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長谷川 祐哉 Yuya Hasegawa

この記事の著者

長谷川 祐哉 Yuya Hasegawa

パートナー  / 税理士

固定資産管理の対象とメリット~固定資産台帳と実際の資産と会計システム間の不一致を防止する為の具体的な管理の流れ~

2023年10月2日

はじめに

固定資産管理のメリットや実際の流れを、今回のコラムではご紹介します。実務では、固定資産管理専用のソフトを使用して固定資産管理されている事業者が多いですが、Excelファイルなどを使用して手動で管理されている場合もあります。

Excelで手計算を行っている場合は、固定資産管理において重要になる償却計算が複雑な為、人為的ミスの発生可能性が高くなります。一方で、固定資産管理の専用ソフトを使用する場合は、より正確な償却計算が可能ですが、ソフトで作成された固定資産台帳と会計帳簿の数値の不整合がよく見受けられます。これらの問題に対処するためにも、固定資産管理のメリットと流れを押さえていきます。

固定資産とは?

会計上、固定資産は「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つに分類されます。

「有形固定資産」とは、形のある資産です。
例:建物、土地、機械設備、什器、パソコン、社用車

一方で、形のない資産は「無形固定資産」に分類されます。
例:ソフトウェア(自社利用・販売目的含む)、営業権、特許権

それ以外の分類として「投資その他の資産」があります。
例:投資有価証券、長期貸付金、関係会社株式、長期前払費用、繰延税金資産

主な固定資産管理の対象は有形固定資産と無形固定資産です。

固定資産管理のメリット

固定資産管理のメリットを4つ紹介します。

i) 適正な会計管理の達成

土地以外の有形固定資産はほぼ償却計算されます。多くの場合、固定資産に一時に多額の投資(購入)をしたとしても、投資の効果をその会計期間の売上のみに期待しているわけではありません。会計上、投資額を利用期間で按分して費用化して初めて会社の売上と費用(減価償却費)を期間対応させることができます。

また、多額の固定資産を一括で費用化出来てしまうと利益圧縮が可能となり、適切な納税も担保されません。したがって、税務上も、適切な期間での費用按分による正確な納税額の算定が求められます。

ii) 適正な固定資産税の算定

建物や土地に固定資産税が課されます。一方で、機械や装置などの固定資産には償却資産税が課されます。以前に購入して保有し続けている一方で不使用である資産の償却資産税を、そのまま払い続けているケースがあります。この場合、不使用の資産を把握・処分することで納税額を適正化できます。

iii) 経費の削減

近年、ソフトウェア等のサービスを一度契約して、その後自動更新し続けているというケースが増えています。サブスクのような買い切りでないソフトウェアを一時期使用し、その後未使用になっているなどして似たようなサービスを重複して契約している事例が多く見受けられます。こうした不要な支払いをしないためにも、契約などの整理がおすすめです。

iv) 滅失の回避

固定資産の滅失・盗難にあっても気づけない場合があります。特に見えづらいのは、償却が終わった資産などです。思わぬ事故を防ぐためにも、適切な頻度で管理を行う必要があります。

固定資産管理の一連の流れ

ここからは、固定資産管理の一般的な流れを5つに分けてご紹介します。

(1)新規取得した固定資産の登録

会計処理や実際の資産の確認で必要となる以下の情報を、稟議書や請求書に基づき固定資産台帳システムに登録。※システム不使用の場合はExcelに記載

  • 資産名
  • 資産コード
  • 取得年月日
  • 事業供用年月日
  • 設置場所
  • 管理部門
  • 取得価額
  • 数量
  • 償却方法
  • 耐用年数

また、事業共用年月日と取得価額に基づき、会計システムにも取得の仕訳を入力。

(2)ラベル貼付

該当の固定資産を識別するため、固定資産台帳の資産コードが記載されたラベルを現物に貼付。

(3)除却・売却の登録

除却があった場合、稟議書などに基づき固定資産台帳システムに除却年月日を登録。除却までの償却計算を確認、除却に要した費用を加味し、会計上の除却損益(売却損益)を算定。会計システムにも仕訳を起票。起票の都度登録、または決算整理仕訳として登録。

(4)固定資産実査(棚卸)の実施

通常年に1〜2回、固定資産台帳と実際の資産の状態を照合。

–照合のポイント–

  • 現場の判断で不要になった資産が勝手に処分されていないか
  • 把握していない新しい備品が購入されていないか
  • 遊休資産はないか
  • 壊れているなど稼働できない資産はないか

固定資産台帳と実際の資産の状態に違いがないか調査の上、固定資産台帳システムに登録。
例:勝手に処分されていた資産などがあれば除却。

固定資産台帳と実際の資産が整合するように処理。

(5)減価償却計算の実施

固定資産台帳システム上算出されている(またはExcelで算定した)減価償却費を会計システムにも起票し、双方で最終的な残高が一致していることを確認。

固定資産台帳と会計システムで減価償却費が不一致の場合、各資料を確認し不一致の要因を把握。
例:固定資産の除却を会計システムにだけ起票して、固定資産台帳に反映し忘れている場合

おわりに

今回は、固定資産管理のメリットと一連の流れご紹介しました。固定資産の重要度も事業者によって異なります。多額の固定資産を保有している場合や出入りが激しい場合は、徹底した固定資産管理で無駄が排除できるケースがあります。本業に係わる管理と違い、社内的な固定資産の管理は後回しにされがちですが、本稿を参考に、自社の固定資産管理を見直してみてください。

※リース資産は、リース対象によって有形固定資産か無形固定資産かに分類されます
※「投資その他の資産」のうち長期前払費用は、費用化していく過程で償却計算の管理をする必要があります
※償却計算とは、固定資産の価値を利用期間にわたって費用化していく処理です
※ソフトウェア等の無形固定資産については償却資産税の対象外となります

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