商業登記関係 特例有限会社の監査役を廃止するにはどのような手続きと登記が必要か
特例有限会社と監査役
特例有限会社も、定款に定めることにより監査役を置くことができます。
監査役を当初は置いていたけれども、会社を縮小する等を理由として監査役が不要になったために監査役を廃止したいというニーズもあるでしょう。
特例有限会社における監査役は必須の機関ではありませんので、定款の定めを変更(削除)することにより、監査役を廃止することも可能です。
監査役を廃止する
監査役を廃止するには、監査役が辞任するだけでは足りません(登記申請が通りません)。
監査役が選任されている以上、定款に監査役を置く旨の規定があるはずであり、その定款の規定を廃止したことを証する書面を提出しなければならないためです。
定款に監査役を置く旨がある状態と、監査役が1名もいない状況は原則として両立し得ず(死亡等を除く)、監査役を辞めるなら定款を変更するか後任者を選任してくださいということです。
監査役を廃止する具体的な方法としては、株主総会で定款変更の決議をして、定款変更の効力発生日から2週間以内に管轄法務局へ登記申請をすることになります。
特例有限会社の特別決議
特例有限会社が定款を変更するには、株主総会の特別決議を経なければなりません。
有限会社の特別決議の要件は、総株主の半数以上でかつ、総株主の議決権の4分の3以上の賛成を要します(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第14条3項)。
この要件は、株式会社の特別決議の要件とは異なりますので注意が必要です。
≫有限会社の特別決議は、株式会社の特別決議と要件が異なるというお話
特例有限会社と株主リスト
登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合は、株式会社だけではなく特例有限会社においても、株主リストの添付が必要です。
監査役が退任するのは株主総会の決議によって定款が変更されたことが原因となりますので、監査役の廃止も「登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合」に該当します。
登記すべき事項
特例有限会社においては「監査役設置会社である旨」は登記事項とされていません。
そのため、登記の事由としては「監査役の変更」だけを記載することになります。
監査役の退任日は、定款変更の効力発生日が該当します。
この登記の登録免許税は1万円(資本金の額が1億円を超える場合は3万円)です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。