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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

初めて種類株式を設定・発行する場合の募集株式の発行手続き

出資と種類株式の発行

借入ではなく株式発行による資金調達をするときは、出資を受けた対価として株式を交付するという募集株式の発行手続きを行うことになります。

VC等の投資家から資金調達をするときは、普通株式ではなく種類株式が用いられることが少なくありません。

シリーズAラウンドや事業承継に種類株式を用いるようなタイミングで、種類株式を初めて発行する場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。

普通株式による募集株式の発行手続きについては、こちらの記事をご参照ください。

≫第三者割当による募集株式の発行手続き

種類株式を設定・発行する手続きの流れ

種類株式(ここではA種類株式とします。)を新たに設定して発行するときの手続きの一例は次のとおりです。

種類株式の内容が決まっていることがここでの前提となっています(当然のことながら、≫種類株式の内容が会社・投資家にとって重要です)。
取締役会設置、現在種類株式なし、金銭出資、定款に別段の定めのない非公開会社を前提としています。

  1. 取締役会の決議(招集決定)
  2. 株主総会の招集
  3. 株主総会の決議
  4. 募集事項等の通知
  5. 引受けの申込み
  6. 取締役会の決議(割当決議)
  7. 割当ての通知
  8. 出資の履行
  9. 登記申請
1. 取締役会の決議(招集決定)

取締役会にて定款変更及び募集株式の発行に関する意思決定を行い、それを株主総会で承認するために株主総会の招集を決定します。

取締役会の決議は、原則として、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行います(会社法第369条1項)。

実務的には、事前に投資家(出資者)との間で投資契約に関する合意が済んだ上で、取締役会の決議→株主総会の決議と進めることになることが多いでしょう。

2. 株主総会の招集

上記取締役会の決議に基づき、株主総会の招集通知を株主へ送ります。

1人株主の場合は、株主総会の書面決議(会社法第319条1項)で済ませることや招集手続きを省略(会社法第300条)して株主総会を行うことが多いでしょう。

3. 株主総会の決議

まず、第1号議案で種類株式について定款を変更することを決議します(特別決議)。

続いて、第2号議案で募集株式の発行をするために募集事項を特別決議によって決定します(会社法第199条1項)

  • 募集株式の種類及び数
  • 募集株式の払込金額またはその算定方法
  • 払込期日またはその期間
  • 増加する資本金及び資本準備金

なお、募集株式の数の上限及び払込金額の下限だけを株主総会の決議で定め、その他募集事項を取締役会に委任することもできます(会社法第200条1項)。

4. 募集事項等の通知

募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項(募集事項等)を通知します(会社法第203条1項)。

  • 株式会社の商号
  • 募集事項
  • 金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
  • 会社法施行規則第41条で定める事項
5. 引受けの申込み

募集株式の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を株式会社に交付しなければなりません(会社法第203条2項)。

  1. 申込みをする者の氏名又は名称及び住所
  2. 引き受けようとする募集株式の数

募集事項等の通知書と一緒に、この申込みに関する書類が送られてくることが一般的ですので、それに記入(押印)して返送します。

6. 取締役会の決議(割当決議)

取締役会を開催し、引受けの申込みをした者の中から誰に何株を割り当てるのかを決議します。

このとき、例えば100株引き受ける旨の申込みをした者に対して、必ず100株を割り当てなければならないということはなく、50株だけ割り当てる等のように申込みのあった株式数より減少した株式数を割り当てることもできます(会社法第204条1項)。

なお、この場合、当該申込者に対して150株を割り当てることはできません。

7. 割当ての通知

上記取締役会の決議によって決めた募集株式の割当てを受ける者に対して、割り当てる募集株式の数を通知します(会社法第204条4項)。

払込日または払込期日の初日の前日までにこの通知を行わなければならないため、株主総会(取締役会)の決議と同日を、払込日または払込期日の初日とすることができません。

なお、総数引受契約方式であればそのような制限はないため、1日で全ての手続きを済ませることが可能です。

≫1日で募集株式の発行・増資をする方法(総数引受契約)

8. 出資の履行

引受人は払込期日または払込期間内に、募集株式の払込金額の全額を払い込まなければなりません(会社法第208条1項)。

払込期日等までに引受人が出資の履行をしないときは、募集株式の株主となる権利を失ってしまいます(会社法第208条5項)。

なお、登記手続き上、発行会社の預金通帳(払込金額の入金履歴のあるもの)が必要となるため、払込期日等までに発行会社の口座へ出資が着金していなくてはなりません。

9. 登記申請

増資の効力が発生したら、管轄法務局へ登記申請をします。添付書類の一例は、次のとおりです。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録
  • 申込みを証する書面
  • 払込証明書
  • 資本金計上証明書

登記申請は効力発生日から2週間以内にしなければなりません(会社法第915条1項)。

また、投資契約書に効力発生日から1ヶ月以内に登記後の登記簿謄本を提出する等の条項がある場合はそれに対応する必要があるでしょう。

募集株式の発行手続きと総数引受契約方式

上記4567の手続きは、出資者と発行会社が総数引受契約を締結するときは不要となります(会社法第205条1項)。

※6の代わりに総数引受契約の承認を取締役会で行います(会社法第205条2項)。

総数引受契約契約方式であれば申込み+割当て方式に比べて手続きがシンプルになるため、出資者が1名であるときや、少数でお互いの出資額が分かってもいいようなケースでは利用されています。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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