AI活用の進展とガバナンスの重要性
- 2026.08.20
- ビジネスの話
Claudeの活用によって、これまで多くの時間と手間を要していた業務工数は劇的に削減されます。文書作成や情報整理、アイデア出し、定型業務の補助など、さまざまな場面で生産性向上が期待できることから、こうしたポジティブな側面に注目が集まるのは当然の流れといえるでしょう。一方で、その利便性や効率性に目を向けるだけでなく、その裏側にあるリスクについても冷静に捉えていかなければいけません。
AI活用においては、データ漏洩のリスクが現実のものとして報告されており、サイバーセキュリティ上の脅威や脆弱性の影響も無視できません。加えて、悪意ある操作や誤作動によって不正確な情報が生成される懸念もあります。AIは非常に強力なツールである一方で、その出力を無条件に信頼するのではなく、適切に管理しながら活用していく姿勢が求められます。
そのため、従来のISO 27001(ISMS)に加え、2023年に発行されたAIマネジメントシステム規格「ISO/IEC 42001」への対応・認証の重要性が高まっています。AI特有のリスク、すなわちデータ利用の適切性、モデル挙動の妥当性、ガバナンス体制の整備といった論点を体系的に管理できているかが、今後の信頼性確保のポイントとなるでしょう。単にAIを導入しているかではなく、それをどのような管理体制のもとで運用しているかが、企業や組織の評価を左右する時代になりつつあります。
本来であれば、こうした「守り」を固めてから導入すべきかもしれませんが、会計業界ではまず、個人事業主や中小法人といった領域から活用が進むと思われます。先行する領域では、試行錯誤とトラブルが繰り返され、その都度ルールや技術がアップデートされていきます。いわば、いたちごっこのような進化プロセスを経ながら、実務に適した活用の在り方が少しずつ形づくられていくことになるでしょう。
誰かが一歩踏み出すことで流れが生まれ、その後に続くプレイヤーが現れます。重要なのは、単にその流れに乗るだけでなく、各ファームが想定されるリスクを織り込んだ意思決定を行えているかどうかではないでしょうか。効率化や競争力強化といったメリットだけでなく、その裏側にある責任や管理負担まで見据えたうえで導入を進めることが、結果として持続的な活用につながっていくはずです。
絶え間ないアップデートを受け入れ、変化を恐れず、かつ慎重に歩みを進める先に、AIとの健全な共生が待っています。利便性とリスクの両方を正しく理解しながら、適切な統制のもとで活用を進めていくことこそが、これからの時代に求められる姿勢ではないでしょうか。

「どこに住むか」に左右されない社会へ
- 2026.08.15
- ビジネスの話
東京は、多くの人にとって、以前ほど住みやすい街ではなくなってきたと感じています。こんなことを言うと怒られるかもしれないですが、いまの東京で無理なく暮らせるのは、しっかり稼げる高所得者か、実家が太く支援が得られる人、あるいはすでに家を持っている人に限られつつあるのが現実ではないでしょうか。
普通に働き、普通に家庭を持ち、普通に暮らしたいだけなのに、その「普通」を維持するためのハードルがあまりにも上がってしまいました。家賃も住宅価格も教育費も高騰の一途をたどっています。少しでも生活にゆとりや広さを求めようとすれば、住まいは都心からどんどん離れ、毎日の通勤時間は長くなるばかりです。それでもなお、「東京という場所を離れてしまえば、大切な機会や情報から取り残されてしまうのではないか」という空気感があります。
確かに、大きな案件を獲得し、最新のトレンドを肌で知り、人と出会う上で、東京が今も極めて重要な拠点であることは揺らぎません。私自身、東京にいたからこそ得られた多くの機会やご縁があり、その恩恵を大いに受けてきました。だからこそ、東京が持つ集積の価値もよく理解しているつもりです。
しかし、だからといって仕事や成長の機会までが、「東京という高コストな街に住み続けられる人」だけのものになってよいとは到底思えません。全国どこに住んでいても、確かな能力と挑戦する意欲さえあれば、価値ある仕事に挑める環境や選択肢があって然るべきです。「東京に出なければ成長できない」「東京に住み続けなければ取り残される」、このような社会構造は、そろそろ変わってよい時期に来ているのではないでしょうか。
日本には、豊かな自然に囲まれ、食事がおいしく、伸びやかな住環境に恵まれた素敵な街がたくさんあります。東京に人や機能を集中させ続けることだけが、この国の成長や発展だとは思いません。むしろ、全国どこにいても自分の力を発揮し、正当な機会を得られる国にしていくことの方こそが、これからの日本にとって重要で、持続可能な豊かさにつながるのではないかと最近よく考えています。
「どこに住むか」によって人生の可能性が狭まらない、そんな選択肢に満ちた社会の実現こそが、これからの私たちが目指すべきところなのかもしれません。

独自の道を歩むことの価値
独立を果たした2008年当時、私は士業向けのコンサルティングを展開している会社様に頼るべきかどうか、正直悩見ました。迷った末に一度だけセミナーの見学に足を運んだのですが、そこで語られていたのは、売上高10億円を誇る歴史ある会計事務所のこれまでの成功事例についてでした。セミナー終了後には、もちろん非常に熱心なお声がけをいただきました(笑)。
しかし結果として、私はすべてを自分たちだけでやる道を選びました。理由はシンプルで、一般的には大成功とされるお話を聞いても、私の中にどうしても違和感が拭えなかったからです。「それは本当に成功なのだろうか?」「自分が心から成し遂げたいことなのか?」「大好きだった監査法人をわざわざ離れてまでやりたかったことなのか?」そんな疑問が次々と湧き上がってきたためです。当時の27歳の私は、今よりも直感と理想で動いていたのかもしれません。
当然、その選択によって軌道に乗るまで時間はかかりました。それでも、クライアントや役職員を何よりも大切にする、高品質なサービスを提供するという原点を常に忘れずに歩んできました。そして、自分たちの力で事務所の独自性や差別化ポイントをしっかりと打ち出すことができたので、今ではあの時の判断に少しの後悔もありません。誰かの成功事例を聞きすぎると、どうしても自分たちのオリジナリティは薄れてしまいます。既存の型にはまり、そこから新しい独創的な発想が生まれなくなってしまうのです。
たしかに世間には「そこそこ成功するため」の効率的な近道やマニュアルはあるのかもしれません。しかし私は、自分たちで悩み、独自で進めることの真の価値というものを信じたいと思います。
経営においては、一見すると非効率に思える「遠回り」こそが、実は目的地への「最短ルート」なのかもしれません。これからも、誰もやっていなそうな面白いことを考えていきたいと思います。
他人の真似ではない、私たちにしか描けない未来を、これからも一歩一歩愚直に形にしてまいります。

「どこで挑戦するか」が未来を変える
小学生の頃、私は勉強があまり得意ではありませんでした。しかし、引っ越しをして別の中学校に入ると、環境が変わったことがきっかけなのか、どんどん成績が上がっていきました。
中学校の半ばで初めて、「あれ、勉強って面白いのかもしれない」と思えたのです。環境が少し変わるだけで、周囲からの見え方はもちろん、自分自身の捉え方や「自分もやればできるんだ」という自己肯定感までガラリと変わってしまう。環境が人に与える影響力というのは、想像以上に大きいのだと知った体験でした。
公認会計士試験に合格し、大手監査法人の東京事務所に入所したときも、大きな環境の変化を実感しました。北海道で試験を乗り越え、「それなりにやれてきた」というささやかな自負を持って上京したものの、周りには私よりも優秀な方ばかり。知識の深さも仕事のスピードも段違いで、毎日のように自分の未熟さを痛感し、何度も落ち込みました。それでも温かく指導し、引き上げてくださった当時の先輩方には、今でも感謝と尊敬の気持ちしかありません。
その後独立し、個人事務所、中小事務所、中堅ファーム、そして現在のRSMへとステップアップしていく中で、少しずつ「自分にもできる」という自己肯定感を持てるようになりました。そして、その自己肯定感こそが新しい挑戦を生み出す原動力となり、結果として次の成果へとつながっていくのだと身をもって実感しています。
もちろん、自分を厳しい環境に置いて揉まれることが人を大きく成長させる側面はあります。しかし一方で、自分の強みを存分に発揮できる環境、自信を持って伸び伸びと挑戦できる環境を選択することも、同じくらい大切です。「どこで戦うか」という土俵の選び方は、人生の可能性や成長の方向を大きく左右します。
だからこそ私たちも、「グローバルミドルマーケットのクライアントにとってファーストチョイスになる」というビジョンを持ち、お客様への価値提供はもちろん、一緒に働くメンバー一人ひとりにとっても、それぞれの力を最大限に発揮し輝ける環境をつくっていきたいと思っています。
誰もが自分の可能性を信じて挑戦できる場所から、私たちはこれからも新しい未来へと歩み続けていきます。

AI時代に求められるプロフェッショナルの価値
- 2026.08.01
- ビジネスの話
最近強く思うのは、人間にしか生み出せない価値、例えば信頼関係、仕事を楽しむ姿勢、家族や仲間を大切にする文化と、自己研鑽をどう両立させていくかが、これからのプロフェッショナルにとって重要になるということです。単に成果を出すだけではなく、どのような関係性の中で価値を生み出していくのか、どのような姿勢で日々の仕事に向き合うのかといった点が、これまで以上に問われる時代になっていくのではないかと感じています。
AIの得意領域は確実に広がっていますが、だからこそ人が価値を発揮できる領域はより鮮明になっていくでしょう。情報処理の速さや正確性、一定のパターン化された業務においては、今後さらにAIの優位性が高まっていくはずです。逆に、AIと競合する能力で勝負しようとすることは、危険だとも感じています。人が無理にAIの土俵に上がるのではなく、人にしか担えない価値を磨いていくことの重要性は、これから一段と高まっていくのではないでしょうか。
抽象的な表現になりますが、相手と信頼を築く力、意図を汲み取る力、チームを前に進める力といった「ソフトスキル」の重要性は、今後ますます高まっていくはずです。加えて、目の前の相手が何を求め、何に悩み、何を期待しているのかを丁寧に感じ取りながら、適切な形で応えていく力も、より一層求められていくように思います。採用においても、学歴や職歴だけで判断するのではなく、決して妥協せずにその本質を見極めたいと考えています。
効率を追い求めるだけでなく、「誰と働くか」「どういう気持ちで仕事をするか」という人間的な側面を大切にしながら、AI時代のプロフェッショナル像を模索していきたい。それこそ「この人と一緒に飯を食いたいか」という、人柄を重視する視点も大切にしたいです。どれだけ能力が高くても、信頼できない相手とは長く良い仕事はできませんし、逆に人としての温かさや誠実さを備えた人とは、困難な局面も前向きに乗り越えていけるものだと思います。だからこそ、能力だけでは測れない人間的な魅力や、一緒に働く意味のようなものを、これからも大切にしていきたいです。
世界中の超優秀な層が様々な工夫をしながら、大幅リストラなどに踏み切っている現状を見ると、やはり「資格」が「信頼」を支える土台になると強く実感します。もちろん資格が全てではありませんが、それでも一定の専門性や覚悟を社会に対して示すものとして、大きな意味を持ち続けるはずです。
人にしか生み出せない価値がますます重要になる時代だからこそ、高い専門性と豊かな人間性を兼ね備えたプロフェッショナルが活躍する我々の業界には、大きな魅力と可能性があると感じています。これからも、難関資格への挑戦を通じて未来を切り拓こうとする人たちを、心から応援していきたいと思います。
