日本の年次有給休暇はどう計算されるでしょうか? そして、買い取りは可能なのでしょうか?
2024年2月27日
年次有給休暇は、日本企業における人事労務管理の重要な要素です。 本稿では、日本の年次有給休暇制度におけるコンプライアンス要件と留意点を紹介します。
日本の法律における年次有給休暇の規定と実施状況
日本の労働基準法第39条によると、労働者は入職後6ヶ月間連続して勤務し、その勤務日数が6ヶ月間の勤務日数の8割以上であれば、法律に基づき年次有給休暇を取得することができます。 厚生労働省の調査報告によると、日本の労働者1人当たりの年休取得日数は、最初の5年間(2023年)の平均日数は17.6日で、そのうち労働者が自ら申請した年休の平均日数は10.9日(残りは使用者指定分)であり、年休取得率は62.1%と過去最高水準に達しています。
日本の法制度において、年次有給休暇は、使用者の権利と義務の両方を規定しています。ここでいう権利とは、使用者の時季変更権のことであり、主に従業員の年次有給休暇と事業運営のバランスをとり、従業員の休暇集中による事業運営への支障を防止することを目的としています。また、義務とは、日本の働き方改革関連法の規定に基づき、日本の職場における年次有給休暇政策の実施が困難になること(日本の職場文化において、従業員が年次有給休暇を取得する権利を行使しないことを好むという現象が長年存在している)を回避するためです。 義務として、日本の働き方改革関連法では、日本の職場における年次有給休暇政策の実施が困難になることを避けるため、雇用主は年間5日の年次有給休暇を指定する権利を有します。 使用者の年次有給休暇の時季指定は、就業規則に明確に規定されていなければならないので注意が必要です。 (詳しくは、日本の就業規則とは? 遵守事項を満たすために何をすべきかを参照)。
では具体的に、日本の年次有給休暇の日数はどのように計算すればよいのでしょうか。
年次有給休暇の日数はどのように計算されますか?
日本企業の正社員か有期雇用契約者かを問わず、また管理監督者か一般社員かを問わず、フルタイム労働者の場合、法律上の年次有給休暇の基本は以下の通りです:
継続勤務年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
年次有給休暇日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
ここでいう継続勤務とは、定年退職後の再雇用を含め、同一企業での継続勤務年数のことです。 同時に、従業員が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休養した期間、法定育児休暇や介護休暇のための休暇期間は、単年度の年次有給休暇の計算上、通常の出勤とみなされます。 また、会社都合により業務が停止した場合、年次有給休暇の取得基準を判断するためには、原則としてその停止期間を全労働日から除外しなければなりません。
パートタイマーの場合は年次有給休暇を比例付与する必要があります。 具体的な計算方法や適用条件については割愛しますので、必要に応じて社会保険労務士にご相談ください。
年次有給休暇で何ができますか?
労働基準法に基づく従業員の権利として、従業員が自分の好きな時期に休暇を申請することが認められています。 しかし、休暇を取得する権利と会社の運営とのバランスを取るため、法律は季節的なスケジュールを変更する権利も会社に与えています。同時に、同じ年に年次有給休暇を5日未満しか取得しない従業員において年次有給休暇を取得する権利の実現を促進するため、法律では、雇用主が従業員の年次有給休暇をこの時季に指定する義務、すなわち、雇用主は労働者が年次有給休暇を5日(5日未満付与の場合は年次有給休暇残存日数)取得する時季を指定しなければならないと規定しています。 この場合、使用者は就業規則において、時季指定が適用される労働者の範囲や指定の方法などを定める必要があります(関連注:日本における人事労務管理のための就業規則の作成について(条文予定))。 また、使用者は、時季指定に際し、できる限り労働者の個別の意見を聴くことが義務付けられています。
次に、日本では年次有給休暇を具体的にどのように取得できるのでしょうか。 年次有給休暇は一元的に連続取得しなければならないのでしょうか。 それとも個別に取得できるのでしょうか。 日本の法律では、年次有給休暇は原則として1日単位で取得することになっていますが、一定の条件(下表参照)を満たせば、他の方法で取得することもできます。
カテゴリー | 内容 | 労働協約の締結 |
---|---|---|
計画年休 | 年次休暇は労使協定を結べば計画的に休暇取得日を割り振ることができる。ただし、労働者が自ら請求できる年次休暇は、年間5日を下回ってはならない。 | 必要 |
半日単位年休 | 年次有給休暇は日単位で取得されるが、労働者が半日単位での年次有給休暇の取得を希望する場合、日単位での年次有給休暇の取得に支障のない範囲で、使用者の同意を得て半日単位での年次有給休暇を与えることができる。 | – |
時間単位年休 | 年次有給休暇は日単位で取得されるが、労働者が半日単位での年次有給休暇の取得を希望する場合、使用者の同意があれば、日単位の年次有給休暇を損なうことなく取得することができる。 | 必要 |
特別休暇 | 法定の年次有給休暇に加え、会社は休暇の目的や取得方法等を任意に定めることができる。 | – |
厚生労働省「年次有給休暇の起算日(5日)の正確な取得に関する解説」4より
注意点としては、年次有給休暇の付与開始日やその年の計算基準日については会社によって様々な形の規定があるため、年次有給休暇の取得期間が重複するケースも考えられます。 この場合、取得すべき年次有給休暇の計算方法については会社独自の人事管理制度に基づき社会保険労務士のサポートが必要となります。
年次有給休暇を取得しないとどうなりますか? 年次有給休暇はどのように発生しますか? 年次有給休暇を買い取ることはできますか?
未取得の年次有給休暇はどうすればいいのでしょうか? 前述の通り、日本の雇用主は従業員に最低5日間の年次有給休暇を与える義務があります。 それを超えて未消化の年次有給休暇は、合算して翌年の年次有給休暇にカウントすることが認められています。 ただし、年次有給休暇の清算期間(時効)は法律上2年であることに注意してください。
法律上の年次有給休暇の目的は労働者に自己啓発のための休暇を与えることであるため、制度が実質的に空洞化することを避けるための年次有給休暇の買い取り契約は認められていません。 未取得の年次有給休暇を補助することで従業員の利益を保護できると認められるのは、以下のような場合のみです:
- 法定基準を超える未使用の年次有給休暇
- 消滅時効を超える未取得の年次休暇
- 退職時に残っている未取得の年次休暇
上記の年次有給休暇の補助は、労働者の年次有給休暇を取得する権利を侵害してはならないという条件付きであるという事実に注意を払うことが重要です。 言い換えれば、補助行為自体が従業員の休暇申請の障害となってはいけません。 同時に、労働契約や就業規則において、年次有給休暇の日数を補助・購入できることを明示的に合意していない場合もあります。 一方、雇用主は年次有給休暇を買い取る法的義務はありません。 従って、年次有給休暇の実施には、使用者が社内の人事管理制度において最善を尽くす必要があります。
(関連注:年次有給休暇の企業取り決め(記事作成予定))。
年次有給休暇を現金に換算する際の換算基準はどのようなものになるでしょうか? 大きく分けて2つのアプローチがあり、従業員の給与率に基づくものと、使用者が就業規則で固定給付を定める方法があります。 前者の給与率の場合、基礎となる賃金は次の3つの中から選択することができます:
- 従業員の平均賃金
- 健康保険法に定める標準報酬月額
- 所定労働時間内に実際に働いた後に支払われる通常の賃金
具体的には、①の平均賃金は、原則として、従業員に支払われた賃金の総額を直近3ヶ月間の暦日数で除して得た額であり、この額は、従業員の手当、補償、減給懲戒処分の算定の基礎ともなるものであり、②の健康保険法に定める標準報酬月額は、当年4月から6月までの3ヶ月間に支払われた報酬の平均額であり、その平均月額が健康保険の標準報酬額に相当するものです。健康保険法標準報酬月額は、定時決定では、その年の4月から6月までの3か月間に支払われた報酬の平均額から導き出された額であり、健康保険法標準報酬月額表の差別化水準に対応する平均報酬月額から導き出された額を30日で除して年次有給休暇の日額とします。 ③労働基準法第39条に規定する賃金であり、規定賃金が時給の場合は、その時給に年休当日の所定労働時間を乗じた額を日額換算した額、規定賃金が日給の場合は、その額を日額換算した額、規定賃金が月給の場合は、その月の所定労働日数をその月の所定労働日数で除した額を年休1日分の手当の額とする場合に区別されます。
最後に、年休手当の取扱いにあたっては、ここでいう手当の額は本来賃金の報酬に属するものではなく、賞与として取り扱われるものであることにも注意が必要です。 つまり、人事労務事務所で補助金額分の専用の賞与支払届(ボーナス支給スケジュール)を作成し、所属する地方年金事務所に提出する必要があります。 同時に、賞与支給予定表を該当社員に発行する必要があります。 税務上の取扱いとしては、賞与の性質上個人所得税の計算が必要となります。 ただし、当年度の年休手当が従業員の退職(離職、法定退職を含む)時に発生した場合は、退職所得の性質を有するため、当年度は1人当たり40万円の所得税が非課税となります。
年次有給休暇違反の法的責任
労働基準法第39条によると、従業員に1年間に少なくとも5日の年次有給休暇を与えなかった雇用主は、30万円以下の罰金に処せられます。 この罰金は従業員1人を基準として計算されるため、社内で複数の従業員が違反した場合は、5日分の年次有給休暇を取得していない従業員の人数を掛け合わせて罰金額が決定されることに注意が必要です。
会社が年次有給休暇の時季指定を行う場合、就業規則に対象者の範囲や指定の方法が明記されていなければ、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、労働者が請求した年次有給休暇(年5日)に加えて、使用者が年次有給休暇を与えなかった場合、法律違反の場合は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられることがあります。 違反回数は関係する従業員の数に応じて計算されます。 従って、年次有給休暇の人事管理においては、コンプライアンスに留意する必要があります。
事業主は、年次有給休暇を管理するための基礎資料として、従業員の年次有給休暇管理簿を、年次有給休暇を取得した年から5年間(現在は3年間)保存することが法律で義務付けられています。
結論
要約すると、日本の人事管理における年次有給休暇は労働者の法的権利であり、企業の人事管理における重要な要素です。 企業内の人事制度を効果的にアレンジすることで従業員の法的権利を実現すると同時に、企業の運営と発展のニーズとのバランスをとり、経営におけるWin-Winの状況を実現することができます。 日本の年次有給休暇制度は実施する際に選択肢が多様なので、社会保険労務士等の専門家にご相談の上、貴社の労働法遵守要件を満たす人事管理制度を設計されることをお勧めします。
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