企業が知っておくべき印紙税の仕組みと対象文書
2018年9月22日
契約書や領収書の作成時に「収入印紙」を利用したことがある人も多いと思います。しかし、どのような場面で印紙税が発生するのかわからず、お困りの方も多いようです。本記事では印紙税とは何かについて説明するとともに、企業が知っておくべき印紙税事情についてまとめます。
印紙税(収入印紙)とは
印税士とは、契約書や領収書、手形などの文章作成者に対して課せられる国税です。印紙税法によって定められた課税対象物を作成した際に支払い義務が生じます。納付は、収入印紙を対象文書に貼り、消印することで完了します。
課税文書の確認方法
印紙税が必要かどうかは、印紙税法別表第一(課税物件表)に該当するかどうかにより決まります。ただし、文書の種類だけで決まるのではなく、条件に当てはまるかどうかが判断要因となることに注意する必要があります。例えば、同じ種類の書類であっても、記載する内容や個別の事例に応じて印紙税が対象となるかどうかが決まります。
印紙税の課税対象となっているのは以下で紹介する20種類の文書等です。
No. | 文書の種類 |
1 | ①不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書 ②地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書 ③消費賃借に関する契約書 ④運送に関する契約書 |
2 | 請負に関する契約書 |
3 | 約束手形、為替手形 |
4 | 株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託、特定目的信託若しくは受益証券発行信託の受益証券 |
5 | 合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設契約分割書 |
6 | 定款 |
7 | 継続的取引の基本となる契約書(契約期間が3ヶ月以内で、かつ更新の定めのないものは除く。) |
8 | 預貯金証書 |
9 | 貨物引換証、倉庫証券、船荷証券 |
10 | 保険証券 |
11 | 信用状 |
12 | 信託行為に関する契約書 |
13 | 債務の保証に関する契約書 |
14 | 金銭又は有価証券の寄託に関する契約書 |
15 | 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書 |
16 | 配当金領収証、配当金振込通知書 |
17 | ①売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書 ②売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書 |
18 | 預貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳 |
19 | 消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、金銭の受け取り通帳などの通帳 |
20 | 判取帳 |
なお、課税文書のうち、国や地方公共団体、その他非課税法人などが作成するものは非課税文書とされ、課税対象となりません(印紙税法第5条)。また、金額が少額なものも課税対象から除かれます。文章によって条件が異なりますが、例えば第1号や第2号に該当する文書においては契約金額が1万円未満のもの、第17号に該当する文書においては受取金額が5万円未満のものは課税対象から除かれます。
領収書の印紙税について
印紙税対象の文書の中で最も身近なものはおそらく「領収書」でしょう。領収書は上記の台17号「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」に該当するため、条件によっては印紙税の対象となります。
領収書の印紙税は、少額であれば印紙税の対象とはなりません。具体的には、領収書の金額に応じて以下の印紙税が適用されます。
記載金額 | 税額 |
5万円未満のもの | 非課税 |
5万円以上100万円以下のもの | 200円 |
100万円を超え200万円以下のもの | 400円 |
200万円を超え300万円以下のもの | 600円 |
300万円を超え500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 2,000円 |
消印について
印紙税は文書に収入印紙を貼り「消印」することで納付されたと認められます。よって消印を忘れてしまうと納付したとは認められず、税務調査で指摘を受けてしまう可能性があります。消印方法は、文書の作成者又は代理人、使用人その他従業員の印章又は署名です。
領収書を再発行した場合
領収書を再発行する場合において、たとえ金銭の受領が1回であっても、その受領事実を証明する目的で作成されるものである限り課税対象となります。また納税義務者は再発行を要請した得意先ではなく、受取書の作成者です。繰り返しの課税が発生しないように、領収書の再発行には企業としてルールを設けるなど、事前に対策を図る必要があります。
クレジットカード、電子マネーの支払の場合
クレジットカード決済の場合は、信用取引による売買に該当するため、印紙税の課税対象とはなりません。しかしながら、電子マネーで支払いを受けた際に領収書を発行した場合は、金銭又は有価証券の受取書に該当するので印紙税の課税対象となります。
電子マネー等の支払いで領収書が電子データとなる場合は、紙の文書ではないため印紙税の対象とはなりません。
印紙税の過怠税
印紙税の納付漏れや金額のミス等があった場合には、印紙税の過怠税を支払う必要が生じます。過怠税の額は、納めなかった印紙税額の1~3倍程度です。印紙税の納付漏れが悪質であると判断された場合には、通常の印紙税よりも大きな税が追加徴収されるため、気をつけましょう。
おわりに
本記事では、印紙税の仕組みや該当文書、領収証と印紙税の関係などについて紹介しました。印紙税は該当の文書を扱う際には必須である一方で、企業が忘れがちな税制でもあります。印紙税を正しく理解し、過怠税が発生しないように事前の対策を図りましょう。
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