「NetSuite(ネットスイート)」導入における留意点 ~外資系企業の日本子会社として~
2023年9月29日
はじめに
会計ソフトウェア「NetSuite(ネットスイート)」を外資系企業の日本子会社が導入する際には、いくつかの留意点があります。本国の親会社がNetSuiteを用いているので、日本の子会社においても導入が必須となるというケースも多いのです。その際には、言語の問題や日本の消費税の複雑な処理など、日本での導入・運営において留意すべき点も少なくありません。
本日はそれら留意点の内容についてご紹介します。
NetSuiteとは?
NetSuite(ネットスイート)は、ビジネスのあらゆる側面を包括的に管理するための一元化された統合型ビジネスソフトウェアです。クラウドベースのプラットフォームとして提供され、財務、会計、顧客管理、在庫管理、購買、生産、人事など、多岐にわたる業務プロセスを統合的にサポートします。
NetSuiteはOracle Corporationによって買収され、Oracleのクラウド事業部門に統合されたという経緯があります。日本市場においては、NetSuiteを含むOracleの製品とサービスを日本オラクル株式会社が提供しており、統合型会計ソフトウェア(EPR)の導入とサポートをしています。
弊社RSM汐留パートナーズはRSMの日本におけるメンバーファームであり、日本におけるインバウンド案件、すなわち欧米に本社がある外資系企業の日本子会社の支援を行っています。そして、NetSuiteを導入するという意思決定はすでに本国で行われているケースもあり、弊社は日本におけるその導入・運用のコンサルティング業務を行っております。
NetSuiteの特徴
NetSuiteは、企業がビジネスを効率的に運営し、成長を促進するために必要なツールや機能を提供します。
以下は、NetSuiteの5つの主要な特徴です。
・統合性とリアルタイムデータ
異なる部門やプロセス間でデータを一元化し、リアルタイムで情報を共有できる環境を提供
⇒意思決定の迅速化、データの正確性向上
・カスタマイズと拡張性
企業の固有の要件に合わせてカスタマイズでき、新たな機能やモジュールを容易に追加可能
⇒成長に対応できる柔軟性
・クラウドベース
クラウドベースのため、インフラストラクチャの管理やセキュリティの向上に貢献、リモートアクセスを可能に
・セキュリティとコンプライアンス
データセキュリティに高い基準を設け、規制要件に準拠するためのツールを提供
⇒データの機密性と法的コンプライアンスの確保
・スケーラビリティ
企業の成長に合わせてスケールアップでき、大規模な組織にも対応可能
NetSuite導入における留意点
外資系企業の日本子会社が業務効率化と財務管理の向上を目指すなら、クラウドベースの統合型会計ソフトウェア「NetSuite」が有力な選択肢です。しかし、その導入には注意すべきポイントがあります。
以下、そのポイントを8つ挙げます。
(1)ビジネスプロセスの理解
NetSuiteは業務全体を包括的にサポートするため、導入前にビジネスプロセスを詳細に理解することが不可欠です。
どの部門がどの機能を利用し、どのデータが必要かを明確に把握する必要があります。
(2)カスタマイズの必要性
NetSuiteはカスタマイズ可能なプラットフォームですが、必要なカスタマイズが導入時に実行されるかどうか確認する必要があります。個々のビジネス要件に合わせた調整が必要な場合、専門家の支援を検討します。特に日本においては消費税関連の設定が複雑になることから、カスタマイズが必要かの検討が重要です。
(3)トレーニングとサポート
システムの効果的な利用を保証するために、NetSuiteのトレーニングを受け、サポート体制を整えることが重要です。スタッフがシステムを活用できるよう支援が必要です。トレーニングとサポートは、英語に関連する部分の負荷についても検討する必要があります。
(4)セキュリティとコンプライアンス
NetSuiteには貴重なビジネスデータが格納されます。そのため、セキュリティ対策と規制要件を厳密に遵守することが不可欠です。データの保護と法的コンプライアンスの確認も重要となります。
(5)システムのスケーラビリティ
将来の成長に備えて、NetSuiteのスケーラビリティを検討する必要があります。ビジネスが拡大するにつれて、システムもスムーズに対応できるようにすべきです。
(6)コストとROIの評価
NetSuiteの導入には初期コストやランニングコストがかかります。導入前にこれらのコストと将来的なリターンを評価し、投資の妥当性を確認する必要があります。
(7)プロジェクトマネジメント
NetSuiteの導入プロジェクトは計画的に進行させる必要があります。プロジェクトマネージャーを指名し、タイムラインと目標を明確にすることが重要です。
(8)データ移行とテスト
既存のデータを新しいシステムに移行する段階で、エラーを最小限に抑えるためのテストプロセスを確立する必要があります。データの完全性を確保することが重要です。
日本子会社がNetSuiteを導入・運用する上での具体的な負荷
日本の会計ソフトやEPRの導入と比較して、外資系企業の日本子会社がNetSuiteを導入するには一定の負荷や課題があります。
以下で、その負荷や課題を4点取り上げます。
・言語とカルチャーの適応
NetSuiteは英語ベースのソフトウェアであるため、日本子会社がこれを導入する場合、日本語表示ができるとしても一定の習熟が必要になります。また、システムへの文化的適応も重要です。日本の業務慣行やビジネス文化に合わせてプロセスを修正していく必要があります。
・日本特有の処理と規制要件
日本の税金や会計規則は複雑で、NetSuiteに合わせた設定と処理が必要です。例えば、日本の消費税の設定やその後の集計については負荷がかかることが予想されます。また、日本の給与計算は複雑であり、社会保険や厚生年金の計算、源泉所得税の控除、給与明細書の発行などについて、日本固有のソフトウェアよりも小回りが利かないケースもあります。
・トレーニングと教育
NetSuiteを効果的に活用するために、スタッフにトレーニングを提供する必要があります。日本ではNetSuite の操作に習熟している従業員は少ないため、このトレーニングには時間とコストがかかります。
・データ移行
既存のデータをNetSuiteに移行する際、データの品質を維持し、整合性を保つことが課題です。データ移行の際にエラーや不整合が発生しないように注意が必要です。また、顧客データ、商品情報、在庫データなどのマスターデータを正確に管理するためのプロセスを確立する必要があります。
おわりに
NetSuiteは効率的なクラウド型の統合ソフトウェア(ERP)であり、導入によりビジネスの成長と競争力向上に多くの貢献がなされるでしょう。導入プロセスを適切に設計・管理し、業務プロセス自体を見直すことが成功の鍵になります。