商業登記関係 パートナーには何株まで持ってもらう?持株数に応じた株主の権利を確認する
持株数と株主の権利
株式会社を設立するときに、共同創業者に出資をしてもらい株式を保有してもらうというケースは少なくないでしょう。
あまりお勧めはできませんが、関係者や協力者に1株ずつ保有してもらっている会社もあるでしょう。
外部からエクイティで資金調達をするときは、出資者に株式を交付することになります。
株主には持株数に応じた権利や権限が生じるため、株式を交付する側はそれを理解した上で交付した方が良いことは間違いありません。
ここでは、普通株式100株のみを発行している株式会社(取締役会非設置会社)の株主の権利・権限を見てみます。
※定款に決議要件について別段の定めがないことを前提としています。
株主の有する権利
まず株主には次の権利があります。
- 株主総会における議決権
- 剰余金配当請求権
- 残余財産分配請求権
株式を1株しか持っていない株主にも株主総会を開催するときは毎回招集通知を送る必要があり、機動力の低下や管理コストがかかることから、記念や何となく1株を第三者に渡すことはお勧めしません。
1株以上
1株でも保有していれば行使できる権利のことを単独株主権といい、単独株主権の一例は次のとおりです。
- 株主総会における議案提案権
- 株主総会議事録の閲覧等請求権
- 計算書類等の閲覧等請求権
- 株主総会決議取消の訴え提起権
- 代表訴訟提起権
単独株主権の詳細については、次の記事をご参照ください。
3株(発行済株式の3/100)以上
一定数あるいは一定割合以上の株式を保有している株主が行使できる権利のことを少数株主権といい、3株(発行済株式の3/100以上)保有している株主の少数株主権の一例は次のとおりです。
- 株主総会招集請求権
- 業務執行に関する検査役の選任請求権
- 会計帳簿閲覧請求権
- 役員解任請求権
少数株主権の詳細については、次の記事をご参照ください。
10株(発行済株式の1/10)以上
少数株主権のうち、10株(発行済株式の1/10以上)保有している株主の少数株主権の一例は次のとおりです。
- 株主総会の検査役選任請求権
- 解散請求権
34株(発行済株式の1/3)以上
34株(発行済株式の1/3)以上保有している株主は、当該株主が株主総会に出席する限りにおいて、特別決議の成立を否決する権限を有することになります。
特別決議を成立させるためには、議決権の2/3以上の賛成が必要であり(会社法第309条2項)、発行済株式の1/3以上保有する株主がNOと言えば特別決議を成立させることができないためです。
特別決議が必要な議案の一例は次のとおりです。
- 定款の変更
- 増資
- 減資
- 事業の全部譲渡
- 解散
- 合併等の組織再編行為
50株(発行済株式の1/2)
50株(発行済株式の1/2)保有している株主は、当該株主が株主総会に出席する限りにおいて、普通決議の成立を否決する権限を有することになります。
普通決議を成立させるためには、議決権の過半数の賛成が必要であり、発行済株式の1/2保有する株主がNOと言えば普通決議を成立させることができないためです。
普通決議が必要な議案の一例は次のとおりです。
- 役員の選任
- 取締役の解任
- 役員報酬の決定
- 計算書類の承認
- 剰余金の処分
51株(発行済株式の51%)以上
51株(発行済株式の1/2以上)保有している株主は、当該株主が株主総会に出席する限りにおいて、普通決議を成立をさせる権限を有することになります。
普通決議を成立させるためには、議決権の過半数の賛成が必要であり、発行済株式の過半数を保有する株主がYESと言えば普通決議を成立させることができるためです。
67株(発行済株式の2/3)以上
67株(発行済株式の2/3以上)保有している株主は、当該株主が株主総会に出席する限りにおいて、特別決議を成立をさせる権限を有することになります。
特別決議を成立させるためには、議決権の2/3以上の賛成が必要であり(会社法第309条2項)、発行済株式の2/3以上を保有する株主がYESと言えば特別決議を成立させることができるためです。
75株(発行済株式の3/4)以上
75株(発行済株式の3/4以上)保有している株主は、当該株主が株主総会
公開会社でない株式会社は、議決権の行使・剰余金の配当・残余財産の分配に関して、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができ(会社法第109条2項)、これは株主総会の特殊決議によって定款に定める方法によります。
この株主ごとに異なる取扱いを行うことは、属人的株式と呼ばれています。
≫属人的株式(株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定款の定め)とは
誰を株主とするのか、各株主の持株数は慎重に
1株でも所有している株主には多くの権利があり、それらを理由なく会社が無視するこはできません。
何となく34%の株式を渡してしまい、後に当該株主と仲が悪くなり全ての議案について反対するようになってしまった場合、定款変更すらできなくなってしまいます。
一度交付した株式は、原則として、株主から株式を強制的に取得することはできません。
少数株主であれば株式併合等を利用して排除できますが、お金も時間も手間もかかります。
会社設立時、その後の資本政策においては、株式数と株主の権利について十分に検討してから実施した方がいいでしょう。
ベンチャー企業と資本政策
ベンチャー企業はエクイティファイナンスによる資金調達を行うことが少なくありません。
エクイティファイナンスは行えば行うほど、創業者の持株比率は薄まっていきます。
企業価値をいくらとして資金を調達するのか、創業者等の持株比率を将来的にどのようにするのかを計画することを資本政策といいます。
汐留パートナーズグループでは資本政策に関するご相談も承っておりますので、ご相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。