決権制限株式を発行することは可能です。

ただし、公開会社においては、議決権制限株式数が発行済株式数の総数の2分の1を超えるときは、議決権制限株式数が発行済株式数の総数の2分の1以下となるように必要な措置をとることが義務付けられています(会社法第115条)。

議決権制限株式の定款記載例

議決権制限株式に関する定款の記載例は次のとおりです。

第○条 A種類株式を有する株主は、株主総会において議決権を行使することができない。
第○条 A種類株式を有する株主は、取締役の選任について議決権を行使することができない。
第○条 A種類株式を有する株主は、次の事項についてのみ議決権を行使することができる。
    1.取締役の選任
    2.募集株式の発行
    3.解散
議決権制限株式と種類株主総会における議決権

議決権制限株式(会社法第108条1項3号)は、株主総会の決議事項に関してその全部又は一部につき議決権を制限するものです。

ところで、特定の決議事項においては、株主総会決議に加えて、ある種類株主総会の決議がないとその効力が生じないことがあります。

≫種類株式に係る株主総会(種類株主総会)の決議が必要なとき

議決権制限株式を保有する株主であっても、種類株主総会の決議事項に関しては議決権を有しているため、種類株主総会の決議が必要であれば(種類株主総会において)議決権を行使することが可能です。

議決権制限株式において行使が制限されている議決権とは、(全体の)株主総会に関する議決権を指しています。

種類株主総会における議決権を制限する

種類株式発行会社は、ある種類の株式の内容として、種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めることができますので、議決権制限株式を定めるときはこれらの事項についても種類株主総会の決議を要しない旨を定款に定めることが多いのではないでしょうか。

それらの記載例は次のとおりです。

第○条 当会社が会社法第322条第1項各号に掲げる行為をする場合においては、法令に別段の定めのある場合を除き、各種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない。
2 当会社の株式募集事項の決定においては、会社法第199条第4項及び同法第200条第4項に定める種類株主総会の決議を要しない。
3 当会社の新株予約権募集事項の決定においては、会社法第238条第4項及び同法第239条第4項に定める種類株主総会の決議を要しない。

なお、株主総会の決議事項に関する議決権は排除しても、種類株主総会の決議事項に関する議決権はあえて排除しないというケースもあります。

議決権制限株式の限界

議決権制限株式を設計するときに、種類株主総会に関する議決権を含め議決権の無い株式(完全無議決権株式)を作れないかとご相談いただくことがあります。

定款の定めによって議決権を制限できること、できないことは次の記事をご確認ください。

≫(株式会社)種類株主総会の決議を排除できる事項・できない事項

上記のとおり、新たな種類株式を発行する、株式の内容を変更する、あるいは発行(種類)可能株式総数を変更するときは種類株主総会の決議が必須となります。

議決権制限株式を設定した後に新たな種類株式を発行する予定があるときに、議決権制限株式にかかる種類株主総会で当該議案が否決されることを防ぐには、(違反される可能性はゼロではありませんが)株主間契約を締結する、あるいは経営者株主等が当該議決権制限株式の3分の2以上を保有するという対策が考えられます。

議決権制限株式を設定する方法

議決権制限株式を新たに設定してその株主を生じさせるには、譲渡制限株式を新たに発行して誰かに交付するか、既存の株主が保有している株式を譲渡制限株式に変更する方法によって行います。

出資をしてもらいたいけれど議決権を持たせたくない場合は前者の方法を採用し、現在の株主の一部から議決権を無くすのであれば後者の方法を採用します。

議決権制限株式を新たに設定し、発行する

現在普通株式しか発行していない会社が、新たに種類株式として議決権制限株式を発行して出資を募る場合は、一例として次の方法で行います。

  1. 株主総会の決議(定款変更、募集株式の発行)
  2. 総数引受契約の締結
  3. 出資の履行
  4. 登記申請
既存株主の株式の内容を変更する

種類株式の発行は、出資を受けて新しく株式を発行するときに行うことができる他、既存の株主が所有している株式の内容を当該種類株式に変更することも可能です。

例えば、普通株式しか発行していない株式会社の株主ABCがいたときに、Aが所有する株式を普通株式から種類株式に変更することができます。

既存株主の株式の内容変更につきましては、こちらの記事をご確認ください。

≫発行済株式の一部の株式の内容を変更する登記手続き


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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