残業制度と残業給与の計算方法について
2024年8月5日
今回は、残業の話題についてみてみます。
残業とは、法定労働時間を超える労働のことで、平日に発生するものを「時間外労働」、休日に発生するものを「休日労働」と呼びます。日本では、法定労働時間を延長する必要がある場合、日本の労働基準監督署に法定の届出手続きを行う必要があります(社会保険労務士と36協定の締結や届出などの手続きを確認してください)。
残業の問題は会社の人事にとって二つの側面に関わります。一つは労働時間の計算と休息規定の遵守(労働者の安全と健康の配慮義務を含む)、もう一つは残業に対する労働対価の計算(残業代)です。
残業時間の法的制限
日本の労働基準法によれば、日本の法定労働時間は週40時間(または44時間)、1日8時間であり、1週間に1日の休日を設ける必要があります。しかし、法定労働時間を超えて労働者に残業や休日労働をさせる必要がある場合、36協定(残業の特別集団契約)を所轄の労働基準監督署に届出なければなりません。36協定には残業に関わる労働の種類や残業時間の上限が明確に規定されなければなりません。
厚生労働省の行政規定によると、36協定には適用期間(一定期間)が規定されていなければなりません。この期間は1年となっています。また、特別な事由がない限り、残業時間の具体的な上限は以下の通りです。
表I-標準労働時間の残業時間上限
期間 | 残業時間上限 |
---|---|
1ヶ月 | 45時間 |
1年 | 360時間 |
表II-変形労働時間の残業時間上限
期間 | 残業時間上限 |
---|---|
1ヶ月 | 42時間 |
1年 | 320時間 |
それでも、法律上は臨時的な特別事由の下で上記の残業上限を超えることが許されていますが、実際には日本社会の残業状況は非常に深刻で、過度の残業が労働者の心身に損害を与え、過労死や過労自殺の発生を促しているため、社会全体として再び残業制度を見直しています。
2019年4月に日本で成立した「働き方改革法」は、日本社会が高齢少子化社会に直面し、労働年齢人口が減少していることを背景に、働き方の多様化を促進し、個人の職業成長と所得分配の良好な環境を整備することを目指しています。また、長時間労働による労働者の健康被害や仕事と家庭のバランスが取れないことによる人口減少に対応するため、残業制度を改革し、女性や高齢労働者の就業率を高め、全社会の労働者の仕事と生活のバランスを図ることを法律の改正点としています。
臨時的な特別事由として濫用されやすいケース(突発的な製品仕様変更、機械故障の対応、大量の苦情対応など)についても、「働き方改革法」では以下のように残業時間の上限基準を明確にしました。
- 残業時間は年間で720時間を超えてはならない
- 平日残業と休日残業を合わせて月100時間を超えてはならない
- 平日残業と休日残業を合わせた場合、2ヶ月平均、3ヶ月平均、4ヶ月平均、5ヶ月平均、6ヶ月平均のいずれでも、月80時間を超えてはならない
- 臨時的な特別事由がある場合、月の残業時間が45時間を超える期間は6ヶ月を超えてはならない
臨時的な特別事由の法律規定の上限を超えた場合、刑事責任が発生する可能性があり、6ヶ月以下の拘禁または30万円以下の罰金が科されることがあります。また、臨時的な特別事由の下での残業については、雇用者は労働者の健康福祉対策を講じる義務があり、医師の指導を受ける、深夜残業の回数を制限する、補休や特別休暇を与える、健康診断を実施する、心理相談を受ける、産業医の指導や助言に従うなどの措置を講じる義務があります。
標準労働時間制の残業代
残業労働に対してより高い労働対価を支払うことは、多くの国の法律で通常の慣行とされています。日本では、厳密には残業代は二種類に分けられます。一つは企業が定める労働時間を超える残業代(残業手当)、もう一つは法定労働時間を超える残業代(時間外手当)です。日本の労働法では法定労働時間を超える残業代のみが規定されていますのでご注意ください。便宜上、本記事では後者の時間外手当のみに言及します。
現行の法律に基づく日本の残業代の計算基準は以下の通りです。
表III-標準労働時間制の残業代計算基準
残業代の種類 | 残業代計算基準 |
---|---|
通常の残業 | 基礎賃金の1.25倍以上 |
深夜労働(22時~翌5時) | 基礎賃金の1.25倍以上 |
法定休日の残業 | 基礎賃金の1.35倍以上 |
法定休日の残業が8時間を超える場合 | 基礎賃金の1.35倍以上 |
法定休日の深夜労働(22時~24時) | 基礎賃金の1.6倍以上 |
月の残業時間が60時間を超える場合 | 基礎賃金の1.5倍以上 |
ここで言う基礎賃金とは、月給の場合、月給を1年の月平均労働時間数で割ったものです。月平均労働時間数は法定労働時間ではなく、会社が定める労働時間を指します。また、月給には通常、家族手当、交通費、住宅補助、臨時手当は含まれません。ただし、これらの手当が会社がすべての従業員に一律に支払うものである場合は、月給に含めて残業代を計算する必要があります。
特殊な労働時間制度の残業代
特殊な労働時間制度では、法定労働時間の上限が異なるため、残業代の計算に影響を及ぼします。変形労働時間制の場合、まず残業時間を確定する必要があります。
変形労働期間中、労使協定または就業規則で規定された1日の労働時間が法定の8時間を超える場合、規定された労働時間を超えた部分が残業時間として計算されます。1日の労働時間が規定されていない場合は、8時間を超えた部分が残業時間として計算されます。
同様に、週の労働時間についても、変形期間中の労使協定または就業規則で規定された週の労働時間が法定の40時間(または44時間)を超える場合、規定された週の労働時間を超えた部分が残業時間として計算されます。週の労働時間が規定されていない場合は、40時間(または44時間)を超えた部分が残業時間として計算されます。
以上の手順で判断した後、変形労働時間制における法定労働時間の上限も以下の通りです。
表IV:1ヶ月単位の変形労働時間制度の法定労働時間上限
変形期間の日数 | 法定労働時間上限 |
---|---|
28日 | 160.0時間 |
29日 | 165.7時間 |
30日 | 171.4時間 |
31日 | 177.1時間 |
代休と振替休日
法定休日の残業について、代休を設けることで残業代を支払わずに済むかどうかは、多くの人事担当者が知りたいことかもしれません。ここでまず明確にしていただきたいのは、日本の法定休日は土日祝日の総称ではないということです。日本の労働基準法では、雇用者は毎週1日の休日を設ける必要があり(変形労働時間制では4週に4日の休日を設ける)、法定休日は就業規則に明記されている休日を指します。
したがって、法定休日の残業について、代休(代替休暇)を設けた場合でも、法的に残業代を支払う必要があります。しかし、事前に法定休日と他の労働日を調整し、事前または事後に代休を設けた場合(振替休日)、法定休日が既に調整されているため、残業代を支払う必要はありません。
注意すべき点は、法定休日の残業について、残業時間が法定労働時間の8時間を超える場合、残業代は重複して計算されず、一律135%の残業代が支払われます。しかし、深夜労働の場合は、深夜労働の加算率が適用されます。
最後に、代休の意味は、1ヶ月に60時間を超える残業を調整するメカニズムとしても利用できることです。就業規則にこのような場合の代休が明記されている場合、実際の代休時間に基づいて、最終的に適用される残業代率が異なる場合があります。
固定残業代制度とみなし労働時間制
固定残業代制度についても、顧客からよく問い合わせがあります。固定残業代制度は、従業員に残業や休日労働があるかどうかに関わらず、一定時間数の残業が発生することを見越して、毎月の基本給にこの部分の残業代を含める制度です。このため、実際に従業員が残業や休日労働をしていなくても、固定残業代の支払いには影響しません。この制度では、会社が定める固定残業時間に基づいて、正確に固定残業代を計算する必要があります(通常の残業代率の125%で計算)。固定残業代がこの金額を下回る場合は、差額を補填する必要があります。また、残業が深夜や法定休日に発生した場合は、深夜残業や法定休日残業の基準に従って残業代を補填する必要があります。
みなし労働時間制は、労働時間を管理しない従業員に対して、法定労働時間を提供したとみなす制度です。この制度では、具体的な労働時間は従業員の自己管理に委ねられます。残業、深夜労働、法定休日の残業が発生した場合も、法的に残業代を支払う必要があります。この点もご注意ください。
まとめ
日本の残業法制度は複雑です。残業は従業員の仕事と生活の時間を再分配するものであり、実際には雇用者が従業員の安全と健康を配慮する義務の履行にも関わります。残業時間の認定と残業代の計算には専門知識が求められ、会社内部の出勤管理や就業規則の策定にも高い要求があります。社会保険労務士に相談または委託して対応することを強くお勧めします。
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