商業登記関係 取締役、監査役全員が重任(再任)するときの手続きと登記
役員の任期と再任手続き
株式会社の取締役と監査役(以下、併せて「役員」といいます)には任期があり、任期を満了した役員は退任することになります。
そのため、役員の任期を把握しておくことは株式会社において大切な事項です。
なお、有限会社の役員には任期はありませんので、役員が任期満了により退任することはありません。
同じ人が役員を継続する場合
役員は同じ人が継続して行うので、役員変更(重任)の手続きは不要だと誤解している会社は少なくありません。
しかし、役員を別の人に変える予定がない状況であったとしても、任期が満了した役員は退任します。
継続して役員として業務を執行するのであれば、任期が満了するタイミングで再度取締役に選任することになります。
同じ役員が退任すると同時に就任することを再任、あるいは重任といいます。
既に任期が過ぎてしまっている場合は、こちらの記事をご参照ください。
役員を選任する手続きを採る
ある役員がその役職を継続する場合でも、任期が満了すれば退任となってしまい、それを避けるのであれば任期満了と同時に再度役員として選任する必要があります。
役員選任の手続きと登記までのおおまかな流れは次のとおりです。
会社の機関設計や定款の内容によって異なる場合があります。
- 取締役会の決議・取締役の決定(決算承認、株主総会の開催決定)
- 招集通知の発送
- 定時株主総会の開催
- 取締役会の決議・取締役の互選(代表取締役選定)
- 登記申請(役員就任から2週間以内)
以下、「3」以降を見ていきます。
定時株主総会の開催
取締役Aの任期が満了するのは第10回定時株主総会の終結時である会社の場合、当該定時株主総会の決議でAを取締役として選任することになります。
株主が少数である会社は、みなし株主総会・書面決議(会社法第319条1項)の方法が便利かもしれません。
定時株主総会では事業報告、決算承認も行いますが、これもみなし株主総会で行うことができます。
取締役会の決議
取締役の任期が満了すると取締役を一度退任するため、同じ人が代表取締役を継続する場合でも代表取締役を選定し直さなければなりません。
代表取締役の選定の仕方は、多くの会社では次のいずれかに当てはまるでしょう。
間違った方法で代表取締役を選定しないよう、定款をご確認ください。
- 取締役会の決議(取締役会設置会社)
- 取締役の互選(取締役会非設置会社、定款に取締役の互選によって代表取締役を定める記載あり)
- 株主総会の決議(取締役会非設置会社、定款に株主総会の決議によって代表取締役を定める記載あり)
役員変更登記の申請
役員が就任(重任)したときは、就任日から2週間以内にその登記申請をしなければなりません(会社法第915条1項)。
役員変更登記には、次の書類を添付します。
なお、商業登記規則第61条の関係上、代表取締役を選定したことを証する書面には代表取締役が会社実印を押印します。
また、監査役の重任登記においては、監査役の監査の範囲に関する登記についてもご確認ください。
取締役設置会社
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 取締役会議事録
- ≫役員及び代表取締役の就任の承諾を証する書面
取締役非設置会社(代表取締役の選定方法は取締役の互選)
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 取締役の互選書
- 定款
- ≫役員及び代表取締役の就任の承諾を証する書面
取締役非設置会社(代表取締役の選定方法は株主総会)
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- ≫役員及び代表取締役の就任の承諾を証する書面
役員変更登記の登録免許税
役員変更登記の登録免許税は、役員変更時の株式会社の資本金の額によって次のように定められています。
- 1万円(資本金の額が1億円以下の株式会社)
- 3万円(資本金の額が3億円以下の株式会社)
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。