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川瀬 博之 Hiroyuki Kawase

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川瀬 博之 Hiroyuki Kawase

シニアマネージャー  / 公認会計士 , 税理士

令和時代の養老保険を活用した節税対策とは?【2019年税制改正対応】

2020年1月7日

令和元年の税制改正により生命保険を活用した法人税の節税に遂にメスが入りました。新ルールでは定期保険の支払保険料の取扱いについて最高解約返戻率により損金算入割合を決定するという統一的なルールとなりました。このルールは従来のように保険期間や保障額の推移(逓増定期保険)などの商品構成から損金算入割合を決定するものではないため、保険会社の商品開発力をもってしても今後この新ルールを掻い潜る保険商品の開発は困難と思われます。

今まで税務当局が通達を発遣するたびに保険会社がその通達で制限できない新しい保険商品を発売するといったイタチごっこがようやく終焉したといえます。全損での定期保険や2分の1損金での逓増定期保険は税制改正後には登場しないと思われます。同族会社で決算対策などの節税手法として生命保険は王道であったため、同族会社にとっては手厳しい内容です。

税制改正後に新たに注目されているのが、養老保険のハーフタックス(福利厚生)プランになります。養老保険は非常に貯蓄性の高い商品になるため、原則法人加入の場合は保険料を全額資産計上することになりますが従業員の福利厚生目的としての加入であれば保険料の2分の1を福利厚生費として損金算入することが認めれます。ドル建ての養老保険商品では満期時返戻率が100%を大幅に超えるにもかかわらず、保険料の2分の1が損金になるため節税効果は従来の定期保険と同等レベル、それ以上といえるかと思います。

ただし、2分の1損金とするためには福利厚生要件を満たす必要があります。要件は大きく2つあります。

1つ目は契約形態で満期保険金受取人を法人、死亡保険金受取人を被保険者の遺族に設定することです。

2つ目の要件としては、被保険者として従業員を普遍的に加入させるということです。福利厚生の目的のため特定の役員や従業員のみを加入させることは福利厚生とは認められません。一般的な法人税法上の福利厚生費の基準(例えば健康診断の費用負担や慶弔見舞金)と同様の考え方になります。そのため特定の役員や従業員のみが加入すると、保険料の2分の1相当額が現物給与の扱いになってしまいます。

そのため従業員の退職金制度として導入する目的ではなく、節税を主たる目的とする場合には大多数の従業員の同意が必要なことや従業員の入退社の都度手続きが必要なることなど現実的に難しいことが多いかと思われます。

税制改正後の保険会社や保険代理店の動きを見ると利益が出ている少人数の同族会社をターゲットにして提案するケースが多い印象です。少人数であれば比較的容易にこの福利厚生要件を満たすことができるからです。

また、提案手法について子会社を設立して本体法人の役員等の幹部を転籍させ少人数の組織をつくり、子会社でこのハーフタックスプランに加入するというスキームも出てきております。子会社で明確に事業実態を作ることが前提にはなりますが、消費税の免税点の利用や中小法人の特例としての法人税の軽減税率、交際費の枠の活用なども合わせることで節税メリットは倍増します。

特にIT企業であればグループ会社間取引の実態を成立させやすく、同スキームを利用しやすいかと思われます。グループ会社間取引について税務上寄付金の該当の有無、満期時や解約時の出口対策など検討すべきことは多いですが、上場目指していない利益の出ているIT企業は検討の余地が大きいと思われ、税制改正後に一種の抜け道としてドル養老保険が活用されるケースが増えている印象です。

弊社グループでも保険代理店業を行っているため、税制改正後に話題になっている養老保険ハーフタックスプランについては研究しております。ご興味ございましたらお問い合わせいただければと思います。

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