商業登記関係 株式会社の株主総会における議決権の数
株主総会と決議要件
株主総会の(普通)決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行います(会社法第309条1項)。
上記は、いわゆる普通決議の決議要件です。
この他にも、特別決議や特殊決議等の決議要件があり、株主総会の決議要件についてはこちらの記事をご確認ください。
≫株主総会とその決議要件(普通決議、特別決議、特殊決議 他)
株主総会における議決権の数
決議要件がある以上、株主総会において議決権の数は重要です。
原則として株主は、株主総会において、その有する株式1株につき1個の議決権を有します(会社法第308条1項)。
例えば10株発行している株式会社の場合、株主総会に株主全員が出席しているケースにおいて議案に賛成している人の持株数の合計が6株以上であれば普通決議は可決されるでしょう。
一方で、会社法では議決権の数に関して次の規定があり、次の規定に該当するときは議決権の数に影響が生じます。
- 議決権制限株式(会社法第108条2項)
- 自己株式を取得するとき(会社法第140条3項他) ※
- 単元株式数(会社法第188条)
- 相互保有株式(会社法第308条1項、会社法施行規則第67条)
- 自己株式(会社法第308条2項)
- 累積投票による取締役の選任(会社法第342条1項)
※自己株式を取得するときの全てのケースが該当するわけではありません。
議決権制限株式
株式会社は議決権について内容の異なる2以上の種類の株式を発行することができ、議決権が一切無い株式を発行することができます(会社法第108条2項)。
議決権が一切無い株式のことを「無議決権株式」等といいます。
田中一郎が無議決権株式を保有、その他の株主が議決権の制限のない株式を保有している場合の議決権の個数は次のとおりです。
鈴木二郎 100株 佐藤三郎 100株 |
自己株式を取得するとき
自己株式を取得するケースにおいて、発行会社が特定の株主から有償で株式を取得するときは、利害関係を有する株主が議決権を行使することができないという場合があります。
例えば、次のようなケースです。
- 株式譲渡不承認により自己株式を取得するケース
- 特定の株主を対象として自己株式を取得するケース
- 相続人等への売渡請求により自己株式を取得するケース
本項の詳しい内容につきましては、こちらの記事をご確認ください。
特定の株主(田中一郎)から自己株式を有償で取得するときの株主総会における議決権の個数は次のとおりです(定款に別段の定めがないケース)。
鈴木二郎 100株 佐藤三郎 100株 |
単元株式数
株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会又は種類株主総会において1個の議決権を行使することができる1単元の株式とする旨を定款で定めることができます(会社法第188条1項)。
単元株式数につきましては、こちらの記事をご確認ください。
1単元=100株としている株式会社の場合の議決権の個数は次のとおりです。
鈴木二郎 777株 佐藤三郎 666株 |
相互保有株式
A株式会社が保有するB株式会社の株主につき、それが総株主の議決権の4分の1以上となる場合、B株式会社はその保有するA株式会社の株式につき議決権を行使することができません(会社法第308条1項)。
一方で、B株式会社が保有するA株式会社の株式につき、それが総株主の議決権の4分の1未満である場合は、A株式会社はその保有するB株式会社の株式につき議決権を行使することができます。
この場合、A株式会社の議決権の個数は次のとおりです。
鈴木 二郎 100株 佐藤 三郎 100株 |
自己株式
株式会社は、自己株式については、議決権を有しません(会社法第308条2項)。
自己株式を有する株式会社の議決権の個数は次のとおりです。
鈴木二郎 100株 自己株式 100株 |
累積投票による取締役の選任
株式会社は、定款の定めがあるときを除き、累積投票により取締役を選任することができます(会社法第342条)。
累積投票とは、株主が有する1株式(1単元)につき株主総会で選任する取締役の数と同数の議決権を有することとする投票制度です。
株主が有する株式数が100株、株主総会で選任される取締役が5名であった場合、累積投票を採用すると、当該株主は取締役の選任決議につき500個の議決権を有することになります。
取締役を5名選任する株主総会における議決権の個数(当該議案に限る)は次のとおりです。
鈴木二郎 100株 佐藤三郎 100株 |
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。