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前川 研吾 Kengo Maekawa

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前川 研吾 Kengo Maekawa

ファウンダー&CEO  / 公認会計士(日本・米国) , 税理士 , 行政書士 , 経営学修士(EMBA)

ESGデューデリジェンス(ESG DD)のポイント:投資判断と事業運営における重要要素

2025年3月21日

近年、環境・社会・ガバナンス(ESG)への注目がますます高まっています。このトレンドは、企業や投資家にとっても非常に重要な意味を持ち、投資判断や事業運営における重要な要素として認識されています。本記事では、ESGデューデリジェンス(以下、ESG DD)のポイントを網羅的に解説します。

環境リスク評価とエネルギー移行

(1)環境リスク管理の重要性

企業における環境リスクの評価は、ESG DDの基盤となる要素です。 

  • Scope 1、2、3排出量の追跡:直接排出(Scope 1)、電力使用による間接排出(Scope 2)、およびバリューチェーン全体の排出(Scope 3)を網羅的に測定する必要があります。この測定は、企業の環境負荷を具体的に把握し、削減策を立案するための出発点となります。
  • 気候シナリオ分析将来的な気候変動リスクをシミュレーションし、事業戦略に反映させる取り組みが求められます。たとえば、異常気象や海面上昇による事業拠点への影響を予測することで、適切なリスク管理が可能になります。
  • 生物多様性影響の緩和:企業活動が環境に与える影響を最小化し、長期的な生態系保全への貢献が求められます。具体的には、土地開発時の環境アセスメントや、生物多様性保護のための地域社会との協力が重要です。

(2)エネルギー移行への対応

持続可能なエネルギー利用を推進することは、環境リスク管理の重要な柱です。 

  • 再生可能エネルギーの採用:太陽光や風力エネルギーの利用を最大化することで、化石燃料への依存を減らす努力が求められます。さらに、自社施設だけでなくサプライヤーやパートナー企業にも再生可能エネルギーの導入を促進することで、影響力を広げることが可能です。 
  • 低炭素技術への投資:イノベーションを通じて、事業全体の脱炭素化を推進します。具体例としては、製造プロセスのエネルギー効率化や、電気自動車(EV)の導入が挙げられます。
  • サプライチェーンの脱炭素化:取引先を含むバリューチェーン全体の脱炭素化目標を設定し、実行します。これには、輸送手段の最適化やエネルギー効率が高いパートナーの選定が含まれます。 

コーポレートガバナンスと戦略的整合性

(1)ガバナンス構造の健全性

ガバナンス構造は、企業の透明性や信頼性を確保する重要な要素です。 

  • 取締役会の構成と多様性:取締役会がESG課題に対応するためのスキルと多様性を備えているかを評価します。たとえば、女性やマイノリティの参加がどの程度反映されているか、また外部専門家の活用が行われているかを確認することが重要です。 
  • 経営陣の報酬とESG目標の連動:経営陣のインセンティブがESGパフォーマンスに基づいて設定されているかを確認します。これにより、ESG目標達成への具体的な動機付けが期待できます。 
  • 内部告発と倫理報告メカニズム:従業員が不正や倫理的問題を匿名で報告できる体制が整備されていることが重要です。これにより、組織全体の信頼性向上につながります。 

(2)戦略的コミットメント

企業の長期的な成長においてESGがどのように統合されているかを分析します。

  • 国際的な枠組みとの整合性:企業がパリ協定や国連SDGsに沿った取り組みを行っているかを検討します。たとえば、温室効果ガス排出削減目標を設定し、グローバルな基準に準拠することが求められます。 
  • 重要性評価プロセスの整備:ESGに関連する重要な課題を特定し、優先順位を明確にするプロセスがあるかを確認します。このプロセスは、ステークホルダーの期待や事業リスクを的確に反映するための鍵となります。

社会的影響評価と多様性促進

(1)労働慣行の向上

従業員やサプライチェーンにおける労働条件の改善が、ESG DDで重要な評価ポイントとなります。 

  • 人権保護と労働条件:現代奴隷制防止方針や適切な労働条件が整備されているかを確認します。特に、児童労働の防止や安全な労働環境の確保が重要です。 
  • 公平な報酬とキャリア開発:従業員が公平な報酬を受け取り、キャリアアップの機会が提供されているかを評価します。また、スキルアップ研修や資格取得支援プログラムの有無も注視すべきポイントです。 

(2)多様性と包括性(DEI)

多様性、公平性、包括性(DEI)に関する取り組みは、企業の社会的価値を高める重要な要素です。 

  • リーダーシップにおける多様性:経営層や管理職に多様性が反映されているかを評価します。特に、女性リーダーの割合や国際的な視点を持つ人材の活用が重要です。 
  • 採用と昇進の公平性:包括的な採用プロセスや昇進基準が整備されているかを確認します。これには、バイアスを排除するための評価基準の透明性が求められます。 

(3)地域社会への貢献

企業が地域社会にどのように影響を与えているかを検討します。 

  • 社会貢献活動の透明性:地域社会への投資や社会的インパクト測定が行われているかを確認します。これには、教育プログラムや医療支援への寄与が含まれます。
  • 消費者の健康と安全への配慮:製品やサービスが消費者に対して安全であるか、またその説明責任が果たされているかを評価します。 

規制遵守とリスク管理

(1)報告と開示の透明性

企業がESGに関する情報を正確かつ透明に開示しているかが評価されます。 

  • TCFDおよび統合報告の質:企業の気候関連財務情報の開示が、国際基準に準拠しているかを確認します。また、情報の具体性や定量的データの提供も重要です。
  • 第三者認証と監査:ESGパフォーマンスに対する独立した第三者の認証を受けているかを検討します。これにより、報告の信頼性が向上します。

(2)規制リスクの管理

新たな環境規制や炭素価格への対応能力が企業の競争力を左右します。 

  • 炭素価格への準備:炭素排出に関連するコストへの対応が計画的に行われているかを評価します。 
  • 環境許可の遵守状況:過去の環境規制違反の履歴や現在の遵守状況を確認します。違反履歴がある場合は、その是正措置についても詳細に評価します。 

財務的観点でのESG統合

(1)持続可能な財務指標

ESGパフォーマンスと財務成果の相関関係を分析します。 

  • グリーンボンドやローンの枠組み:サステナブルファイナンス手段の活用が企業にどのような影響を与えるかを検討します。これにより、投資家からの資金調達が容易になる可能性があります。
  • 投資家期待との整合性:投資家のESG目標や期待に対する企業の対応状況を評価します。投資家向け報告書の内容が具体的であることが求められます。

(2)経済的機会の創出

企業が持続可能な製品やサービスの開発を通じて新たな市場機会を創出しているかを分析します。 

  • 競争力のある市場ポジショニング:低炭素経済における競争優位性を確立する取り組みを評価します。これには、新興市場での展開や持続可能なイノベーションの導入が含まれます。

まとめ

本記事では、ESGデューデリジェンスの包括的なフレームワークを再構築し、多角的な視点で解説しました。今後の企業活動や投資判断において、ESGの重要性がますます増す中、この記事が一助となれば幸いです。

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