汐留パートナーズ・ニュースレター 2019年03月号

はじめに

 2018年12月14日に平成31年度税制改正大綱が公表になりました。今回の一つの目玉として、今年10月の消費税率引上げに際し、駆け込み需要と反動減といった大きな需要変動の平準化を図るための住宅と自動車に対する税制上支援策が挙げられます。

住宅に係る措置

住宅に係る税制上の支援策とは、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(以下、住宅ローン控除)の拡充です。

具体的には今年10月以降に消費税10%が適用される住宅の取得をし、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に居住の用に供した場合には、住宅ローン控除の適用期間が現行の10年から13年に延長されます。この際、10年目までは現行通り、「年末ローン残高(最大4,000万円)の1%」の控除が受けられ、11~13年目の3年間については「年末ローン(最大4,000万円)残高の1%」又は「建物購入価格(税抜き、最大4,000万円)の2%を3等分した額」のいずれか少ない方の税額控除が受けられます。即ち、消費税率が8%から10%へと増加した2%分について3年間で控除されるイメージです。

自動車に係る措置

  • ①自動車税の税率引下げ

自動車税は、自動車の所有に対して毎年かかる税金で、総排気量に応じた税率が設定されています。今回の税制改正にて2019年10月以降に新車新規登録を受けた自家用乗用車(登録車)から、小型自動車を中心に全ての税率区分において、自動車税を恒久的に引き下げることが掲げられています(引下げ幅は税率区分に応じて▲1,000円~▲4,500円)。

  • ②環境性能割の臨時的軽減

現行の自動車購入時にかかる自動車取得税は2019年9月30日で終了し、10月から新たに「環境性能割」が導入されます。 環境性能割は、自動車取得時に自動車取得価格に応じて課され、その税率は2020年燃費基準の達成度合いによって異なります。これは現行のエコカー減税を加味した自動車取得税と類似した制度といえます。今回の税制改正では2019年10月1日から2020年9月30日までの1年間においては、環境性能割の税率を1%軽減することが掲げられています。

  • ③エコカー減税・グリーン化特例の延長、見直し

 エコカー減税(自動車取得税・自動車重量税に適用)は延長されますが、軽減割合は現行よりも小さくなります。グリーン化特例(自動車税・軽自動車税に適用)も延長されますが、2021年4月1日以降は、適用対象が電気自動車等に限定されることになります。

おわりに

 今回は平成31年度税制改正大綱の中から、個人に対して影響が大きいと思われる項目を取り上げましたが、改正大綱の内容は、法人課税や個人事業者向け事業承継、新たな税制創設など多岐にわたっています。現行の税制やその改正について疑問点等ございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。

マネージメントと「文書」の大切さ

◆マネージメント力が問われる傾向

厚生労働省は、平成31年度からの新事業として、企業のマネージメント力を支える人材育成強化プロジェクト事業(仮称)を行うとしています。

具体的には、マネージメント力向上のためのモデルカリキュラムの開発を進め、企業の教育訓練の実施を総合的に支援するセミナー等を行うということです。昨今、セクハラ、パワハラ、情報セキュリティなどに端を発する不祥事が顕在化しており、労働・職場環境の悪化や、生産活動の停止等により、企業の生産性に悪影響を与える場合も生じている現状を踏まえて実施するものです。

◆文書の重要性

マネージメント力向上は、国としても取り組む企業の課題となっていますが、日頃の労務管理方法としては、やはり文書でのやりとりが重要でしょう。

テクノロジーが発達したとはいえ、人間同士の問題に対しては目に見える文書とともに注意・指導等を行うのが、一番「響く」と思われますし、文書を残しておけば、万が一裁判になった場合などにも会社側の主張を立証する証拠ともなります。

◆状況に合わせた見直しが必要

懲戒処分を通知する文書でも、けん責、減給、懲戒処分通知書、諭旨退職、管理不行届きだった管理者への処分など、それぞれ内容も書きぶりも違ってきます。

また、最近の裁判では、例えば問題社員の行動に対して注意・指導書を発しているだけではダメで、面談等による実際的な指導も必要と判断されるようになってきているようです(問題社員と接するのは嫌だという担当者の心情も理解できますが)。さらに、SNSの使用等に関する注意・警告のための文書など、新しい文書も必要となってきていますので、自社の文書や労務管理の実態が、世の中の状況に対応しているか見直してみる必要があるかもしれません。

◆わかりやすい文書を書くには

また、日常業務に使う文書(年末調整用の書類提出のお願いなど)も、わかりやすさを意識することで、従業員の会社・管理部門に対する印象は随分と変わってきます。役所や国が出した情報の丸写しは、間違いがないかもしれません。しかし、従業員が理解しにくいようでは、結局きちんと読まれずに、ミスや手戻りにつながってしまいます。伝わる文章を書くコツは、「小学生にもわかるように」書くことだそうです。意識して変えてみるとマネージメントの改善にもつながるでしょう。

Q 株主が株主総会で議決権の代理行使を要求してきたら

当社で今期開催する定時株主総会において、ある株主が、代理人を株主総会に出席させて議決権を代理行使したいと要求してきました。

当社としては、この代理人による出席と議決権の代理行使を認めなければならないでしょうか。

A 株主総会が攪乱されるおそれがあるかどうかがポイント

◆議決権行使の代理人を株主に限定する旨の定款の規定

多くの会社では、定款で、株主総会における議決権の代理行使をしようとする場合には、その代理人を株主に限定する旨の規定をおいています。

株主総会が会社の最高意思決定機関であることや、会社法でも議決権の代理行使は認められていることから、株主の議決権の代理行使を一切認めないとすることは許されません。

それでは、上記規定のように、議決権行使の代理人を株主に限るとする旨の定款の規定は許されるでしょうか。この点については、株主総会が株主以外の第三者によって擾乱されることを防止し、会社の利益を保護するという合理的理由による相当程度の制限ということができるため、有効であるとする判例があります。

◆代理人が株主ではない場合

 それでは、議決権代理行使の代理人は株主でなければならない旨の定款の規定があった場合、当該代理人が株主ではないとしたら、議決権の代理行使を全て拒否できるでしょうか。前述の判例によると、議決権代理行使の代理人を株主に限定する旨の定款の規定が許される根拠は、株主総会が株主以外の第三者によって擾乱されることを防止し、会社の利益を保護するという合理的理由があるからということでした。そうすると、株主総会が代理人よって擾乱されるおそれがなければ、株主以外の者が代理人となった場合でも、議決権の代理行使を許さなければならない可能性がありそうです。

実際、下級審の裁判例で、代理人として弁護士が選任された場合、株主総会を混乱させるおそれがあるとは一般的には認め難いため、特段の事由がない限り、これを拒否することは違法と判断したものがあります。

したがって、代理人が株主でない場合でも一律に議決権の代理行使を拒否すべきではなく、総会攪乱のおそれがないかを具体的に判断する必要があります。