不動産登記関係 「その他一切の財産を相続させる」旨の遺言がある場合の相続登記手続き
遺言と相続させる旨の記載
遺言には、遺言に記載することによって法的効力を生じさせることのできる遺言事項があります。
遺言者が法定相続人の相続割合を決めたいときは、相続分の指定(民法第902条1項)をすることができます。
また、遺言者が自身の財産をそれぞれ特定の相続人に承継させたいときは、相続させる旨の遺言も有効と解されています。
(不動産の表示)省略
遺言と相続登記
被相続人の財産に関する権利義務は法定相続人が承継をすることになりますが、遺言がある場合は遺言の内容に従って財産が承継されることになります。
相続登記をするときは、相続登記の申請人である相続人が不動産を承継した事実を証する書面として、遺言を提出することができます。
当該遺言が自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認手続きを経なければなりません。
≫自筆証書遺言がある場合の相続登記手続き
≫公正証書遺言がある場合の相続登記手続き
その他一切の財産を相続させる旨の遺言と相続登記
X不動産は妻へ、Y不動産は長男へ、預貯金・現金は全て長女へ、その他一切の財産は妻へ相続させる旨の遺言があったとします。
遺言者が亡くなった後に、遺言者が把握していなかった遺言者所有のZ不動産が見つかったらどうなるでしょうか。
Z不動産は「その他一切の財産」に該当しますので、妻が相続することになります。
この遺言を用いて、Z不動産につき妻名義へと相続登記を行います。
遺言者が把握していない不動産
多くのケースにおいては遺言者が自身の所有している不動産を把握していないということはありません。
一方で、不動産の場所は把握しているけれども、土地が分筆されていて見た目は一つの土地なのに複数の登記簿に分かれている場合や、私道部分を共有していることを忘れてしまっていることがあります。
また、自宅だけではなく物置や小屋についても登記簿がある場合もあります。
その他一切の財産の行き先についても遺言に記載しておくことによって、記載漏れの不動産その他財産についても相続人間で遺産分割協議を行う手間が省けます。
Z不動産がY不動産の私道部分
上記の例でZ不動産がY不動産の私道部分であった場合はどうでしょうか。
本地であるY不動産を長男が、その私道部分であるZ不動産を妻が相続することになってしまいます。
本地と私道部分を別々の人が所有することは望ましくありませんので、Z不動産につき遺産分割協議をして長男が相続することになりそうです。
遺言を書くときは、名寄帳を取得する等して所有不動産を正確に把握しておくことをお勧めします。
相続登記と遺言執行者
相続人へ相続させる旨の遺言の中で、遺言執行者が選任されているケースの相続登記は誰が申請をすることになるのでしょうか。
一見、遺言の内容を執行するのであるから遺言執行者が相続登記を申請することができそうですが、この場合遺言執行者は相続登記を申請することができません。
各相続人が自分名義への相続登記をそれぞれ申請することになります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。