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長谷川 祐哉 Yuya Hasegawa

この記事の著者

長谷川 祐哉 Yuya Hasegawa

パートナー  / 税理士

コロナで需要高まる組織再編と知っておきたい組織再編税制

2021年6月20日

新型コロナウイルスの影響もあり、多くの企業が経営資源の活用や事業強化のために「組織再編」を検討しています。組織再編には様々な方法があり、関わってくる法律や税制も複雑です。組織再編を実施したものの、大きな税の支払いが発生し、事業の継続が難しくなる場合もあります。

本記事ではコロナによって需要が高まる組織再編と、節税のために重要な組織再編税制について説明します。

組織再編とは

組織再編とは、事業拡大やスリム化、事業の方向転換などのために、事業の分割や統合などを行うことを指します。「会社法」では、組織再編には合併、株式交換、株式移転、会社分割の4つの方法があるとされています。

新型コロナウイルスの拡大に伴い、多くの企業が大きな方向転換を迫られました。そこで多くの企業は経営戦略の見直しとともに組織再編に取り組んでいます。今後も新型コロナウイルスの影響により不安定な情勢が続けば、組織再編を図る企業は増えていくでしょう。

組織再編税制とは

組織再編税制とは、組織再編に関わる税制について包括的に定めた制度です。一般的に資産を移転する際には「移転資産の譲渡損益」に対して課税がなされます。組織再編においても同様に、移転する資産・負債は時価評価され、課税されます。しかしながら合併や会社分割などのすべてにおいて時価評価に対して課税された場合、多額の税金が発生し、組織再編が阻害される可能性があります。

これに対応するために設けられているのが組織再編税制です。組織再編税制には、一定の要件(税制適格要件)を満たす組織再編については資産・負債を簿価で引き継ぎ、課税関係を継続させ、課税が生じないよう優遇措置が取られています。そのため、組織再編を行う際には組織再編税制の理解と効果的な利用が非常に重要です。

「適格組織再編」と「非適格組織再編」

組織再編税制では、税制適格要件を満たすかどうかで異なる課税方式がとられています。税制適格要件を満たす組織再編(適格組織再編)では、資産や負債を帳簿価額で引き継ぐことが可能であり、課税が生じません。一方、税制適格要件を満たさない組織再編(非適格組織再編)では、資産や負債を時価で引き継ぐことから譲渡損益が生じ、課税が発生します。

組織再編の分類移転資産・負債の評価移転時の課税
適格組織再編帳簿価額生じない
非適格組織再編時価生じる

税制適格要件の内容

税制適格要件は、会社間の資本関係に応じ、以下の3パターンのうちのどれかが適用されます。

① 完全支配関係(100%グループ内再編)
② 支配関係(50%超グループ内再編)
③ 共同事業(持分割合が50%以下の法人間再編)

①→②→③の順番に要件が多くなり、税制適格へのハードルが高まります。組織再編を行う際には、その事案が上記のどれに当てはまるのかを事前に確認しておくようにしてください。

おわりに

本記事では、組織再編と組織再編税制について詳しく紹介しました。新型コロナウイルスの脅威は依然として続いていることからも、今後組織再編を検討する企業は増えてくると思います。

組織再編では「適格組織再編」か「非適格組織再編」によって課税が大きく異なります。組織再編税制に関する知識が無い場合、大きな落とし穴にはまる可能性もあります。もし組織再編をお考えでしたら、組織再編のサポート実績も豊富な弊社までお気軽にお問い合わせください。状況に応じ、迅速にサポートさせていただきます。

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