新設された在留資格「特定技能」の概要とその分類である「特定技能1号」「特定技能2号」
2024年9月17日
はじめに
少子高齢化による労働人口の減少に直面する日本、そのなかでも中小・小規模事業者では人手不足の影響が顕著です。これに対応すべく、政府は生産性向上や国内人材の確保の取り組みをしてもなお、人材の確保が特に困難な状況にある特定の産業分野において、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れる仕組みを構築しました。
具体的には、在留資格「特定技能」の創設等を目的とした「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律(以下、改正出入国管理法)」の成立です。2018年12月14日に公布、2019年4月1日に施行された同法によって、外国人労働者の受け入れが拡大されていきました。
本コラムでは、在留資格「特定技能」の概要を確認します。
在留資格「特定技能」
従来の就労ができる在留資格は、医師や弁護士等の高度に専門的・技術的な分野の人材に限定されています。それに対し、改正出入国管理法では、単純労働を含めた就労が可能な「特定技能1号」「特定技能2号」が設けられました。これは特定産業分野で就労する外国人のみが取得可能なものです。具体的には以下の14業種が当てはまります。
特定産業分野
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材産業
- 産業機械製造業
- 電気・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
※「特定技能2号」は、6.建設、7.造船・舶用工業の2分野のみ受入れ可。
具体的には「特定技能1号」「特定技能2号」にはどのような違いがあるのでしょうか。以下の表にまとめました。
「特定技能1号」「特定技能2号」
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
---|---|---|
内容 | 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格 | 特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格 |
対象業種 | 特定産業分野の14業種 | 特定産業分野のうち、建設、造船・舶用工業の2業種 |
在留期間 | 1年、6か月又は4か月ごとの更新。最長5年。 | 3年、1年又は6か月ごとの更新。上限なし。 |
技能水準 | 試験で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験免除) | 試験で確認 |
日本語能力水準 | 生活や業務に必要な日本語能力を試験で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験免除) | 試験での確認は不要 |
家族の帯同 | 基本的に認めない。 | 要件を満たせば可能(配偶者、子)。 |
転職 | 同一の業務区分内、又は試験によりその技術水準の共通性が確認されている業務区分間において転職可能。 | 同左 |
特定技能1号と特定技能2号を比較すると、特定技能2号の技術水準は「熟練した技術」であることから、特定技能1号よりも高度で専門的な技術が必要になるでしょう。それゆえ、よりハードルが高い特定技能2号では、在留期間の上限がない、家族の帯同が可能、などの配慮があります。
このように人材不足を補うための「特定技能」により、就労できる在留資格の技術水準は下図のように拡大しています。
出典:法務省入国管理局「新たな外国人材の受入れについて」
おわりに
本コラムでは、在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」についてご紹介しました。従来日本において、外国人の単純労働は認められていませんでしたが、深刻な人手不足に対応すべく、「特定技能」といった新たな在留資格を設け、外国人労働者の受け入れ拡大に取り組んだことは大きな方向転換といえるでしょう。