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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

ご相談は、株主総会の開催前に。 – 実際にあった事例 –

株主総会の開催後にいただく登記のご依頼

登記手続きは、株主総会や取締役会の決議等により、何かしらの効力が発生した後に、その事実を登記簿に反映させるために行います。

当事務所に登記のご依頼をいただくときは、大きく分けて株主総会や取締役会の決議等を行う前にご相談をいただくケースと、当該決議後にご相談をいただくケースがあります。

今回は株主総会や取締役会の決議等を司法書士等の専門家に相談せずにご自身行った後に、その登記の申請についてご相談をいただくケースにおける、実際にあった事例についてご紹介します。

登記のご相談は手続きの段階から

決議等のやり直しを比較的簡単に行える内容や会社(株主が社長1名の会社等)であれば、まだ何とか軌道修正(再度すぐに決議をしてもらう等)は可能であることも少なくありませんが、そうでない場合は改めて株主総会の招集手続き等をやり直さなくてはならないこともあります。

登記申請行為のみではなく、株主総会の開催等の手続きの段階から司法書士にご相談をいただくことにより、登記の完了までスムーズに終えることができますので、登記のご相談は手続きの段階からお近くの司法書士へご相談いただくと良いと思います。

実際にあった事例

株主総会の開催等の手続きは自社で行い、当事務所へ登記申請のところからご依頼・ご相談をいただいた中で実際にあった事例です。

役員の任期切れに気付かず役員の選任し忘れ

役員の任期の計算方法が間違っていた、役員に任期があることを知らなかった等により、既に役員の任期が切れてしまっていることがあります。

平成29年6月の定時株主総会で取締役の任期を更新(再任)する決議をしたけれども、実は平成28年6月の定時株主総会が取締役の任期更新(再任)のタイミングであったようなケースです。

このようなケースでは、平成28年6月から平成29年6月までは取締役選任の懈怠をしてしまっている状態です。もし他に任期中の取締役がいて法定の取締役数を満たしているときは、当該取締役は権利義務取締役にも該当しないため、取締役としての任期が満了していて既に取締役ではないのに取締役として業務を行ってしまっていることになっています。

選任懈怠に加えて、平成28年6月から登記も懈怠していることになりますので、100万円以下の過料が発生する可能性も生じています。

役員の任期については、こちらの記事をご参照ください。

≫取締役、監査役の任期の計算方法

選任する役員の数が足りない

取締役会設置会社は、取締役が3名以上必要です。また、取締役の人数を定款で定めているときは、その規定に従う必要があります。

「当会社の取締役は5名以上とする。」と定めている会社は、取締役会の有無に関わらず取締役を5名以上にしなければなりません(定款の規定を満たしていなくても定款を添付しない登記申請においては、会社法上の最低人数を満たしていれば登記は通ってしまいますが)。

取締役会設置会社が改選のタイミングで取締役2名しか選任していないのであれば、もう1名取締役を選任したり取締役会を廃止しない限り、改選前の取締役が権利義務取締役として残ることになります。

決議要件を満たしていない

株主総会で議案を決議するときは、議案の内容に応じて決議要件が定められています。

例えば、定款を変更するには特別決議の要件を満たす必要があるので、普通決議の要件を満たしているだけでは足りません。

特別決議が必要な議案において、普通決議の要件しか満たしていない状態で、登記のご依頼をいただくことがあります。

株主総会の決議要件については、こちらの記事をご参照ください。

≫株主総会とその決議要件

取締役会の決議要件については、こちらの記事をご参照ください。

≫取締役会の決議要件と取締役の過半数の一致

定款の変更事項が足りない

例えば、取締役会を廃止する手続きにおいて、取締役会に関する定款規定を変更(廃止)する旨を株主総会の特別決議を得てはいるものの、株式の譲渡承認機関を取締役会にしたまま変更をし忘れているというようなことがあります。

こうなると、改めて株主総会を開催して、譲渡承認機関にかかる定款の規定を変更するために特別決議を得ていただく必要があります。

債権者保護手続きをしていない

資本金の減少や吸収合併等の組織再編行為において、債権者保護手続きをし忘れているようなケースがあります。

そもそも債権者保護手続きをしていなかったということや、会社の公告方法が電子公告であるため電子公告はしたけれども官報公告をしていなかったということもありました。

債権者保護手続きが必要であるにも関わらず、していないあるいは手続きに瑕疵があるのであれば減資や吸収合併等の効力は生じないため、改めて債権者保護手続きを行わなければなりません。

債権者保護手続きは1.5ヶ月程度かかるため、当初の予定から大きくずれ込むことになってしまいます。

≫資本金の額の減少(減資)手続き
≫吸収合併の手続き
≫いわゆるダブル(二重)公告

大会社に該当するのに会計監査人を選任していない

大会社は会計監査人を置かなければなりません(会社法第328条)。

(大会社における監査役会等の設置義務)
会社法第328条

1 大会社(公開会社でないもの及び委員会設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。
2 公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。

しかし、大会社に該当しているのにも関わらず、株主総会において定款の変更と会計監査人を選任していないケースがあります。

会計監査人の設置については、こちらの記事をご参照ください。

≫大会社への移行と会計監査人の設置

募集株式の払込期日の設定に瑕疵がある

募集株式の発行をするときは、申込者に対して、払込期日または払込期間の初日の前日までに、割り当てる株式の数を通知しなければなりません(会社法第204条3項)。

(募集株式の割当て)
会社法第204条3項

株式会社は、第199条第1項第4号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければならない。

つまり、募集株式の発行の手続きにおいては、株主総会の開催日と払込期日または払込期間の初日を同日とすることができません。

しかし、これを同日として決議してしまっている状態で登記のご依頼をいただくケースがあります。

ただし、申込み+割り当て方式ではなく、出資予定者と総数引受契約を締結するのであれば株主総会の開催日と払込期日または払込期間の初日を同日とすることもできます。

≫募集株式発行(増資)の登記費用

会計限定監査役しかいないのに責任免除規定

(業務監査権限のある)監査役を設定していない会社は、責任免除規定を定款に定めることはできません(会社法第426条1項)。

しかし、監査役がいないあるいは監査役はいるけれどもその監査権限が会計に関するものに限定されている会社の方から、会社法第426条1項の責任免除規定の登記をご依頼いただくことがあります。

責任免除規定については、こちらの記事をご参照ください。

≫取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の登記


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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