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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

取締役1名の株式会社が、新たに取締役を1名追加する手続きと登記(取締役会非設置会社)

株式会社の取締役の選任手続き

株式会社の取締役は株主総会の決議によって選任し(会社法第329条1項)、選任された取締役がその就任を承諾することで被選任者は取締役に就任します。

取締役1名である株式会社が、従業員を取締役にして経営に参画させたり、業務を拡大するために外部の人を取締役に選任して取締役を複数名とするケースがあります。

ここでは取締役が1名(唯一の取締役かつ唯一の株主A)である株式会社Xが、代表取締役とはならない取締役Bを新たに追加するときの注意点と手続きを見てみます。

取締役1名の株式会社が代表取締役となる取締役を追加して、代表取締役2名とするときの手続きはこちらの記事をご確認ください。
≫取締役1名の株式会社が取締役を1名追加し、代表取締役が2名となるときの手続きと登記

定款の内容を確認する

取締役を追加する場面において、特に取締役会非設置会社では定款の内容を確認することが重要です。

Aにつき取締役の任期が満了しているときは取締役Aが退任しBが唯一の取締役となってしまったり、代表取締役の選定方法によっては代表取締役の選定行為をし忘れることにより取締役Aの代表権の根拠が揺らいでしまう可能性がが生じるためです。

取締役の員数を確認する

株式会社の定款には、取締役の員数が定められているケースが少なくありません。

(取締役の員数)
第●●条 当会社の取締役は、1名とする。

上記のように「当会社の取締役は、1名とする。」としているのであれば、2名以上の取締役がいることは定款違反になってしまいますので、取締役を選任する株主総会において定款変更の決議も併せて行います。

「当会社の取締役は、1名以上とする。」「当会社の取締役は、3名以下とする。」等のような記載であれば、定款変更の決議は必要ありません。

取締役の資格を確認する

定款で取締役の資格を規定している株式会社もあります。

非公開会社の場合、定款で取締役を株主に限定することも可能です(会社法第331条2項)。

(取締役の資格)
第●●条 取締役は、当会社の株主の中から選任する。

もし、定款にこのような規定のある株式会社が、株主以外の人を取締役に選任するのであれば、取締役を選任する株主総会において定款変更の決議も併せて行います。

親会社の監査役

株式会社の親会社の監査役は、当該株式会社の取締役に就任することはできません(会社法第335条2項)。

当該株式会社の親会社の監査役が当該株式会社の取締役に就任するのであれば、当該親会社の監査役を辞任等をする必要があります。

取締役の任期(重要)

取締役には必ず任期があり、定款に別段の定めのない限り選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法第332条1項)。

非公開会社においては取締役の任期につき、定款で定めることにより上記の2年を10年まで伸長することができるため、1人法人の多くは取締役の任期を10年まで伸長しています(インターネットの定款雛形から定款を作った会社は2年のままとしていることが少なくありません)。

(取締役の任期)
第●●条 取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

まず、取締役Bの選任時において取締役Aの任期が満了してAが権利義務取締役となっている場合、単にBを取締役に選任するとAは取締役を退任してしまいます。

≫権利義務取締役の説明はこちら

Aが権利義務取締役となっている状態で、B選任後もAが取締役を継続するのであれば、Aを取締役として再任する株主総会の決議が必須です。この手続きを忘れると、取締役はBのみという状態となってしまいます。

次に、取締役が1名から複数名になるタイミングで取締役の任期を短縮するケースも少なくありません。Bの取締役としての適正を定期的にチェックしたいニーズに沿った対応です。

任期を短縮した結果、短縮後の任期は原則としてAにも適用されるため、当該定款変更にともないAの任期が満了するときはAの再任決議も必要となりますのでご注意ください。

代表取締役の選定方法(重要)

取締役が2人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表するところ(会社法第349条2項)、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができます(会社法第349条3項)。

代表取締役の選定方法について、定款にその定めを設けている株式会社が多いように思います。

(代表取締役)
第●●条 当会社に取締役を複数置く場合には、代表取締役1名を置き、取締役の互選により定める。当会社に置く取締役が1名の場合には、当該取締役を代表取締役とする。

上記の定款記載例では、取締役が1名しかいない状況では当該取締役が(自動的に)代表取締役となりますが、取締役にBが就任することにより「取締役を複数置く場合」に該当するため、代表取締役の選定行為も必要となります。

また、株主がAのみのような場合、上記の定款記載例では(考えにくい状況ではありますが)Bが反対すると代表取締役を選定することができなくなるため、代表取締役の選定機関を株主総会の決議に変更しておくことが考えられます。

取締役を1名選任する

取締役は株主総会の決議によって選任しますので(会社法第329条1項)、株主が1名の株式会社であれば「みなし決議(会社法第319条1項)」で行うことがスムーズです。

取締役選任の決議要件

取締役選任の決議要件は、いわゆる特殊普通決議です。株主が1名の会社であれば、決議要件を気にする必要はありません。

≫株主総会とその決議要件(普通決議、特別決議、特殊決議 他)

役員報酬の決定

取締役が増員した場合、必要に応じて当該取締役の役員報酬を決めることが一般的です。

取締役の役員報酬は、株主総会の決議によって決定します(会社法第361条1項)。

役員報酬総額の枠を株主総会の決議で定めている場合は、その枠を広げる決議が必要なケースも少なくありません。

役付取締役の選定

取締役会長、取締役社長、取締役副社長、専務取締役、常務取締役等の役付取締役を選定するときは、定款に記載された方法によって選定します。

特に役付取締役が必要がないのであれば、必ず選定・決議しなければならない事項ではありません。

代表取締役を選定する

取締役会非設置会社の取締役は、原則として株式会社を代表しますので(会社法第349条1項)、定款に別段の定めがない場合は、選任された取締役Bは代表取締役となります。

ただし、取締役が複数名いる場合においても、

  • 定款
  • 株主総会の決議
  • 定款の定めに基づく取締役の互選

上記の方法によって特定の取締役を代表取締役とすることができます。

定款の定めに基づき取締役の互選によって代表取締役を選定する場合、株主総会決議内容の一例は次のとおりです。あくまで一例ですので、会社の定款や状況に応じて内容は変わります。

  1. 第1号議案 定款一部変更の件
  2. 第2号議案 取締役選任の件
  3. 第3号議案 取締役の報酬額決定の件

取締役1名追加の登記手続き

取締役を1名選任したときは、その就任の効力が発生した日から2週間以内に取締役の変更登記を申請しなければなりません(会社法第915条)。

登記申請書に登録免許税となる収入印紙を貼付して、添付書類と一緒に当該株式会社を管轄する法務局へ提出します。

登記申請の添付書類

取締役1名の株式会社が新たに取締役1名を選任し、当該取締役がその就任を承諾したときの登記に係る添付書類の一例は次のとおりです。あくまで一例ですので、会社の定款や状況に応じて内容は変わります。

  1. 株主総会議事録
  2. 株主リスト
  3. 就任を承諾したことを証する書面
  4. Bの印鑑証明書

代表取締役がAから変わらない場合、代表取締役としてAを選定した株主総会議事録や取締役の互選書は登記の添付書面とはなりません(添付書面として提出はしませんが実体として、定款の内容に応じてそれらの決議は必要です)。

Aを含め、登記簿に記載する役員の旧氏を併記する場合は旧氏の記載のある戸籍抄本等も準備します。
≫添付書面としての本人確認証明書及び旧氏の併記について(法務省)

登録免許税

取締役就任の登記に係る登録免許税は、資本金の額が1億円以下の株式会社は1万円、資本金の額が1億円を超える株式会社は3万円です。

≫取締役、監査役等の役員変更登記の登録免許税(株式会社)

ステークホルダーが自分のみの状況においては、会社法の手続きや登記を自社で行うケースも少なくありませんが、役員が増える、あるいは出資を受けることで株主が増える等のように、ステークホルダーに自分以外の人(法人)が入ってくるフェーズでは司法書士に相談するとスムーズかと思います。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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