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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

株式会社の募集株式の発行(増資)と資本金の減少を同時に行う方法

増資と減資を同時に行う

募集株式の発行(以下「増資」といいます。)と資本金の額の減少(以下「減資」といいます。)は同時に行うことができます。

同時に、とは1つの日に資本金の増加と減少の効力を発生させることをいいます。

平成30年7月23日時点の資本金3,000万円の株式会社が、平成30年9月28日を効力発生日として1億円を増資して、同日付で1億円を減資するようなイメージです。

事業年度末に増資の予定をしていて、事業年度末時点の資本金を1億円以下にしておきたいというニーズがあるときに、増資と減資を同時に行うことがあります。

欠損填補をするために増資をして、同日付け減資をして資本金及び資本準備金を資本剰余金に振り替える、というパターンもあるでしょうか。

※募集株式の発行において、自己株式を交付したときは資本金が増えませんが、ここでは株式を新たに発行して資本金の額が増える募集株式の発行を前提としています。

よくある誤解

減資と増資を同時に行った結果、前後で資本金が変わらない場合や、結果として資本金が増える場合は減資の手続きが不要になるのではないかというご質問をいただくことがあります。

資本金の額が1億円(現在)→6億円(増資後)→1億円(減資後)としたときに、資本金の額は1億円で変わっていないためです。

増資の登記の登録免許税が高額(5億円増資の場合、登録免許税は350万円)であり、これを避けられるのであれば避けたいところでしょう。

しかし、増資及び減資をしたときは、結果として資本金の額が変わらない(あるいは増える)場合でも、その旨の登記は行わなければなりません。

また、減資と増資を同時に行い、結果資本金の額が増えるような場合においても、減資の手続きを省略することができません。

増資と減資を同時に行う手続き

増資と減資を同時に行うには、増資の手続きと減資の手続きをそれぞれ(一般的には並行して)行います。

≫1日で募集株式の発行・増資をする方法(総数引受契約)
≫株式会社の資本金の額の減少(減資)手続き

増資も減資も実情に応じて手続き方法は異なりますが、ここでは増資については総数引受契約方式、減資については官報公告+各債権者への個別催告によって債権者保護手続きを行う方法を前提としています。

下記にスケジュール例を記載していますが、株主総会の決議前に債権者保護手続きを進めることもできます。

株主総会で減資が承認されることが確実であるときは、株主総会の決議前に債権者保護手続きが行われることも少なくありません。

株主総会の決議(取締役会の決議)

増資と減資について、原則として株主総会の決議を要します。株主総会における増資と減資の決議要件は、原則として特別決議です。

株主総会の議案の一例は、第1号議案「募集株式の発行の件」、第2号議案「資本金の額の減少の件」です。

平成30年7月23日時点の資本金3,000万円の株式会社が、平成30年9月28日を効力発生日として1億円を増資して同日付で1億円を減資する場合、平成30年7月23日の株主総会で1億円(現在の資本金の額を超える額)の減資に関する決議を行うことも可能です。

現在の資本金の額を超える額の減資を決議するときは、増資の効力発生を減資の効力発生条件とすることが一般的でしょう。

減少させた資本金(+資本準備金)を資本剰余金に振り分け、損失の処理のために資本剰余金から利益剰余金に振り分ける場合は、第3号議案で剰余金の処分に関する決議も行います。

なお、減資の決議につき、減資の効力発生日において資本金の額が前日の資本金の額を下回らない場合は、取締役会の決議で行うことになります(会社法第447条3項)。

官報公告の申込み

債権者保護手続きのため、官報公告の申込みを行います。

会社の「公告をする方法」が官報、日刊新聞紙又は電子公告のいずれの方法であっても、官報公告は必須です。

申込みから掲載されるまでの期間の目安は5営業日ですが、決算公告をしていない株式会社の場合は、決算公告を行う必要があるため(公告をする方法が官報の場合)、もっと期間がかかります。

資本金の額の減少公告
 当社は、資本金の額を1億円減少することにいたしました。
 この決定に対し異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。
 なお、最終貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
 掲載紙 官報
 掲載の日付 平成30年6月22日
 掲載頁 ●●頁(号外第●●●号)
 平成30年8月3日
  東京都中央区銀座七丁目13番8号
   汐留太郎株式会社 
   代表取締役 汐留 太郎
各債権者への個別催告

知れたる債権者へ次の事項を催告します(会社法第449条2項)。

  1. 資本金の額の減少の内容
  2. 計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
  3. 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

通常は官報公告と同時に行い、異議申述期間の満了を合わせますが、必ずしも一致させる必要はないとされています。

総数引受契約の締結、出資

株主総会の決議が終わったら、出資者と総数引受契約を締結します。

払込期日まで、または払込期間の末日までに出資金を株式会社の金融機関の口座に振り込みます。

払込期日までに振込み(入金の確認)が行われないと増資が完了せず、増資を減資の効力発生条件としている場合は減資の効力も生じませんのでご注意ください。

払込期日よりも前に振り込むことも可能ですが、株主総会の決議前に振り込んでもそれは出資金として扱うことができません。

効力発生日の到来

全ての手続きが終わっているのであれば、株主総会で決議した増資の払込期日と減資の効力発生日に、それぞれ効力が発生します。

登記申請

増資の減資の効力が発生した場合、その効力発生日から2週間以内に登記申請をします。

添付書類の一例は次のとおりです。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録
  • 総数引受契約書
  • 払込証明書
  • 資本金計上証明書
  • 官報
  • 債権者へ催告をしたことを証する書面
  • 異議を述べた債権者がいない旨の上申書
登録免許税

登録免許税は、次の金額の合計額です。

  1. 増加した資本金の額×7/1000(この額が3万円以下の場合は3万円)
  2. 3万円(減資分)

1億円を増資して、1億円減資をするケースでは73万円です。

出資した金額を全て減資して資本剰余金にする予定であるのであれば、出資された額の2分の1を資本準備金とした方が登録免許税を抑えることが可能です(上記の例で73万円→38万円)。

この場合、資本金の額の減少だけではなく、準備金の額の減少手続きをすることも忘れないようにしましょう。

スケジュール例

ここでは株主総会後に債権者保護手続きをスタートさせるパターンと、株主総会に先立って債権者保護手続きをスタートさせるパターンのスケジュール例を記載しています。

債権者保護手続きを≫ダブル公告で行う、募集株式の発行を申込み+割当てで行う等の場合は、ご事情に合わせて手続きを行ってください。

株主総会の決議後に手続きをスタートさせるパターン
日程
株式会社の手続き
7月1日
取締役会の決議(減資・増資の内容決定、株主総会の招集決定)
7月2日
株主総会の招集通知の発送
7月10日
株主総会の決議

7月11日
官報公告の申込み

総数引受契約締結
7月20日
知れている債権者への個別催告の発送
7月20日
官報に資本金の額の減少公告が掲載
8月20日
債権者保護手続きの期間満了

8月25日
出資の払込み、増資の効力発生

資本金の額の減少の効力発生
8月25日以降
登記申請(2週間以内)
株主総会の決議時に効力を発生させるパターン
日程
株式会社の手続き
7月1日
取締役会の決議(減資・増資の内容決定、株主総会の招集決定)
7月2日
官報公告の申込み
7月12日
知れている債権者への個別催告の発送
7月13日
官報に資本金の額の減少公告が掲載
8月6日
株主総会の招集通知の発送
8月13日
債権者保護手続きの期間満了

8月15日
株主総会の決議

総数引受契約締結

8月15日
出資の払込み、増資の効力発生

資本金の額の減少の効力発生
8月15日以降
登記申請(2週間以内)

増資・減資の手続きを依頼する

当事務所では、自社で書類作成も債権者保護手続きも行ったから登記申請だけをお願いしたいというクライアント様や、手続きについて何も分からないので最初から手続きをお願いしますというクライアント様まで、増資・減資についてのご相談を承っております。

電子公告に関する電子公告調査会社への調査申込み等もご依頼いただけます。

≫減資の手続きを依頼した場合、どこまでお手伝いしてくれますか?

一定の期間内(例えば今期中)に増資+減資を完了しなければならないようなご事情がある場合、是非当事務所にご相談ください。

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この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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