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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

種類株式発行会社が、新たに新株予約権を発行するときの手続き上の注意点

種類株式発行会社と増資

種類株式発行会社においても、新株予約権を新たに発行することは可能であり、新株予約権の対象は普通株式であることがほとんどです。

ここでは、株式会社Xが、普通株式、A種優先株式、B種優先株式を既に設定し、発行しているとします。

株式会社Xが新たに新株予約権(対象となる株式の種類は普通株式、以下同じ)を発行する場合、どのような点に注意しなければならないでしょうか。

なお、ここでは税務的な話には触れず、あくまで会社法や商業登記という点における注意事項を記載しています。

特に、従業員や外部協力者にストックオプションとして新株予約権を発行するときは、税制適格かどうかや行使価額について顧問税理士に確認をした方がいいでしょう。

新たに新株予約権を発行するときの手続きについてはこちらの記事をご参照ください。

≫新株予約権を発行するときの手続き

発行可能株式総数、発行可能種類株式総数

新株予約権を行使して交付する株式数は、交付する対象株式の発行可能株式総数を超えることができません(会社法第113条4項)。

株式会社Xの発行可能普通株式総数が100株、発行済普通株式が100株であれば、遅くとも新株予約権の行使期間の開始日までに、発行可能普通株式総数を増やしておく必要があります。

税制適格ストックオプションであれば、行使期間の開始日は新株予約権の付与決議の日後2年を経過した日以降であるため期間に余裕はありますが、出資や融資の条件等として新株予約権を発行するときは、割当日と行使期間の開始日が同日であることもあります。

新株予約権を発行するときは、必要に応じて発行可能株式総数及び発行可能種類株式総数の変更もしておきます。

種類株主総会の決議

募集新株予約権を発行するときは、株主総会の特別決議によらなければなりません(会社法第238条2項)。

この株主総会とは、普通株式を保有する株主(普通株主)、A種優先株式を保有する株主(A種優先株主)、B種優先株式を保有する株主(B種優先株主)の全ての株主で構成されるものをいいます。

しかし、種類株式発行会社が新たに募集新株予約権の発行をするときは、全体の株主総会とは別に、種類株主で構成される種類株主総会の決議も必要なケースがあります。

対象となる株式の種類に関する種類株主総会

株式会社Xが新株予約権を発行するときは、原則として、全体の株主総会の決議に加え、普通株式に係る株主総会(普通株主総会)の決議も必要となります(会社法第238条4項)。

ただし、普通株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合は、新株予約権を発行するときにおいても、普通株主総会の決議は不要となります。

この定款の定めは登記事項ではありませんので、登記簿からは判断できず、定款を確認しなければなりません。

定款の定めに基づき普通株主総会を開催しなかったときは、当該種類株主総会が不要であることを示すために、募集新株予約権の発行の登記申請書には定款を添付します。

拒否権付種類株式

株式会社は、株主総会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする種類株式を発行することができます(会社法第108条1項8号)。

この種類株式は拒否権付種類株式、あるいは拒否権条項付種類株式と呼ばれています。

株式会社Xが新株予約権を発行するときに、B種優先株式に募集新株予約権の発行に関して拒否権条項が付いているときは、全体の株主総会とは別にB種優先株式に係る株主総会の決議も必要となります。

≫拒否権付種類株式

株主割当てによる募集新株予約権の発行

株式会社Xが株主割当ての方法により募集新株予約権を発行するときは、上記会社法第238条4項とは別に、会社法第322条1項5号を根拠として普通株主総会の決議が必要となります。

会社法第238条4項、会社法第322条1項5号のどちらに該当しても、普通株主総会は1回行えば問題ありません。

なお、種類株式発行会社は、ある種類の株式の内容として、会社法第322条1項の1号を除く他の号につき、種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めることができ(会社法第322条2項)、この定めがある場合は種類株主総会の決議は不要です(ただし、会社法第238条4項による種類株主総会の決議は定款で排除されていない限り必要)。

この定款の定めは、会社法第238条4項の定めとは異なり、登記事項とされています。

株主割当ての方法で募集新株予約権の発行をすることは多くはありませんので、ここをケアするケースというのは稀です。

投資契約や株主間契約

種類株式に拒否権条項を付けていない場合でも、投資家との投資契約等によって、募集新株予約権の発行をするときは事前に投資家に説明をする等をしなければならないケースがあります。

また、新株予約権の行使価額が一定の価額より低いものにしてしまうと、投資家の持株比率が増加するような内容の種類株式もあります。

募集新株予約権の発行をするときは、単に定款や登記簿だけでなく、各株主との契約についても確認をした方がいいでしょう。

新株予約権に関するご相談

新株予約権を発行するときは、その発行するタイミング、行使期間、行使価額だけでなく、行使条件や取得事由、割当契約書の内容等を検討しなければなりません。

新株予約権は一度発行して交付すると、以降会社側が勝手に変更することや取り上げることはできません。

特に、株式公開を目指しているベンチャー企業が、従業員へインセンティブとしてストックオプションを発行するときは、会社側で発行要項を設計することになるため注意が必要です。

汐留パートナーズグループでは、新株予約権の登記手続きだけでなく、新株予約権の設計や株式公開に向けた法務、税務、労務、財務等をワンストップでサポートすることが可能です。

株式公開に向けてバックオフィスサポートを強化したいベンチャー企業の方は、汐留パートナーズグループにお声がけいただけますと幸いです。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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