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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

株式会社が合同会社の持分を取得する対価として、新たに株式を交付するときの登記

合同会社を完全子会社とする

株式会社が合同会社を100%子会社にするときは、合同会社の全社員の全持分を取得する方法によって実現をすることができます。

このとき、持分を取得する対価として現金を交付するのであれば話は比較的単純になりますが、対価として自社の株式を交付したいというニーズがあったとします。

原則として、お互いの合意があれば契約は自由に締結することができますので、合同会社の持分の対価が株式会社の株式であっても問題はありません。

合同会社と株式交換

会社間で完全親会社、完全子会社の関係を作るには、株式交換という方法があります。

さて、合同会社は株式交換の完全親会社となることはできますが、完全子会社となることはできません。

そのため、合同会社が株式会社の100%子会社となるときは、株式交換の手続きを利用することはできないということになります。

≫組織再編(合併、分割、株式交換、株式移転)をすることができる会社形態一覧

持分譲渡と株式の対価の交付

持分譲渡契約は持分を譲渡(売る、あげる)とする契約ですので、何も条件を付けなければ、対価を定めたとしても対価の交付無しに持分譲渡の効力は発生します(対価の交付義務は生じます)。

不動産取引における多くのケースでは、売買代金を支払った時に所有権が移転する等の条件を付けることが一般的です。

しかし、株式会社の募集株式の発行手続きの性質上、出資の履行→株式の発行という順番になるため、持分譲渡(持分の出資)が先行し、その後に対価となる株式の交付という順番なります。

株式の交付を条件に持分を譲渡するという契約内容はおそらく難しく、募集株式の発行を総数引受契約方式で持分譲渡契約日と同日に行う、あるいは募集株式の発行手続きが適正に行われなかった場合に備えて解除権を留保する等して、持分の譲渡人のリスクをヘッジすることになりそうです。

価格と対価をどうするか

合同会社の社員が1人でその持分の時価が100万円、株式会社の1株の価格が100万円であれば、対価として株式会社の株式を何株交付すればいいかという点においては話は単純です。

合同会社の社員に対して、持分の対価として1株を交付すれば済むためです。

しかし、実際には合同会社の持分の価格をどう評価して、株式会社の1株の価格をどのように評価するのかはよく検討をする必要があります。

株式会社の株価算定、合同会社の持分評価については、汐留パートナーズ株式会社にて承ることが可能です。

合同会社側の登記

合同会社の業務執行社員と代表社員の氏名又は名称及び住所は登記事項とされていますので、持分譲渡によりそれらが変わったときはその変更登記が必要となります。

株式会社が業務執行社員、代表社員となるときは職務執行者となる個人を選任しなければなりません。

持分譲渡による業務執行社員、代表社員の変更登記については、次の記事をご参照ください。

≫合同会社の持分全部譲渡による社員の変更

合同会社の資本金の額

社員が出資した額が100万円で、当該持分を対価500万円で譲渡されたとしても合同会社の資本金の額に変動は生じません。

500万円の対価は株式会社から合同会社の社員に支払われるものであり、合同会社自身に何か新たに出資がされたわけではないためです。

同様に、定款に記載される「社員の出資の価額」も変更は生じません。

もちろん、定款に記載される「社員の氏名又は名称及び住所」は持分の譲渡先である株式会社に変わることになります。

株式会社側の登記

株式会社は合同会社の持分を現金で取得するのであれば何も登記手続きはする必要がありませんが、対価として新たに株式を発行し交付するときは募集株式の発行による変更登記が必要となります。

具体的には、合同会社の持分を現物出資することによる、現物出資による募集株式の発行手続きを踏むことになります。

手続きの結果として、株式会社の発行済株式数と資本金の額が増えることになりますのでその登記を申請します。

登記申請の添付書類の一例としては、次の書類が挙げられます。あくまで一例です。

  1. 株主総会議事録
  2. 株主リスト
  3. 総数引受契約書
  4. 取締役会議事録
  5. 税理士等の証明書(一定の要件を満たした場合)
  6. 資本金計上証明書
全て自己株式を交付する場合

合同会社の持分の対価として交付する株式が全て自己株式の場合は、発行済株式数も資本金の額も変動が生じませんので、登記手続きは不要です。

しかし、株主総会の決議や取締役会の決議を省略することはできません。

≫自己株式を第三者へ譲渡・売却する方法

合同会社の持分譲渡契約書に、持分を譲り受ける株式会社側の(株主総会等の)手続きをしっかり行う条項を盛り込むことが一般的ですので、契約違反とならないようにする意味でも手続きはしっかりと踏んでおきましょう。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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