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山本 翔大 Shodai Yamamoto

この記事の著者

山本 翔大 Shodai Yamamoto

アシスタントマネージャー

中堅企業がデータドリブン経営を実現する方法~Microsoft Power BIの最大活用化~

2025年9月18日

はじめに:Power BIとは何か?

Power BIパワービーアイ)は、Microsoft社が提供するBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールで、複数のデータを連携・収集・分析・加工を行い、グラフやレポート形式の視覚的な情報に出力し、企業内に眠るデータを価値ある形に変換し、経営における情報をより活発にするプラットフォームです。

Power BIの実力を示す証拠として、世界的な経済誌 Fortuneが選出する大手企業ランキング上位500社のうち、95%以上がこのツールを導入しているという事実があります1)。この高い採用率は、かつて大企業だけが手にできた高度なデータ分析環境が、今や中堅企業でも手の届く範囲で活用できる時代になったことを示しています。さらに、業界の専門調査会社ガートナー社が提供する、Magic Quadrantによる評価でも、Power BIはLeader(市場をリードする位置づけ)を獲得しており、国際的な企業が求める厳格なセキュリティ要件やガバナンス基準、そして処理性能の面で非常に高い水準を達成していることが認められています2)

Power BIのシステム構成は、データの加工・分析を行う「Power BI Desktop」、作成したレポートをオンラインで共有する「Power BI Service」、そしてスマートデバイスからアクセスする「Power BI Mobile」などの複数のプロダクトによって構成されています。特に中堅企業にとっては、既にご利用中のMicrosoft 365環境とスムーズに連携できるため、大規模なシステム投資をせずに高度なデータ分析環境を構築できる点が大きな魅力となっています。

「感覚経営」から脱却できない日本企業の実態

最新の中小企業白書が明らかにした課題は、日本の中堅・中小企業におけるデータ活用の遅れという深刻な現実です3)。この問題の本質は単にITツールの導入が遅れているということではなく、企業経営において「データを体系的に収集し、整理・分析して、具体的な意思決定に反映する」という一連の流れが根付いていないことにあります。

この状況は様々な経営場面で表面化しています。同白書の調査によれば、自社製品・サービスの価格設定において「市場分析と自社の差別化戦略に基づいて決定している」と回答した企業は全体のわずか12.9%にとどまります3)。多くの企業では、競合の動向に合わせるか、経営者の直感で価格を設定するにとどまっているのが実情であり、データ分析を用いた経営は中堅企業・中小企業ともに少数であることが判明しています。特に憂慮すべきは、原材料や人件費の高騰という厳しい経営環境にあっても、自社の正確なコスト構造を把握し、それを取引先との価格交渉に活かせていない企業が大半を占める点です。背景には、原価データの収集や分析の仕組みが整っていないため、「勘や経験」ではなく「具体的な数値」に基づいた説得力のある交渉ができないという課題があります。

このようなデータに基づく意思決定の文化を定着させるためには、日常業務に直結した形で、小さくても成功体験を積み重ねていくことが重要です。具体的な内容は「管理会計×データ分析で実現する、見える経営と意思決定のDX」の記事でも記載していますが、経営層自らが重要な経営指標を数字で語り、データに基づいて判断する姿勢を示すことで、組織全体のデータ活用意識も高まっていきます。このような変革を支援するツールとして、導入の敷居が低く、すぐに効果を実感できるPower BIは、中堅企業のデータ活用促進に大きく貢献する可能性を持っています。こちらに関しては「管理会計・経営レポートDX支援」のサービスページをご覧ください。

Power BIを活用する利点

Power BIは、前述したような中堅・中小企業特有の課題解決に最適化された機能を多数備えています。継続的な進化を経て、現在のPower BIは中堅企業のニーズに応える完成度の高いプラットフォームへと成長しました。

業務効率の飛躍的な向上

Power BIに搭載されたデータ処理エンジンを活用すれば、これまで担当者が何時間もかけて行っていたデータ収集・加工作業を自動化でき、手作業による工数・入力ミスが削減できます。初期設定さえ完了すれば、その後はPower BIが自動的に月次の経営報告資料や予算実績管理表、人員配置状況など、様々なレポートを瞬時に作成できます。これにより、スタッフはデータ入力や集計といった単純作業から解放され、データの分析や戦略立案といった付加価値の高い業務に集中できるようになります。「Power BI デモ」のページで弊社が提供しているサービスのデモを確認できます。

経営情報の一元管理とリアルタイム把握

Power BIは様々なシステムと連携が可能であり、Microsoftのサービス・豊富な外部サービス(例 : Salesforce, など)・社内のシステムに直接接続し、それらの情報を統合的に可視化することができます。経営者や管理職は、パソコンやモバイル端末から、いつでもどこでも最新の経営指標や財務状況、人事情報などを対話的に確認できます。これにより、現場の最新状況を正確に把握した上で、迅速かつ的確な意思決定を行うことが可能になります。

データの信頼性向上とガバナンス強化

手作業によるデータ処理を排除することで、入力ミスや計算エラーを大幅に削減し、常に正確で信頼性の高い情報を提供します。また、「どのデータをソースとして」「どのような処理手順で」レポートが作成されたかという過程が明確に記録されるため、情報の透明性が高まります。これは監査対応や内部統制の強化にも大きく貢献する要素です。

組織全体のデータ活用文化醸成

Power BIで作成したレポートは、クラウド環境で簡単に共有でき、アクセス権限の設定も柔軟に行えます。経営層から現場担当者まで、組織内の様々な立場の人々が同じデータを見ながら議論できるようになることで、部門間の壁を越えた協働が促進され、組織全体でデータを活用する文化が根付いていきます。

RSM汐留パートナーズが選ばれる理由

Power BIは確かに強力なツールですが、その真価を発揮するためには「何をどのように可視化するか」という業務への深い理解が不可欠です。多くのIT企業がツール導入そのものを目的としている中、私たちの提供価値は全く異なる視点から生まれています。当社は会計税務、人事労務、法務のプロフェッショナル集団として、テクノロジーを活用しながらクライアントの皆様の本質的な経営課題を解決します。

当社の最大の特長は、クライアントの皆様自身もまだ気づいていない潜在的な課題や事業機会を、データ分析を通じて見出す「発見力」にあります。

例えば:

  • 会計・税務分野では、単に月次決算を早く完了させるだけでなく、特定の勘定科目における異常値の自動検出や、資金繰り悪化を予測する先行指標など、税務リスクや経営危機に直結する重要な情報を視覚化します。
  • 人事労務分野では、勤怠データと給与計算の突合せにとどまらず、労働法令に準拠した適切な労働時間管理や、組織別・職種別の生産性指標など、コンプライアンスと人材戦略の両立を支援する情報基盤を構築します。
  • 法務分野では、単純な契約期限管理を超えて、組織全体の契約情報を統合し「契約カテゴリ別の件数・金額分布」「事業部ごとの契約管理状況」「取引先別の契約金額ランキング」などを可視化し、戦略的な契約管理を実現します。

RSM汐留パートナーズの支援は、単なるツール導入で終わりません。初期の課題ヒアリングから、経営判断に直結する情報基盤の完成まで、構想から定着までの全プロセスを一貫してサポートします。私たちの最終目標は、クライアントの皆様がデータに基づいた的確な意思決定を迅速に行い、持続的な成長を実現できる「データ活用型の組織文化」を定着させることです。専門的知見とテクノロジーを融合させた当社ならではの、一歩先を行くデータ活用支援を提供します。

参考資料:

1)Marking 10 Years of Power BI: Celebrate with the Global Community! | Microsoft Power BI ブログ | Microsoft Power BI

2)Microsoft named a Leader in the 2023 Gartner® Magic Quadrant™ for Analytics and BI Platforms | Microsoft Power BI ブログ | Microsoft Power BI

3)2025年版「中小企業白書」全文 | 中小企業庁

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