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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

取締役にインセンティブとして株式を交付することと出口の設計

取締役に株式を保有してもらう

定款に別段の定めのない限り、取締役は必ずしも株主である必要はありません。

しかし、取締役に対するインセンティブとして株式を交付している会社は意外と少なくありません。

会社が成長することにより株価上昇によるキャピタルゲインを得られることや、配当によるインカムゲインを得られる可能性があるため、取締役に業績を上げようというインセンティブが働きます。

株主となることにより会社に対する帰属意識が高まったり、責任を持ってもらうという意味もあるでしょうか。

ところで、株式を保有した取締役が退任したときは、当該株式はどうなるのでしょうか。

株式は保有したまま、が原則

取締役の地位と株式の保有者の地位は別のものです。

そのため、取締役を辞めたとしても、自動的のその保有される株式が会社や主要株主へ移動されることはありません。

これは、勝手に会社を辞めてライバル会社に勤め始めたとしても結果は同じです(損害賠償の問題はありますが)。

当該株主が亡くなって、会社とは無縁な(当該株主の)相続人が株式を保有する状況になることもあり得ます。

つまり、例え無料で株式を交付した場合でも、その株主がいつまでも会社に協力的であるとは限りません。

株主としての権利

株主には多くの権利があり、理由なく会社側はこれを否定することはできません。

単独株主権として、1株でも保有している株主は、株主総会で議案を提案すること(会社法第304条)ができますし、計算書類等の閲覧をすることができます(会社法第442条3項)。

≫少数株主権
≫単独株主権

株式の出口戦略を設計する

株式を交付するときは、その株式が将来的にどうなるのかを検討しておいた方がいいでしょう。

上記のとおり、株主には多くの権利があり、また所有者の意思に反して株式を回収することは困難です(スクイーズアウトという方法はありますが、、)。

どうしてもインセンティブとして取締役や従業員に株式を交付するのであれば、次のような方法でリスクヘッジをしておくことが考えられます。

会社が株式を買い取るときは分配可能額が確保されていないとならない等の条件はあるため、あくまでヘッジに留まります。

定款に相続人等への株式売渡し請求の規定を設ける

株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができます(会社法第174条)。

定款にこの旨を定めておくことにより、取締役に相続が発生したときに株式を回収することができます。

なお、主要株主もこの規定の対象となりますので、主要株主の相続人の株式に対しても売渡し請求される可能性も生じますし、分配可能額の制限もあります(会社法第461条1項5号)。

≫相続人等に対する株式の売渡し請求という定款の規定と請求権の行使

株主間契約を締結する

主要株主(創業者のケースが多い)と取締役の間で、株主間契約を結んでおくことが考えられます。

取締役が会社を退職したときは、主要株主が、当該取締役が保有している株式を買い取ることができるようにしておきます。

もし買取価額を譲渡価額(取得価額)として設定するのであれば、インカムゲインとしてのメリットがメインとなり、そうであれば賞与等でインセンティブを設計した方が税務的にも良さそうな気がします。

取得条項付種類株式の活用

種類株式を用いて株式を回収することができるよう設計しておく方法が考えられます。

具体的には、取得条項付種類株式の取得事由を取締役の退任等になるでしょうか。

≫取得条項付株式の設定と発行

種類株式は定款に記載し、その登記をしなければなりませんので、株主間契約に比べて手続きがやや煩雑となります。

新株予約権を発行する

現物株でなく、新株予約権をインセンティブとして付与することも可能です。

行使期間のスタートを(取締役の年齢にもよりますが)65歳以降にするとか、行使条件を行使時点で取締役であること等にすることが考えられます。

税制適格になるかどうか、司法書士だけでなく税理士とも相談しながら設計することをお勧めします。

また、新株予約権を行使され現物株となった後はその株式は保有され続けるため、交付しなければならないもののその株式につき、会社としてどうすることが望ましいかは上記同様に検討が必要です。

株式以外のインセンティブを検討する

株式は一度交付するとそれを回収することは簡単ではなく、株主には多くの権利が付与されています。

定款に別段の定めのない限り、取締役に株式を付与することは必須事項ではありませんので、別のインセンティブを設計することも有用です。

株式を何の対策もしないまま役員に交付したものの、役員が突然辞めてしまった、方向性が違うため辞めてもらいたい等により、株式を回収したいのに相手が同意しない、連絡が取れないという話はよく聞きます。

株式の特徴を理解して、株式を交付するときはそのリスクについても十分にご検討ください。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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