役員報酬の金額はどうやって決定すればよいのか?
2023年4月25日
役員報酬の金額はどうやって決定すればよいのでしょうか?役員報酬は、法人税等、所得税等、社会保険等、在留資格更新等の観点から総合的に決定する必要があります。本日は、役員報酬の決め方や、適切な金額の設定方法等についてご紹介いたします。
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法人税等及び所得税等の観点
もし100%株主であるオーナーと役員が同一人物でなければ、株主であるオーナーは役員報酬の金額は当該役員の貢献に応じた妥当な金額、あるいは、それよりも低い金額に設定することが一般的であり、当該役員にとってみれば役員報酬は高ければ高いほどうれしいことでしょう。
一方100%株主であるオーナーと役員が同一人物であれば、法人に留保するお金も個人に留保するお金も広い意味では一緒のため、極力税金として納付する金額が少なくなるように役員報酬を決定することが合理的です。
最初に述べたとおり、日本では法人の所得に係る実質的な税金の率、すなわち実効税率は、約30%となっています。一方で、個人の所得に係る税金の率は、0%~55%であるといわれます。
そのことから、役員報酬の金額が高いため個人の所得に係る税金の率が30%を超えてくると、例えば税率が50%となるような高い役員報酬の金額を設定してしまうと、法人と個人とを合わせて多く納税を行うことになってしまいます。
したがって、法人税等及び所得税等の観点からは、法人・個人の所得金額が調整できるほど十分にあることを前提として、法人税等と所得税等の税率がだいたい同じくらいになるような役員報酬の金額とすることで、極力税金として納付する金額を少なくすることができます。
なお、個人の扶養の状況などの所得控除額に応じて妥当な役員報酬の金額は変動するため一概には言えませんが、法人税等と所得税等の税率がだいたい同じくらいとなる役員報酬の金額は年間1800万円~2400万円程度と考えておけばよいでしょう
手取保証契約の観点
外資系企業の日本拠点の駐在員の場合には、しばしば所得税、住民税の他に、社会保険料の個人負担金額も含め計算した手取りベースで、これまでと変わらない待遇を約束していることがあります(手取保証契約)。
外資系企業の日本拠点の駐在員のことをエクスパッツ(Expats)といいますが、エクスパッツの給与を計算する際には、所得税、住民税、社会保険料を日本の会社が負担するという前提で、何度もシミュレーションを行い、支給額をアップさせて給与計算するグロスアップを行うことになります。
しばしば、外国人を役員として登用したり、従業員として雇用する場合には、提示した報酬金額が「額面」なのか「手取り」なのかでトラブルになるケースがあります。したがって海外では、手取りベースで待遇を保証をするという慣習があることを理解しておくことは重要です。
在留資格更新等の観点
経営管理ビザの審査においては、事業経営の安定性や継続性が見られることから、黒字経営は非常に重要です。ところが、黒字経営が重要だからといって経費を減少させ利益をあげるために、役員報酬を極めて低い水準にしてはいけません。月額で20万円程度は役員報酬を確保できるように事業計画を策定し実行していく必要があります。
つまり外国人オーナー経営者にとっては「会社=個人」です。入国管理局も会社と個人をセットで見るため、合わせて考える必要があります。これは日本の金融機関の融資審査上の見方と一緒ですが「会社の利益+役員報酬」が、その会社の本当の体力になります。経営管理ビザの更新においては「会社の利益+役員報酬」を見ているとも考えるべきです。
例えば、物価の高い東京で月額20万円で生活していくのはなかなか大変ではありますが、新卒のお給料と比較して、生活ができないということはないと思いますので、あくまで最低ラインではありますが20万円が役員報酬の目安にはなります。役員報酬は高ければ高いほど「経営・管理」ビザの更新において評価は高くなることでしょう。
定期同額の概念
日本には、役員報酬について考える際には、「定期同額給与」という概念があります。
定期同額給与(国税庁タックスアンサーNo.5209)
定期同額給与とは次に掲げる給与です。
(1)その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与(以下「定期給与」といいます。)で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの
(2)定期給与の額につき、次に掲げる改定(以下「給与改定」といいます。)がされた場合におけるその事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又はその事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であるもの
イ その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに継続して毎年所定の時期にされる定期給与の額の改定。ただし、その3か月を経過する日後にされることについて特別の事情があると認められる場合にはその改定の時期にされたもの
ロ その事業年度においてその法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(以下「臨時改定事由」といいます。)によりされたその役員に係る定期給与の額の改定(イに掲げる改定を除きます。)
ハ その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(以下「業績悪化改定事由」といいます。)によりされた定期給与の額の改定(その定期給与の額を減額した改定に限られ、イ及びロに掲げる改定を除きます。)
(3)継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの
この定期同額給与の概念に当てはまらない改定が行われると、役員報酬の一部が損金算入できなくなってしまうので注意が必要です。
役員報酬改定決議が決算日から3カ月以内に行われていれば、改定した役員報酬の支給が4カ月目からとなっても定期同額給与と認められます。また3カ月「以内」ですので決算日の翌月から役員報酬を改定しても定期同額給与と認められます。
例えば12月決算の会社であれば、決算日から3カ月以内に株主総会を開催し役員報酬改定決議を行います。したがって「1月から」、「2月から」、「3月から」、「4月から」と変更のタイミングは4パターンあります。
おわりに
本記事では、日本に進出している企業や外資系企業で度々問題になる役員報酬の決め方について説明しました。
役員報酬を決める際には、さまざまな角度から検討する必要があります。企業内だけで決めることももちろん可能ですが、後々後悔しないようにしたいとお考えでしたら、専門家に意見を聞くのが良いと思います。
弊社では、役員報酬に関してもサポートを実施しております。もし役員報酬に関して何かお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。