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黒住 准 Jun Kurozumi

この記事の著者

黒住 准 Jun Kurozumi

インターナショナルコンタクトパートナー  / 公認会計士(米国)

「シンガポール法人」と「シンガポール支店」の比較

2023年4月4日

シンガポールに進出する場合に、よくご質問をいただくのがこのテーマです。シンガポール法人を設立して進出するべきか、日本法人のシンガポール支店という形で進出するべきか、というご質問です。

法人と支店は事業体としての根本的な考え方が違います。したがってシンガポール進出の際には一番最初に慎重に検討しなければならない項目です。シンガポール法人とシンガポール支店の比較についてまとめました。

シンガポール法人とは?

シンガポール法人とは、シンガポールの法律に基づいて成立した法人です。シンガポール法人は、日本法人とは事業体として別個の存在となります。自然人と同じようにシンガポール法人自体が全ての権利義務の帰属主体になります。したがってシンガポール法人は自らが法的行為を行うことができます。

シンガポール支店とは?

シンガポール支店とは、シンガポールの法律に基づいて外資系企業(ここでは日本企業)の拠点として登録されたものをいいます。シンガポール支店を設置する場合は、シンガポール支店において代表者を定めて登録をする必要があります。シンガポール支店での意思決定や、債権債務に関する責任は最終的には日本の本店にあり、シンガポール支店はあくまで日本起業に内包されるものとして扱われることとなります。また、当該支店と日本の本店は、同一の企業内部における独立した会計単位となります。

シンガポール法人のメリット・デメリット

① メリット

シンガポール法人設立のメリットとしては以下があげられます。
・シンガポール法人は日本法人から法的に独立しており、シンガポール法人に対して発生した負債はシンガポール法人の払込資本までの有限責任となる。
・シンガポール法人の利益はシンガポールの税率によって課税されるため、低税率の恩恵を受けることができる(別途、タックスヘイブン対策税制や移転価格税制の検討は必要です)。
・シンガポールで工場を建設したり、特殊なビジネスを行う場合には、シンガポールで必要となる許認可取得の関係でシンガポール法人の方が受け入れられやすい。

② デメリット

シンガポール法人設立のデメリットとしては以下があげられます。
・シンガポール法人が赤字の場合、日本法人の利益と相殺することはできない。
・シンガポール法人と日本法人との金銭のやり取りについては、資金貸借(貸付金・借入金など)として取り扱う等の検討が必要。
・シンガポール法人が日本法人に配当として送金する場合課税される場合がある(ただし外国子会社配当金益金不算入制度の適用あり)

シンガポール支店のメリット・デメリット

① メリット

シンガポール支店設立のメリットとしては以下があげられます。
・支店が赤字の場合、本店の利益と相殺して本店で節税することができる。
・本支店間の資金移動は自由であり配当として課税されることはない。
・シンガポール支店はにおいては株主総会や取締役会等の開催が不要となり、本店で迅速な意思決定が可能となる。
・コンプライアンスのため必要な作業は法人よりも支店の方が簡易である。
・シンガポール支店の閉鎖(撤退)は比較的容易である。

② デメリット

シンガポール支店設立のデメリットとしては以下があげられます。
・シンガポールで生じた法的責任・訴訟等の影響が日本の本店まで及んでしまう。
・日本の本店(日本法人)の定款や履歴事項証明書(登記簿謄本)等を英語に翻訳する必要がある。
・支店設立後に法人への移行はできないので、改めてシンガポール法人の設立を行う必要がある。
・シンガポール支店の利益は、シンガポールと日本とで二重課税が生じる可能性がある。仮に外国税額控除により二重課税が解消されても、シンガポールの所得に対して日本の法人税等の税率が課せられるため節税メリットは享受できない。

まとめ

上記を踏まえますと、日本や世界での信頼、社歴、ブランド力などを上手く活用できる銀行・航空会社等の大企業であれば支店を設立することにメリットがあると考えられますが、シンガポールに進出する日本の中小企業であればやはりシンガポール法人を設立することが一般的です。

一方で策定したシンガポールビジネスに関する事業計画において、当初赤字が見込まれる場合にはシンガポール支店としてビジネスをスタートしたほうが、この赤字を日本の本社の利益と相殺することが可能です。タックスプランニングの観点からシンガポール支店を設立することもあります。しかしながら、シンガポールで利益が計上されてきた場合には、当該赤字の金額(繰越欠損金)は、シンガポール法人で計上される利益ともちろん相殺可能ですので、この点も検討すべきです。

「法的観点」「事務処理的観点」「税務的観点」などを総合的に勘案し、シンガポール法人とすべきか、シンガポール支店とすべきかを検討する必要があるといえるでしょう。メリットやデメリットに注目するのみならず、中長期的な海外事業成功の視点で形態を決定することも重要です。

日本企業のシンガポール支店の設立については対応できるコンサルティング会社が少ないのが現状です。RSM汐留パートナーズではシンガポール在住の取締役が精通しており対応が可能ですので、時々ご支援をさせていただいております。といいましても95%くらいの日本企業のお客様はシンガポール法人の設立を選択されています。

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