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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(一覧)

定款の条文の内容を解説

何回かにわたり、1人会社の基本的な定款の解説をしてきました。

解説の題材としている定款は、日本公証人連合会のホームページに掲載されている

1 小規模な会社(Small-Sized Company)
株式が非公開で、取締役が1名のみの小規模な株式会社の定款記載例であり、定款の内容も簡潔なものを紹介しています。
起業者の方が小規模な会社からスタートしたいと考える場合に、定款ドラフトの作成に当たって、参考にされる一つの定款記載例です。

≫定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)【日本公証人連合会】

を引用しています。

このページでは、各条文解説の一覧と簡単な解説を記載しています。

商号に関する条文

(商号)
第1条 当会社は、小1○○株式会社と称する。

商号は必ず定款に記載しなければなりません(会社法第27条)。

株式会社であれば「株式会社」という文字を商号に含める必要があり、使用できる文字や空けられるスペース等に制限があります。

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目的に関する条文

(目的)
第2条 当会社は、次の事業を行うことを目的とする。
(1) ○○の製造及び販売
(2) ××の輸入及び販売
(3) 前各号に附帯又は関連する一切の事業

目的は必ず定款に記載しなければなりません(会社法第27条)。

目的を定款に記載するときは、許認可が必要な事業を行うケースにおいて特に注意が必要です。

適切な目的が記載されていないと、事業の許認可を申請するときに目的が理由で審査が通らないことがあります。

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本店所在地に関する条文

(本店所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都○○区に置く。

本店の所在地は必ず定款に記載しなければなりません(会社法第27条)。

東京都中央区に置く、さいたま市に置く、長野県松本市に置く、等のように最小行政区画まで記載しておけば問題ありません。

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公告方法に関する条文

(公告方法)
第4条 当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。

公告方法は、「官報」「日刊新聞紙」「電子公告」の中から選択します(会社法第939条1項)。

官報公告を選択し、貸借対照表の公告のみ電子公告とすることも可能です。

定款で公告方法を定めなかったときは、当該株式会社の公告方法は官報となります(会社法第939条4項)。

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発行可能株式総数に関する条文

(発行可能株式総数)
第5条 当会社の発行可能株式総数は、100株とする。

何株まで発行することができるのかを定めた規定です。

非公開会社であれば、発行可能株式総数の数に制限はありません。

設立後に株主総会の決議によって変更することができますが、登録免許税(3万円)がかかります。

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株券に関する条文

(株券の不発行)
第6条 当会社の発行する株式については、株券を発行しない。

新しく設立される株式会社の大半は、株券を発行しない設計にしているのではないでしょうか。

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株式の譲渡制限に関する条文

(株式の譲渡制限)
第7条 当会社の発行する株式の譲渡による取得については、取締役の承認を受けなければならない。ただし、当会社の株主に譲渡する場合には、承認をしたものとみなす。

取締役会を設置しない会社は、株式の譲渡制限規定を設けなければなりません。

承認機関を何にするかは、会社のご事情によって検討する必要があります。

なお、「当会社の承認を要する。」等としておけば取締役会を設置したときや、取締役会設置会社が解散したときに譲渡制限規定を変更する必要がありません。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(株式の譲渡制限編)

基準日に関する条文

(基準日)
第8条 当会社は、毎年3月末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とする。
2 前項のほか、必要があるときは、あらかじめ公告して、一定の日の最終の株主名簿に記載又は記録されている株主又は登録株式質権者をもって、その権利を行使することができる株主又は登録株式質権者とすることができる。

基準日を設けておくと、事業年度末から定時株主総会までの間に株主が変動しても、当該事業年度末日の株主に対して定時株主総会に関する手続きをすれば済むようになります。

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株主の住所等の届出に関する条文

(株主の住所等の届出)
第9条 当会社の株主及び登録株式質権者又はそれらの法定代理人は、当会社所定の書式により、住所、氏名及び印鑑を当会社に届け出なければならない。
2 前項の届出事項を変更したときも、同様とする。

株主名簿を整備するために、株主の住所、氏名(名称)を届け出てもらう規定です。

印鑑を届け出てもらうことにより、今後株主から何か届出があった際に当該届出に押印されている印影を照合することができるようになります。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(株主の住所等の届出編)

招集時期に関する条文

(招集時期)
第10条 当会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後3か月以内に招集し、臨時株主総会は、必要がある場合に招集する。

定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければなりません(会社法第296条1項)。

法人税の申告・納付との関係で、この時期を毎事業年度の終了後「3か月以内」としている規定です。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(招集時期編)

召集権者に関する条文

(招集権者)
第11条 株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役が招集する。

株主総会の招集を誰が行うかの規定です。

取締役が1名の株式会社の定款例のため招集権者は取締役となっていますが、取締役が複数いる株式会社の場合は代表取締役となることが多いかと思います。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(招集権者編)

招集通知に関する条文

(招集通知)
第12条 株主総会の招集通知は、当該株主総会で議決権を行使することができる株主に対し、会日の5日前までに発する。

招集通知の発送から開催までの期間に関する条文です。

取締役会非設置会社は、上記期間につき1週間より短い期間を定款に定めることができます(会社法第299条1項)。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(招集通知編)

株主総会の議長に関する条文

(株主総会の議長)
第13条 株主総会の議長は、取締役がこれに当たる。
2 取締役に事故があるときは、当該株主総会で議長を選出する。

株主総会の議長を誰が行うかの規定です。

取締役が1名の株式会社の定款例のため議長は取締役という記載になっていますが、取締役が複数いる株式会社の場合は議長を代表取締役とすることが多いかと思います。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(株主総会の議長編)

株主総会の決議に関する条文

(株主総会の決議)
第14条 株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって行う。

株主総会の普通決議に関する決議要件を規定しています。

上記定款の規定は会社法上の定める定足数を排除しており、株主総会の普通決議による可決を成立をしやすくしていることになります。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(株主総会の決議編)

議事録に関する条文

(議事録)
第15条 株主総会の議事については、開催の日時及び場所、出席した役員並びに議事の経過の要領及びその結果その他法務省令で定める事項を記載又は記録した議事録を作成し、議長及び出席した取締役がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名をし、株主総会の日から10年間本店に備え置く。

株主総会議事録の記載事項と、株主総会への押印義務等について規定しています。

法令上、株主総会議事録への押印義務はありませんが、定款で議長及び出席した取締役へ押印義務を課すことにより議事録の真正を担保していることになります。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(株主総会議事録編)

取締役の員数に関する条文

(取締役の員数)
第16条 当会社の取締役は、1名とする。

取締役1名の株式会社を想定している定款であるため、取締役の員数を1名としていますが、最初から取締役が複数いる場合や、今後取締役を増やすことを考えると、取締役の員数は「1名以上」としておいてもいいかもしれません。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(取締役の員数編)

取締役の資格に関する条文

(取締役の資格)
第17条 取締役は、当会社の株主の中から選任する。ただし、必要があるときは、株主以外の者から選任することを妨げない。

取締役を原則として株主の中から選びましょうという規定です。

何か理由があれば、株主以外の者を取締役として選任することができます。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(取締役の資格編)

取締役の選任に関する条文

(取締役の選任)
第18条 取締役は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数の決議によって選任する。

取締役の選任決議に関する議案につき、定足数を軽減している規定です。

この定款の規定が無い場合は、定足数として、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席する必要があります(会社法第309条1項)。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(取締役の選任編)

取締役の任期に関する条文

(取締役の任期)
第19条 取締役の任期は、選任後5年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法第332条1項)。

非公開会社においては、定款に記載することによりこの任期を2年から10年まで伸長することができます。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(取締役の任期編)

事業年度に関する条文

(事業年度)
第20条 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月末日までの年1期とする。

株式会社は事業年度を決めなければなりません。

事業年度の決め方には、いくつかポイントがあります。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(事業年度編)

剰余金の配当に関する条文

(剰余金の配当)
第21条 剰余金の配当は、毎事業年度末日現在の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対して行う。

この規定は、剰余金の配当に関する基準日を定めています。

基準日を定めておくことにより、事業年度末後、定時株主総会の開催前までに株主が変わったとして、事業年度末日の株主にに対して配当を行えばよいことになります。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(剰余金の配当編)

配当の除斥期間に関する条文

(配当の除斥期間)
第22条 剰余金の配当がその支払の提供の日から3年を経過しても受領されないときは、当会社は、その支払義務を免れるものとする。

いつまでも剰余金の配当を受け取らない(受け取れない)株主がいると、その支払義務を負い続けることは会社の負担です。

その期間を、法律上は10年であるところ、定款に規定することにより3年に短縮しています。

≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(配当の除斥期間編)

設立時の出資財産と資本金に関する条文

(設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額)
第23条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金100万円とする。
2 当会社の成立後の資本金の額は、金100万円とする。

設立に際して出資される財産と資本金の額について記載しています。

出資された財産の額の2分の1まで、資本金ではなく資本準備金に計上することが可能です。

金銭出資だけではなく現物出資を行うこともでき、現物出資をする場合は出資する財産とその価額についても記載します。

本条以降は、全てこちらのページにて解説しています。
≫司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(附則編)

最初の事業年度に関する条文

(最初の事業年度)
第24条 当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から平成○○年3月末日までとする。

第20条で定めた事業年度につき、設立後の最初に訪れる事業年度を記載します。

平成で記載してもいいですし、西暦で記載しても問題ありません。来年4月に平成は終わるため、西暦で記載する例も少なくありません。

設立時取締役に関する条文

(設立時取締役)
第25条 当会社の設立時取締役は、次のとおりである。
  設立時取締役  ○○○○

会社設立時当初の取締役を記載します。

取締役が複数いて、そのうちの1名が代表取締役となるようなケースでは、設立時取締役及び設立時代表取締役も定款で定めておくと、設立登記に添付する書類を少なくすることができたりします。

発起人の氏名等に関する条文

(発起人の氏名ほか)
第26条 発起人の氏名、住所及び設立に際して割当てを受ける株式数並びに株式と引換えに払い込む金銭の額は、次のとおりである。
  東京都○○区○町○丁目○番○号
  発起人 ○○○○  10株、金100万円

株式会社を設立するときは、発起人が1名以上必要で、原則として発起人は1人につき1円以上を出資しなければなりません。

発起人となる(法)人の印鑑証明書や登記簿謄本に記載されているとおりに氏名(名称)と住所を記載します。

法令の準拠に関する条文

(法令の準拠)
第27条 この定款に規定のない事項は、全て会社法その他の法令に従う。

法律は守りましょう。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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