商業登記関係 取締役、監査役を選任した議事録と住所の記載
取締役、監査役の選任と登記
株式会社においては、取締役と監査役の氏名、代表取締役の住所及び氏名が登記事項とされています。
取締役と監査役が代わったときや、再任したときなど、取締役と監査役に変更があったときは、その変更の時から2週間以内にその旨の登記をしなければならないとされています。
取締役、監査役の選任は株主総会の決議事項
取締役、監査役を選任するときは、株主総会の普通決議によって行います(会社法第341条1項)。
定款に別段の定めがあるときは、その定めに従って決議をします。
取締役に限り、累積投票という制度もあります。
再任の場合もその決議と登記が必要
同じ人物が取締役、監査役であり続けるときも、任期がきたら株主総会の決議でその選任(再任)手続きをしなければなりません。
これを忘れてしまうと選任懈怠に該当し、12年以上登記簿に変更がないと休眠会社に該当し、いつの間にか解散しているとみなされてしまう可能性があります。
株主総会議事録に取締役、監査役の住所の必要性
取締役、監査役が選任されたときは、その株主総会議事録に誰が選任されたのか記載します。
このとき、登記手続き上、選任された取締役、監査役の住所の記載が必要かどうかはケースによって異なります。
本人確認証明書の添付
商業登記規則の一部改正が平成27年2月27日に施行されたことにより、取締役・監査役が新しく就任するときは、本人確認証明書の添付が必要となりました。
役員就任の登記申請に本人確認証明書の添付が必要になったことにより、選任された取締役・監査役と本人確認証明書に記載された取締役・監査役が同一人物であるか登記官にチェックされることになりました。
再任のケース
取締役・監査役が再任であるときは、本人確認証明書の添付が不要です。
再任であるときは、登記手続き上、株主総会議事録には再任された取締役・監査役の氏名だけでよく、住所の記載がなくても問題ありません。
(もちろん、議案の内容等法定の記載事項は必要です)
就任承諾を証する書面として議事録の記載を援用する
取締役・監査役が選任されたとき、当該取締役・監査役が株主総会に出席しており、その場で就任の承諾をしたときは、株主総会議事録にその旨の記載をすることにより、就任承諾書の添付を省略することができます。
この場合、選任された取締役・監査役が、本人確認証明書に記載された人物と同一人物であることを示すために、株主総会議事録には取締役・監査役の住所の記載も必要となります。
なお、株主総会議事録は株主や債権者が閲覧することができるとされていますので(会社法第318条4項)、その点から議事録に住所を記載したくないのであれば、下記のとおり別途就任承諾書を用意することになります。
≫株主総会議事録を取締役、監査役の就任承諾を証する書面として援用する
就任承諾を証する書面として就任承諾書を用意する
就任承諾書を登記申請に添付するケースでは、就任承諾書に選任された取締役・監査役の住所を記載するときは、登記手続き上、株主総会議事録に取締役・監査役の住所を記載しなくても問題ありません。
この場合、選任された取締役・監査役と、本人確認証明書に記載された人物が同一人物であることが、就任承諾書を見ることにより分かるからです。
印鑑証明書を本人確認証明書として使用する
印鑑証明書を本人確認証明書として登記申請に添付するときは、実印の印影と氏名によって本人の実在性を証明することができそうではありますが、法務局によっては議事録や就任承諾書に住所の記載まで求めてくることがありますので、住所も記載しておいた方が無難です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。