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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

種類株式を廃止して普通株式のみにするにはどのような方法があるか

種類株式を廃止したい

普通株式とA種類株式を発行している株式会社Xがあったときに、株式会社XがA種類株式を廃止して、その発行する株式を普通株式のみにしたいと考えたとします。

A種類株式を廃止して、その発行する株式を普通株式のみにするためには、株式会社Xはどのような方法をとることができるのでしょうか。

実際にA種類株式を発行しているケースと、定款及び登記簿にはA種類株式の記載はあるけれども実際にはA種類株式を発行していないケースでは手続きが異なってきます。

実際にA種類株式を発行しているケース

A種類株式を実際に発行している場合、それが自己株式でないのであれば、A種類株式を保有している株主(以下、「A種類株主」といいます。)がいることになります。

種類株式の内容を変更するときは、当該種類株主総会の特別決議が求められているため(会社法第322条項1号ロ)、A種類株主の存在を無視して勝手にA種類株式を廃止することはできません。

もし、A種類株主の一部を普通株主に変更するのであれば、普通株主となるA種類株主と合意し、その他の株主の同意を得る方法により、A種類株主(の一部)を普通株主に変更することができます。

≫発行済株式の一部の株式の内容を変更する登記手続き

株主総会の特別決議によって定款変更

A種類株式を廃止することは、A種類株式の内容を変更して普通株式の内容と同一とすること、とも捉えられます。

そのため、株主総会の特別決議とA種類株主総会の特別決議によってA種類株式をの内容を変更し、普通株式の内容と同一とします。

この決議の効力が生じたときに、A種類株式が無くなり、普通株式のみ発行している会社へ移行します。

この場合、A種類株式1株を保有しているA種類株主は、普通株式1株を保有する普通株主になりますので、例えばA種類株式1株を保有しているA種類株主に対して普通株式10株を持たせたいのであれば、A種類株式のみ株式分割をする、あるいは取得請求権・取得条項等を用いて対価を調整する方法が考えられます。

全部取得条項付株式、取得請求権付株式

普通株式への転換につき、A種類株主の多数から承諾が得られているのであれば、A種類株式に全部取得条項を付けてA種株主総会でそれを発動させる方法もあります。

A種類株式につき、全部取得条項の対価を普通株式として設定します。

この条項を発動させるとA種類株主が居なくなりますので、その後、株主総会の特別決議でA種類株式を定款から削除します。

株主全員がA種類株式の削除に同意をしているのであれば、A種類株式に取得請求権を付けて、A種類株式に取得請求権を行使してもらう方法もあるでしょうか(その後は上記全部取得条項付株式と同じ方法でA種類株式を削除)。

ただし、上記のとおり株主総会の特別決議で直接種類株式の変更をすることができるため、これらの方法をあえて選択しなくても良いかもしれません。

なお、全部取得条項や取得請求権を付けてそれを発動させると、A種類株式は自己株式となりますので、当該自己株式を消却しない限り、自己株式であるA種類株式が定款変更により普通株式になるという点も検討が必要でしょう。

自己株式を取得する

A種類株式を全て会社が回収するという意味では、会社が自己株式を取得する手続きを踏むことにより回収する方法もあります。

A種類株主がEXITしたいのであれば、この方法もあり得るでしょうか。

有償で自己株式を取得するときは、財源規制に注意する必要があります。

≫特定の株式から自己株式を有償で取得する場合の手続き
≫自己株式を無償で取得する場合の手続き

取得請求権を付けてその対価を金銭とする方法でも良いかもしれません。

登記申請の添付書類

種類株式を発行している株式会社が、株主総会及び種類株主総会の特別決議によって定款変更をする方法により、種類株式を廃止する登記申請の添付書類の一例は次のとおりです。

  • 株主総会議事録(種類株主総会議事録含む)
  • 株主リスト
  • 定款

実際にはA種類株式を発行していないケース

定款にはA種類株式の記載があるけれども、実際にはA種類株式を発行していない(A種類株式を保有する株主がいない)場合は、株主総会の特別決議によって定款を変更するだけでA種類株式を削除することが可能です。

A種類株式が定款から削除されれば、結果として普通株式のみを発行する株式会社となります。

登記申請の添付書類

種類株式を実際には発行していない株式会社が、種類株式を廃止する登記申請の添付書類の一例は次のとおりです。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 定款

この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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