商業登記関係 取締役・監査役の辞任登記と辞任を証する書面
取締役・監査役の辞任
取締役・監査役(以下、「取締役等」といいます)と会社の関係は委任関係ですので、取締役等は原則として自由に辞任をすることができます。
ただし、会社にとって不利な時期に辞任をしたときは会社から損害賠償請求をされる可能性があることと、辞任をしたとしても権利義務取締役等として後任の取締役等が就任するまで取締役等の権利義務を有することになる点に注意が必要です。
権利義務取締役等については、こちらの記事をご確認ください。
なお、辞任の効力は取締役等の辞任の意思が会社に到達した時点で発生します。
取締役等の辞任と登記
取締役等が辞任をしたときは、その効力発生日から2週間以内にその変更登記をしなければならないとされています(会社法第915条1項)。
辞任をした取締役等が権利義務取締役等に該当する場合は、後任者が就任して会社法及び定款で定められた取締役等の人数が満たされるまでは辞任の登記をすることはできません。
また、権利義務取締役等は権利義務取締役等を辞任することもできません。
辞任をした取締役等が権利義務取締役等に該当した後に、退任をすることができることになった場合、辞任日を原因日付として辞任の登記をすることになりますが、この変更登記の申請は新任取締役等の就任登記と同時(あるいは辞任登記が就任登記の後)でないと受理されません。
辞任を証する書面
辞任はその意思表示が会社に到達した時点でその効力が生じます。
ところで、取締役等の辞任に関する登記申請の添付書類として、当該取締役等が辞任をしたことを証する書面が求められています。
辞任をしたことを証する書面として、一般的なものは次のとおりです。
- 辞任届
- 株主総会議事録
辞任届は、辞任する取締役等の署名または記名押印が必要となります。
株主総会議事録を取締役等が辞任をしたことを証する書面として添付するときは、辞任する取締役等が出席して、その席上で本人が辞任を表明した旨が記載されている必要があるとされています。
議長から(議長以外の)取締役等が辞任する旨の報告が株主総会の場でなされただけでは、その株主総会議事録を取締役等の辞任を証する書面として、当該取締役等の辞任に関する登記の添付書類として利用することができません。
辞任をする取締役が代表取締役であるとき
辞任をする取締役が代表取締役であり、かつ当該取締役が法務局へ印鑑を届け出ている場合は、その辞任届には会社実印を押印するか、個人実印を押印してその印鑑証明書を添付しなければなりません(商業登記規則第61条8項)。
商業登記規則第61条8項
代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出した者に限る。以下この項において「代表取締役等」という。)の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
取締役としては残るが代表取締役の地位のみを辞任ケースについては、こちらの記事をご確認ください。
辞任の登記の添付書類
取締役会設置会社で取締役ABCD、代表取締役Aという株式会社において、取締役Dが辞任をする変更登記の添付書類は次のとおりです(定款で、取締役は3名以上とすると定められている場合)。
- 辞任を証する書面
- 委任状(代理人に依頼する場合)
取締役Dが権利義務取締役である場合や、取締役DではなくAが辞任する場合は別途添付書類が必要となりますので司法書士にご相談ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。