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長谷川 祐哉 Yuya Hasegawa

この記事の著者

長谷川 祐哉 Yuya Hasegawa

パートナー  / 税理士

日本に進出した中国企業における会計税務の重要性と中国語対応可能な会計事務所・税理士に依頼するメリットとは

2023年10月30日

はじめに

(1)中国企業が日本市場へ進出する背景

中国企業が日本市場へ進出する背景には、様々な要因が影響していますが、まず日本は経済規模、高度な技術、消費市場の魅力などで世界的にも先進的な国家であり、これらの要素が中国企業にとって魅力的であると言えるでしょう。日本市場での成功を目指す企業にとって、会計と税務の適切な理解や運用は不可欠です。

日本市場の魅力
日本市場は近年多様なニーズを持つ消費者層を抱え、高度な技術とイノベーションが花開き、また比較的安定した政治環境となっております。これらの要素が組み合わさり、中国企業にとって日本市場は非常に魅力的な市場の1つとなっています。

多様な消費者層
日本市場は近年多様な消費者層により構成されてきており、異なるニーズと好みに対応できる製品やサービスに市場が開かれています。

高度な技術とイノベーション
日本は技術とイノベーションの分野で世界的なリーダーの一翼を担っており、多くの分野で新たなビジネスチャンスが生まれています。

政治の安定
比較的政治環境が安定しているため、ビジネスの予測がつきやすく、長期的な投資に適しています。

(2)会計と税務の適切な運用

新たな市場への進出には、多くの課題とリスクが伴います。特に、日本の会計と税務に関する適切な理解と運用は重要です。正確で適切な会計処理と税務戦略が企業の長期的な成功に直結し、また、法的リスクを最小限に抑え、資産の効率的な運用と収益の最大化を実現するためです。

この記事では、中国企業が日本に進出する際に直面する会計税務の課題とリスク、中国語対応可能な会計事務所・税理士に委託するメリット、成功事例等に焦点を当てます。すでに日本へ進出した中国企業、または日本への進出を検討している中国企業にとって、この記事が日本子会社の経営に関して一助となれば幸いです。

中国企業の日本進出における会計税務の課題

(1)日本の税制の概要

中国企業が日本市場に進出する際に直面する最初の課題の一つが、日本の税制の複雑さです。日本の税制はさまざまな税金や法令から成り立っており、その構造が外国企業にとって理解しにくいことがあります。

法人税
日本の法人税率は世界的に見ても高く、また、収益の種類によって税率が異なることがあります。したがって、中国企業は税法に準拠して自社の収益に対する適切な税金の計算と納税を行う必要があります。

消費税
日本の消費税は8%から10%に引き上げられ、また、2023年10月よりインボイス制度も導入されました。そのためより一層正確な消費税計算と申告が求められます。特に、消費財や飲食業界に進出する中国企業にとっては、これは理解が難しいポイントになります。

(2)日本における税務の特徴と困難性

複雑な税制
日本の税制は、特に外国企業にとっては複雑で理解が難しい場合があります。これら複雑な日本の税法を理解して適正な申告・納税を行うためには、十分な知識を有しておく必要があります。しかしながら後述しますが、他国の税制についての理解は難しいことから、信頼できる専門家の確保が不可欠です。

文化と言語の違い
言語や文化の違いによるコミュニケーションの課題が存在します。中国企業が円滑に日本市場に参入し、適切な税務戦略を策定するためには、これらの課題を克服する必要があります。中国出身者で日本での文化に慣れ親しんでいる協力者の存在も不可欠でしょう。

(3)異なる業界とビジネスモデルに応じた税務戦略

異なる業界やビジネスモデルに応じて適切な税務戦略を調整する必要があります。中国企業は自社の業界やビジネスモデルに合わせて税務戦略を適用し、日中両国の税務に関連するリスクを最小限に抑える必要があります。

リスク管理とコンプライアンス

(1)税務コンプライアンス

税務コンプライアンスは企業の健全な運営と成長に不可欠な要素です。税務コンプライアンスを適切に実施することで、企業は法的なリスクを最小限に抑え、適切な税金の計算・納付を行います。

税務申告と書類提出の期限
まずはなによりも税務申告と書類提出の期限を守ることが非常に重要です。適切な期限を守らない場合、企業は税務当局より加算税等の罰金を課せられる可能性があります。税金の申告と納付は正確かつタイムリーに行わなければなりません。

罰則
税務コンプライアンスを怠ると、企業は加算税等の罰金だけでなく、国税当局との法的トラブルに直面する可能性も高まります。適切な記録の保持と正確な申告手続きは不可欠です。

(2)中国と日本の違い

中国と日本の税制やビジネス文化の違いについて理解し、リスクと課題を解説します。これにより、中国企業が日本市場で成功するために必要な認識を高めることができます。

税法の違い
中国と日本の税法は異なり、それぞれ独自の規定と要件を持っています。これらの違いを理解し、適切な税務戦略を策定する必要があります。自国の当たり前の制度が外国においては当たり前ではないということが頻繁に起こります。

言語と文化の違い
中国と日本の言語と文化の違いによるコミュニケーションの課題が存在します。中国企業が日本市場に進出する際、言語スキルと文化の理解が重要です。税務当局や税務の専門化との付き合い方についても留意する必要があります。

中国語対応の会計事務所・税理士の役割

(1)主な業務内容

中国語対応の会計事務所や税理士は、日本に進出する中国企業に対して会計や税務の業務を中心としたサービスを提供します。法人向けサービスを提供する事務所と個人向けサービスを提供する事務所とで異なる部分もありますが、以下は主な業務内容の一部です。

経理業務のアウトソーシング
中国企業は日本市場での経理業務をアウトソーシングすることで、日本の会計に精通している専門家のサポートを受けつつ、同時に内部のリソースを節約できます。これにより、正確な財務データの管理を行うことができ、営業・マーケティングや研究開発等のコア業務に注力することができます。

税務コンサルティング
中国語対応が可能な税理士は、中国企業に対して適切な税務アドバイスを提供し、各種税法を遵守するための支援を行います。例えば、中国とは異なる源泉所得税、法人税、消費税などの制度に関して中国語で解説することができることでしょう。

法務領域に関するサポートアドバイス
日本の法律に関するアドバイスと法的支援に関しては弁護士や司法書士の領域ですが、中国語ができる弁護士などの法律専門家は多くはないため、中国語対応可能な税理士やコンサルタントが間に入ることにより、クライアントの法的リスクを最小限に抑えることに貢献することができます。

(2)日本における税務戦略

中国企業向けの税務コンサルティングの役割についてご説明します。適切な税務戦略を策定することは、税務リスクを最小限に抑え、同時に、最適なタックスプランニングを組むことに繋がります。

日本において税法を遵守することは、企業のコンプライアンスの観点からも非常に重要です。中国企業は、日本の会計基準や税法に依拠し、正しい決算、申告、納税手続きを行う必要があります。

中国語対応が可能な会計事務所の選び方のポイント

中国語対応が可能な会計事務所を選ぶ際には、以下のポイントを考慮することをお勧めします。クライアントのニーズに合った専門家と契約し、密に連携することが成功の鍵となります。

評判の確認

中国語対応可能な会計事務所の評判を調査し、過去のクライアントの評価を確認します。すべての事務所の実績について確認することは難しいとは思いますが、より信頼性の高い事務所を選ぶことが重要です。

専門性と経験

中国語対応可能な会計事務所の国際税務に関する専門知識と中国企業とのビジネス経験を評価し、クライアントの業界に適した専門家を選びます。面談時にこれまでの経験についてヒアリングすることが重要です。

コミュニケーション能力

中国語と日本語の双方を流暢に話す専門家とのコミュニケーションが円滑に行えることを面談時に確認します。適切なコミュニケーションが行われることで、会計基準や税法に関する誤解を防ぎ、提供されるサービスによる効果を高めます。

提供サービス

クライアントのニーズに合致するサービスを提供する会計事務所を選びます。どの会計事務所が自社の要望に柔軟に対応できるか検討すると良いでしょう。事務所の規模にもよりますが、税務だけしか提供できない事務所もあれば、会計・労務・法務など広範なサービスを提供できる事務所もあります。

成功事例

中国企業が日本市場での進出に成功した事例についてご紹介します。

成長と拡大
中国で上場している大企業は、日本に子会社を設立し日本市場に参入し、数年間で着実に成長と拡大を遂げました。会計・税務の専門家と提携し、コンプライアンスを遵守し税務リスクを下げることに成功しました。監査法人と税理士法人の独立性の観点から、最大手グループの監査法人と、準大手グループの税理士法人を活用されています。

新たな市場参入
中国国家の資本も入る中国企業は、日本に子会社を設立する形態を選択して日本に進出し、中国本土て展開している製品やサービスを日本市場に展開しました。会計と税務の専門家に加え、コンサルティングファームの支援を受け、スムーズな日本市場への進出を実現しました。

イノベーションと競争力
中国のスタートアップ企業は、日本に研究開発拠点を設立しイノベーションを推進し、国際競争力を高めました。会計と税務の専門家のアドバイスにより、商流・ビジネススキームを進出前に深く検討することができたため、リソースの最適化と効率的な運用が可能となりました。

RSM汐留パートナーズが中国企業に提供するサービス内容

RSM汐留パートナーズが提供する主要なサービスには以下が含まれます。

(1)会計サービス

  • 会計アドバイザリー
  • 記帳代行・支払代行
  • 連結会計支援
  • 開示書類作成
  • 会計基準の際に関するコンバージョン

(2)税務サービス

  • 国際税務アドバイザリー
  • 税務リスクマネジメント
  • 移転価格アドバイザリー

弊社には会計税務の専門家のみならず、様々なプロフェッショナルが在籍しています。人事労務、法務、コーポレートファイナンス等の領域に関してもワンストップで中国企業クライアントに向けてサービスを提供しております。中国人メンバーが10名以上在籍しており、広範なサービスに関して中国語対応が可能です。

RSM汐留パートナーズの特徴

RSM汐留パートナーズは、世界120ヶ国820か所以上に活動拠点を有する国際会計ネットワークの一つ、RSM Internationalの日本メンバーファームであり、国際的なネットワークのリソースにより、グローバル化・複雑化するクライアントのニーズに応えるとともに、最先端の高度な情報に基づき高品質かつ効率的な各種サービスを提供します。

日本でビジネス展開をする中国企業は、文化・言語の壁のみならず、様々な経営課題に直面しています。弊社は、中国語・英語を活かし、RSM International各国のチャイナデスクと連携し、中国企業の日本進出をサポートしております。

おわりに

中国企業が日本に進出する際、会計・税務の適切な理解と運用は非常に重要です。日本の税制は複雑であり、中国企業にとっては理解しにくい場合もあります。しかし、中国語対応の会計事務所や税理士のサポートを受ければ、これらの課題を克服し、日本市場での成功・拡大を実現できることでしょう。

日本市場は引き続き隣国である中国の企業にとって魅力的な市場であり、今後も日本への進出企業が増えることが予想されます。それにあわせて、中国語対応の会計事務所や税理士の需要も高まり、日中間のビジネス協力が一層強化されることを期待しています。

この記事では、中国企業が日本市場に進出する際の会計と税務の重要性、課題、リスク、中国語対応の会計事務所や税理士の役割、成功事例等についてご紹介しました。中国企業にとって、適切なサポートを受けながら日本市場での成功を収めるために、会計と税務の適切な運用は不可欠ですので、これらの専門家のサポートを大いに活用し、日本市場での成長と拡大を実現して頂ければと思います。

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