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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

設立時の協力者全員に株式を持たせるべきか

設立時の発起人

株式会社を設立するには、発起人が1名以上必要であり、その発起人による1円以上の出資が求められます。この発起人は、当該株式会社の株主となるためその選定及び出資比率は考えた方がいいかもしれません。

会社法上、会社の設立手続き上は、発起人(株主)は何名いても問題はなく、1名でも10名でも100名でも問題はありません。

発起設立においては、発起人が多いと会社の基本となる定款等の内容を決めるのも大変であり、発起人全員の実印での押印作業、発起人全員の印鑑証明書を集める作業も骨が折れそうです。

株式会社設立時、一般的には定款認証の際に公証人に提出する発起人から(司法書士へ)の委任状には、1枚の用紙に発起人全員の押印をいただきますが、別の用紙の委任状でも内容が全て同じであれば、発起人1人につき1枚の用紙でも問題ないことがあります。東京都内のとある公証役場3ヵ所では問題がありませんでした。

せっかくだから記念に数株持ちたい

株式会社を設立する際に、出資金額は少ないけれども協力者・関係者の中で記念に株式を持ちたいという方がいるケースがあります。たしかに1円でも出資をすれば株主になることは会社法上できます。しかし、このようなケースでは株主が多くなることの運営上のリスクを考えると、記念に数株を持つ株主はいない方が望ましいと思います。

株主が多くなることのリスク

管理コスト

株式会社は、毎年定時株主総会を開催しなければならず、また必要に応じて臨時株主総会を開催することもできます。どちらの株主総会においても、株主総会開催にあたり株主全員に招集通知を出さなくてなりません。

また所有している株式が少なくても株主には様々な権利があります。一定の要件はありますが、例えば株主総会決議取消訴訟の提起ができたり、取締役の行為の差止請求をしたり、取締役会の招集を請求できたり、株主総会の議案を提案したりすることも要件を満たせば可能です。

ただ株式を持っているだけで配当があれば何もしない、という約束で株式を引き受けた人も、数年後は当該会社の経営者とどのような関係性になっているかは分かりません。

運営リスク

一部の会社を除き、毎年の決算承認には定時株主総会での決議が必要となり、また、会社名を変える、役員を選任する、会社目的を変更する、別の都道府県に本店移転をするなどをするときは、株主総会において決議が必要となります。

普通決議においても株主の議決権の過半数の同意が必要となるため、発起人2名が50%ずつ議決権を保有している場合は、途中で株主同士の意見の不一致が生まれてしまったり株主同士が仲違いをしてしまうと、株主総会において何の決議もすることができず会社の運営が滞ってしまいます。50%ずつ保有というのは、すなわち、お互いが同意しないと何も決められない0か100かの状況ということです。

後で株主から排除するのは大変

たとえ1株しか所有していない株主でも、一度株主となってしまえば後で株主から退いてもらう(株式を手放してもらう)ことは非常に大変です。もちろん、株主が合意をして任意で退いてくれるのであれば話は早いのですが、相手のあることなので毎回そういうことにもなりません。

スクイーズアウトの手続き(≫特別支配株主の株式等売渡請求≫株式併合≫全部取得条項付種類株式)は手間が非常にかかりますし、買取価格の折り合いが相手とつかなければ裁判所に価格を決定してもらわなければなりません(タダで排除できるわけではありません)。価格も設立当初の価格ではなく、現在の企業価値から算定するため設立当初の1株の価格より上がっているかもしれません。下がっているかもしれません。

≫株主が行方不明となってしまった場合は、こちらも勝手に行方不明者の株式を会社や第三者が取得できるわけではなく、5年間会社からの通知が届かなかったことの立証や株式の価格を裁判所に決定してもらったり、必要であればその代金の供託手続きもすることになるかもしれません。

とはいえ資金は確保したい

資本金を出資した見返りが株式という構図があるため、資本金を出資してもらう条件が株式の交付となっているのであれば、それは株主になってもらうしかないともいえます。

資金調達には借入という方法もあるので、出資ではなく借入という形にしてもらうこともありますが、出資と異なり借入では債権者が株主とならず議決権を与えなくて済みますが、借入は返す必要があることや貸借対照表上見た目がよくない点があります(資本金が少なく、負債が大きくなります)。

以下は議決権数を調整することができる方法ですが、設立時から導入する実例はあまり多くはありません。

出資金額と付与する株式数の比率を変えられるか

1万円を出資するAさんと、99万円を出資するBさんがいたときに、1株1万円とすればAさんは1株、Bさんは99株が割り当てられるケースがほとんどです。しかし、会社設立手続きにおいては出資金と割り当て株式数は任意で決定することができるため、Aさんに99株、Bさんに1株を割り当てることも可能です。1株も割り当てないことはできません。

Bさんが同意をしない限りは割り当て株式比率を出資比率と異なるものにすることはできませんし、Bさんが同意することはあまり考えられませんが、もしこのような方法を選択される場合は、念のため税理士さんに税制面(贈与税)の確認をしてください。

議決権制限株式

出資をして株式を所有はしたいけど配当金や残余財産の分配だけがあれば議決権は無くてもいい、というニーズがあれば、議決権が制限された(議決権の無い)種類株式を発行し、当該種類株式を割り当てるという方法もあります。設立時から種類株式を発行することはできます。

属人的株式の定め

非公開会社においては、剰余金の配当、残余財産の分配、議決権に関してのみ、株主毎に異なる取扱いを定款に定めることができます(会社法第109条)。この≫属人的株式の定めを定款に設けることにより、議決権の割合を持ち株数には応じることなく調整をすることができます。もちろん、議決権に関して不利を受けることになる発起人(株主)の同意は必要です。

設立時の経営パートナーに株式を保有させるのは悪いことばかりではありません

株主は少ないほうが運営はスムーズにいくかもしれませんが、やはり1人では資本金として出資できる金額も限度がありますし、資本金として出資された財産は会社が続く限り返さなくていいのは魅力的です。

それよりも何より会社を経営・運営していくのは人間ですので、自分の経営している会社の株式を所有しているという責任やパートナーがお互いに信頼をする・されていること、将来会社が成長したときの株価への期待など、表面的な運営のスムーズさを超えるメリットもあるかもしれません。

どこまでリスクを許容できるのかという点になるのかと思います。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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