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前川 研吾 Kengo Maekawa

この記事の著者

前川 研吾 Kengo Maekawa

ファウンダー&CEO  / 公認会計士(日本・米国) , 税理士 , 行政書士 , 経営学修士(EMBA)

GHG排出量検証および開示における第三者保証の重要性

2024年11月11日

気候変動対策が国際的に進展する中、企業のGHG(温室効果ガス)排出量の管理と透明性は、経営の持続可能性を左右する重要な要素となっています。

GHG排出量の正確な測定と開示は、環境リスクの評価だけでなく、投資家など利害関係者との信頼関係の構築にも直結します。特に、第三者保証を受けたデータは信頼性が向上し、企業のESG評価を強化する要因となります。

本記事では、GHG排出量の第三者保証の重要性と導入における課題について詳しく解説します。

GHG(温室効果ガス)排出量の影響とその重要性

地球温暖化がもたらす環境への影響が深刻化する中、GHG(Greenhouse Gasの略称であり温室効果ガスを指す)の排出削減はグローバルな優先課題となっています。

GHGには、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)などが含まれ、人間の活動によって大気中に蓄積され、地球の気温上昇を促進しています。これにより、異常気象や海面上昇、生態系の崩壊など、広範な環境変化が進行しています。そのため、GHG排出量の削減は、地球の持続可能な未来の実現に向けた課題であり、企業もまたその対応が求められています。具体的には、企業が自社のGHG排出量を正確に把握し、それに基づいて削減目標を設定・実施することが重要になってきます。

GHG排出量検証と開示の背景

気候変動が世界的な課題として認識される中、企業のGHG排出量の測定と開示は、持続可能な経営を進める上で重要な役割を果たしています。

国連が掲げるパリ協定により、各国は産業や事業活動におけるGHG排出削減の目標を設定し、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めています。そのため、企業にも排出量の管理や削減が求められ、正確なデータを基にした報告や開示が重視されています。また、GHG排出量の開示はESG評価にも直結し、企業の持続可能性や社会的責任を測る尺度となっています。投資家や消費者は、環境負荷の低い企業を支持する傾向もあり、適切な開示が資金調達や市場競争力の維持・向上に寄与します。加えて、多くの国で開示義務化が進む中、透明性のある報告と正確なデータが企業の信頼構築において不可欠な要素となっていると考えます。

GHGに関する情報開示の第三者保証とは

第三者保証とは、企業が報告するGHG排出量データの信頼性を独立した第三者が検証するプロセスを指します。これにより、企業が開示するGHGデータの正確性が保証され、利害関係者はそのデータを信頼して利用することができます。具体的には、企業が使用する算定基準や方法が適正かどうか、報告が透明で一貫しているかを企業外部の専門機関が確認します。

このような第三者保証を利用することで、企業は透明性の高い報告を通じ社会的信頼とESG評価の向上を期待できます。

第三者保証の重要性

企業が開示するGHG排出量に対する第三者保証は、以下の理由により重要と考えられます。

信頼性の向上

第三者機関による検証を受けたデータは、投資家や規制当局からより信頼されます。内部による自己評価だけでは、意図的なデータ操作や報告ミスの懸念が残るため、独立した第三者が関与することで情報の正確性が担保されます。

規制対応とグローバルスタンダードの順守

多くの国や地域で企業のGHG開示が義務化される中、第三者保証は規制要件への対応に不可欠です。また、国際的に標準化された保証基準に沿うことで、他国の基準とも整合性が取れ、グローバル展開をする企業にとって一貫性のある開示が可能となります。

環境目標の達成に向けた支援

第三者保証によりデータの正確性が高まることで、企業が設定する排出削減目標の進捗が明確になります。これにより、サプライチェーン全体での削減目標達成に向けた具体的な計画の策定が容易になり、目標達成への信頼性を確保できます。

国際的な第三者保証基準

企業のGHG排出量の開示に対する信頼性を確保するため、国際的に認められた第三者保証基準が整備されています。これらの基準は、企業が環境データを透明かつ一貫性をもって提供するために重要であり、利害関係者や投資家に対して信頼性を保証する役割を果たしています。

以下に代表的な第三者保証基準、その特徴そして選定基準について詳しく説明します。

ISO14064(国際標準化機構)

ISO14064は、国際標準化機構(International Organization for Standardization)によるGHGの算定、報告、第三者検証を包括的にカバーする国際規格です。ISO14064-1が企業によるGHG排出量の測定基準、ISO14064-3が第三者による検証プロセスを規定しており、これらの利用により、企業のGHG報告が透明かつ整合性の取れたものとなります。

ISOは幅広い分野で国際的に認知されているため、信頼度の高い基準として広く利用されています。また、この規格に準拠することで、企業は報告内容が国際水準で保証されるというメリットがあります。

ISAE 3410(国際保証業務基準)

ISAE 3410は、国際保証業務基準(International Standard on Assurance Engagements)第3410号「温室効果ガス報告に対する保証業務」の略称であり、GHG排出量に関する情報の検証を行う際に利用されます。公認会計士や監査法人が保証業務を提供する際に利用するこの基準は、信頼性と透明性を重視しており、企業の報告が利害関係者にとって正確で信頼できるものであることを保証する基準です。ISAE 3410は、合理的保証と限定的保証の2つの保証レベルを提供しており、報告の粒度や企業のニーズに応じて柔軟に選択が可能です。

GHGプロトコル

GHGプロトコルは、WRI(世界資源研究所)とWBCSD(世界環境経済人協議会)によって策定された基準であり、GHGの算定と報告に関するグローバルな標準として広く採用されています。具体的には、スコープ1(直接排出量)・スコープ2(間接排出量)・スコープ3(その他の排出量)といった排出源の分類を明確にし、企業が自社の活動全体にわたってGHGを包括的に把握・報告できるようにしています。

第三者保証における課題と対策

第三者保証を導入する際には、具体的に、コストの増加・データの整合性・基準の多様性といった課題が存在しています。課題の詳細とその対策は以下の通りです。

コストの増加

第三者保証を受けるために、企業は費用を負担する必要があります。特に中小企業にとって保証のコストが大きな負担となり得ます。対策としては、保証の範囲を限定的なものに絞り、コストを最小限に抑えることが考えられます。

データの整合性

GHG排出量の測定には、企業が使用するエネルギーや排出プロセスに関する詳細なデータが必要です。しかし、業界や地域によってデータの質や基準が異なるため、第三者保証を受ける際にはデータの整合性確保が重要となります。デジタルツールの活用やデータ管理の強化が解決策として有効となるでしょう。

基準の多様性

GHG排出量の報告基準は、国際的に統一されていない場合があります。そのため、企業が採用する基準によって、第三者保証の方法や内容が異なることがあります。企業は、国際的に認知された基準(例:IASAE3410、ISO 14064-3など)を採用することで、課題を克服することが可能です。

まとめ

GHG排出量の開示と第三者保証は、企業の持続可能な成長を支える重要な要素です。第三者保証による開示データの信頼性の向上、規制対応とグローバルスタンダードの順守、規制対応とグローバルスタンダードの順守、そして企業の環境目標達成を支援する効果も期待できます。しかし、保証にかかるコストやデータの一貫性の確保などの課題も伴います。企業は、適切な第三者保証基準や保証範囲を選び、これらの課題に対応していくことが必要となるでしょう。

今後もGHG排出量の開示を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する企業活動が期待されます。

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