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藤井 淳平 Jumpei Fujii

この記事の著者

藤井 淳平 Jumpei Fujii

ディレクター  / 税理士

【税務Q&A​】受取配当金の益金不算入制度と​関連法人株式等に係る実務判断​

2025年6月16日

質問

A社は、B社の発行済株式の25%を1年以上継続して保有しています。C社は、B社株式の10%を令和6年12月1日に取得しました。

なお、A社の発行済株式はX氏(X家)が100%保有しており、C社の発行済株式はY氏(X氏の子、X家)が100%保有していることから、A社及びC社は、いずれもX家が発行済株式を100%保有する法人に該当し、「一の者」による完全支配関係(法人税法第2条第12号の7六)に該当します。

このような状況のもと、A社は令和7年3月にB社から配当金の支払いを受けました(対象期間:令和6年7月1日~12月31日)。この受取配当金について、完全支配関係にあるC社と合算した保有割合が35%となることから、「関連法人株式等に係る配当金」に該当し、支払利息(負債利子控除額)を除いた部分について全額益金不算入として取り扱うことが可能でしょうか。

<補足前提>

B社は12月決算で、年2回配当を実施しており、各配当の計算期間は①1月~6月、②7月~12月です。

回答

A社は、B社株式を単独では25%しか保有しておらず、またC社との合算による持株比率(35%)についても、配当対象期間全体にわたる継続保有要件を満たしていないことから、当該株式は「関連法人株式等」には該当しません。したがって、A社が受け取った配当金は「その他株式等」に該当し、配当金額の50%を益金不算入とする取扱いが妥当と考えられます。

受取配当金の益金不算入制度の概要

まず、本件の論点である「受取配当金の益金不算入制度」について、その全体像を整理してみたいと思います。

制度の趣旨

法人が他の法人から受け取る配当金は、原則として益金に算入され、法人税の課税対象となります。

しかし、その配当の原資となる利益については、出資先法人においてすでに法人税が課されているため、同一の利益に対して二重に課税されることになります。

このような経済的な二重課税を防止するため、一定の要件を満たす配当金については、その全部又は一部を益金に算入しない「益金不算入制度」が設けられています。

制度の仕組み及び要件

受取配当金の益金不算入割合は、持株比率や保有期間等に応じて異なります。主な類型は以下のとおりです。

完全子法人株式等

  • 持株割合:100%
  • 益金不算入額:配当金額×100%
  • 要件:配当計算期間全体を通じて継続保有していること

関連法人株式等

  • 持株割合:1/3超〜100%未満
  • 益金不算入額:配当金額×100%-負債利子控除額*
  • 要件:配当計算期間全体を通じて継続保有していること

*負債利子控除額:配当金額×4%と、支払利子×10%のいずれか低い金額

その他株式等

  • 持株割合:5%超〜1/3以下
  • 益金不算入額:配当金額×50%
  • 要件:配当基準日時点で保有していること

非支配目的株式等

  • 持株割合:5%以下
  • 益金不算入額:配当金額×20%
  • 要件:配当基準日時点で保有していること

なお、本制度の適用を受けるためには、確定申告書に益金不算入額及びその計算明細を記載した書類を添付する必要があります。

具体例

益金不算入額の算定イメージとして、「完全子法人株式等」の場合と「関連法人株式等」の場合を例に取り、以下に示します。

例1)完全子法人株式等の場合

甲社は、子会社である乙社の株式を100%保有しています。このような関係は、「完全子法人株式等」に該当します。この場合、甲社が乙社から1億円の配当を受け取ったとしても、その配当金は全額が益金不算入となり、法人税の課税対象から除外されます。また、「完全子法人株式等」に該当するため、借入金の支払利子との調整(負債利子控除)は不要となります。

例2)関連法人株式等の場合

甲社が乙社の株式を40%保有している場合、この関係は「関連法人株式等」に該当します。甲社が乙社から1億円の配当を受け取った際、その配当金は原則として全額が益金不算入の対象となりますが、株式取得に関連する負債利子がある場合には、一定の調整が必要です。

仮に、甲社が当期に1,000万円の関連借入金に対する支払利子を計上していた場合、益金不算入額は、以下のいずれか低い金額を控除した金額となります。

  • 配当金額の4%(1億円×4%=400万円)
  • 支払利子の10%(1,000万円×10%=100万円)

このケースでは、より低い金額である100万円が負債利子控除額として配当金から差し引かれるため、甲社が受け取った1億円のうち、9,900万円が益金不算入額となります。

質問に対する判断

本件において、A社はB社の発行済株式の25%を1年以上継続して保有しており、単独では「その他株式等」に該当します。

一方、A社及びC社は、いずれもX家が100%保有する法人であることから、法人税法上の「完全支配関係」に該当し、両社の持株割合を合算して「関連法人株式等」として取り扱える可能性もあります。

しかしながら、法人税法施行令第22条においては、「関連法人株式等」に該当するためには、合算対象となる株式保有割合が、配当の基準日等に係る期間全体を通じて継続して保有されていることが要件とされています。

今回の配当の対象期間は令和6年7月1日から12月31日ですが、C社がB社株式を取得したのは令和6年12月1日であり、期間全体を通じた継続保有の要件を満たしていません。

したがって、本件ではA社とC社の合算保有割合(35%)に基づき「関連法人株式等」とすることはできず、A社単独の保有割合(25%)に基づいて判断する必要があります。

このため、A社がB社から受け取った配当金は、「その他株式等に係る配当金」として取り扱われ、配当金額の50%が益金不算入の対象となると考えられます。

なお、「関連法人株式等」に該当するか否かの判断においては、基準日時点の持株比率のみならず、株式の継続保有状況や取得時期、支配関係の実態なども含めて、総合的に検討する必要があります。

特に、同一の支配主体のもとに複数の法人が存在するようなケースでは、形式的な要件の充足だけで判断せず、その背景にある実態との整合性を確認することが、制度の誤適用を防ぐうえでも重要です。

補足:令和5年10月以降の受取配当金に係る源泉税徴収不要制度(完全子法人株式等/関連法人株式等)

令和5年10月1日以後に支払を受ける一定の配当等については、源泉徴収が不要となる制度が創設されました。対象となるのは、以下のいずれかに該当する場合です。

  • 完全子法人株式等に係る配当等:100%子会社からの配当
  • 関連法人株式等に係る配当等:基準日等において持株割合が1/3超の場合の配当

従来、内国法人が他の法人から配当金を受け取る際には、配当の支払法人が所得税を源泉徴収し、受取法人が法人税の確定申告において税額控除を行う必要がありました。しかし本制度の創設により、これらの配当については当初から所得税が課されない取扱いとなっています。

その結果、別表六(一)〔所得税額の控除に関する明細書〕への記載は不要となりますが、益金不算入の適用を受けるためには、引き続き別表八(一)への記載が必要です。

本制度は、経済的な二重課税の排除という趣旨に加え、申告・税額控除手続の簡素化といった実務上のメリットもあります。企業グループ内で配当を行う際には、受取配当に対する源泉徴収の要否についても、事前に正確に確認しておくことが重要です。

国内税務Q&A_受取配当金の益金不算入制度と関連法人株式等に係る実務判断

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