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松橋 亮太 Ryota Matsuhashi

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松橋 亮太 Ryota Matsuhashi

パートナー  / 税理士

日本における追徴課税とは?外資系企業が気を付けるべきポイントも紹介

2024年6月10日

はじめに

現在、多くの国において国税の税額確定に関し申告納税制度が採用されていますが、日本においても同様に申告納税制度が採用されています(一部、賦課課税制度が採られている税金あり)。この申告納税制度は、納税者の一人ひとりが自ら税務署へ所得等の申告を行うことで税額が確定し、確定した税額を自ら納付する制度であり、この制度が適正に機能するためには、納税者の高い納税意識と税法へのコンプライアンスが必要です。また、それに反する者に対する抑止施策の一つとして追徴課税があり、納税者による申告納税が適切に履行されなかった場合に追徴課税を課すことにより、当該申告納税制度を実行性のある制度として成り立たせています。

本記事においては、当該追徴課税の内容を解説し、また多くのケースで追徴課税のトリガーとなる税務調査、外資系日本企業が指摘されやすいポイントおよび対応策について解説します。

日本における追徴課税の種類と料率

日本において追徴課税は、①更正処分や修正申告により計算された本来納税すべき額と実際に申告納税した額との差額(納税不足額)、②延滞税、および③加算税の3つに大きく区分されます。③の加算税はさらに③-1過少申告加算税、③-2無申告加算税、③-3不納付加算税、③-4重加算税の4つに区分されます。②延滞税および③加算税はペナルティであり、課税所得計算上も損金算入できません。以下②延滞税および③加算税の内容、料率や計算方法を解説します。

②延滞税

延滞税は納付が遅れた本税に対する利息に相当するもので、法的納期限の翌日から完納する日までの期間に課せられます。遅延期間計算は日数計算となり、料率は法定納期限の翌日から2か月を経過する日までは年率7.3%、それ以降は年率14.6%となります。

一方、上記料率が市中金利の実勢よりかけ離れたものとなる可能性を鑑み、法定納期限の翌日から2か月を経過する日までは年率7.3%と(延滞税特例基準割合+1%)のいずれか低い料率、それ以降は年率14.6%と(延滞税特例基準割合+7.3%)のいずれか低い料率が適用されます。国税庁HPにおいて自動計算ツールが公開されておりますので、こちらに諸条件を入力することで延滞税を試算することが可能です。
参考資料:国税庁HP 延滞税の計算方法
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai.htm

※延滞税はあくまで本税を対象に料率を乗じて計算されるもので、加算税に対して当該税金は課せられません。

※延滞税特例基準割合とは、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1パーセントの割合を加算した割合をいいます。令和6年における延滞税特例基準割合は1.4%と公表されています。

③加算税

以下各加算税の概要を解説します。自主的に修正等を行うことによって加算税が低減・免除されるケースもあり、過去税務業務が杜撰で脱税当の懸念があるという会社は、税務調査が入る前に状況を正確に把握し、自主的に修正申告をするということも選択肢として有効です。

③-1 過少申告加算税

期限内に申告を実施している場合について、その後修正申告・更正があった場合における加算税です。課税割合は増差本税に対し10%(期限内申告時における納税額と50万円のいずれか多い額を超える部分については15%)となります。当該過少申告課税は納税者自らミスに気付いて修正申告するといった更正を予知しない自主的な修正申告の場合は、不適用として課税されないため、ミスに気づいた際は自主的に修正申告することが有効です。

③-2 無申告加算税

期限内に申告を実施しなかった場合の加算税です。期限後ではあるものの自主的に期限後申告をした場合、課税割合は増差本税に対し5%となります。しかし、税務署から指摘を受け期限後申告をする場合、課税割合は増差本税に対し15%(50万円を超える部分に対しては20%、300万円を超える部分に対しては30%)となります。無申告加算税は非常に高い料率によるペナルティが課せられますが、これは先に述べた申告納税制度の根幹を揺るがす無申告という申告義務違反に重いペナルティを課すことで制度の定着と発展を図っているという背景があります。

③-3 不納付加算税

源泉徴収税について法定納期限(原則翌月10日)内に納付されなかった場合の加算税です。課税割合は増差本税に対し10%です。当該不納付について、納税者が自主的に気付き納付する場合、課税割合は増差本税に対し5%となります。ただし、法定納期限から1月以内にされた一定の期限後の納付の場合は、不適用として課税されません。源泉徴収税は支払いを受ける側の税金について支払いを行う側にあらかじめ源泉徴収・代行納税させる制度ですが、源泉徴収義務は支払側にあるという点が重要です。源泉徴収義務は支払側にあるため、源泉徴収漏れに対するペナルティも支払側に課せられます。

③-4 重加算税

仮装隠ぺいが発覚し、税務署により脱税を指摘された場合における加算税です。③-1過少申告課税、③-3不納付課税に代えて課税割合は増差本税に対し35%です。また、無申告の場合、③-2無申告課税に代えて課税割合は増差本税に対し40%です。

※加算税に関する詳細につきましては、以下財務省より資料が公表されております。
参考資料:財務省 加算税の概要
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf

日本における税務調査

多くのケースで税務調査の対象となる期間は過去3年間分です。しかし、国税通則法第70条第1項には過去5年間分まで遡ることができるとされており、また脱税や不正還付といった虚偽が疑われる場合、最長7年間分まで税務調査対象となる可能性がある点には留意が必要です。脱税や不正還付といった虚偽が疑われ、7年間分まで税務調査対象となると重加算税に加え延滞税を合わせると非常に高額なペナルティ負担になりえます。

通常、税務調査の前に税務署から事前通知を受けることとなります。通知を受けた際には速やかに顧問税理士に報告し対応方法の判断を仰ぐことが重要となります。特に以下にて解説する指摘されやすいポイントについてはあらかじめ顧問税理士と打ち合わせし、資料に不備や漏れがないかを確認することをおすすめします。

外資系日本企業に対する税務調査の動向

国税庁より公表されている「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」によると、当事務年度における主要な取組として①消費税還付申告法人に対する取組、②海外取引法人に対する取組、および③無申告法人に対する取組の3点を公表しています。

③は申告納税制度を成り立たせるための根幹を揺るがす無申告納税者に対する取組であり、日本で事業を行うすべての納税者が対象となるものです。一方、①消費税還付申告法人に対する取組は主なケースとして海外売上の免税売上が生じ還付となっているケースが本概要にて挙げられています。また、本概要の別表5にまとめられているように、②海外取引法人等にかかる実地調査件数が令和3年6,676件(前年対比146.1%)、令和4年10,394件(前年対比155.7%)とここ数年急増し、税務署が海外取引に関する消費税、法人税に対する取組に重きを置き強化していることが推測され、外資系日本企業に対する税務調査としては近年税務トピックとなっていると考えられます。さらに②海外取引法人等に対する取組を細かく見ていくと、主な調査事例として移転価格に関連する調査、海外居住者(個人・法人とも)への支払いに対する源泉徴収漏れに関連する調査が明示されています。

参考資料:国税庁 「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/hojin_chosa/pdf/01.pdf

外資系日本企業に対する税務調査で指摘されやすいポイント

外資系日本企業に対する税務調査の動向で見てきた様に、海外取引が税務署の取組強化のトピックとなっていると考えられる中、特に指摘されやすいポイントとしては、やはり「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」にて明示されている移転価格に関連した指摘、および源泉徴収漏れに関連した指摘になってくると考えられます。実際にこれらは今までも外資系日本企業に対する税務調査の指摘ポイントではあったのですが、動向を見るにさらに強化されていると考えられるため、これまで以上に税務調査に備えた対応が必要です。

1. 移転価格

全世界的にトピックとなっている移転価格税制というものがあり、これは法人が国外取引により所得を他の国に移転させることを防止するために設けられた制度です。多国籍企業においては、親子会社間や兄弟会社間で取引を行うケースも多く、そのような取引では取引価格を自由に決めることも可能です。そのように第三者間で行われる取引価格とは異なる価格で取引を行うことにより、不当に所得を他の国に移転させることができてしまいます。

そこで、日本法人が国外関連者(親子関係や兄弟関係のある外国法人又は実質的な支配関係のある外国法人など)と取引を行った場合に、国外関連者から支払いを受ける対価の額が独立企業間価格に満たないとき、又は国外関連者に支払う対価の額が独立企業間価格を超えるときは、その取引は独立企業間価格で行われたものとみなすことにより、所得の移転を防止する制度です。日本の税務署としては日本の所得が不当に国外に移転されていないかという視点で調査してくるため、外資系日本企業としては、国外関連者との取引価額が妥当なものであり、不当に所得が国外に流出していないことを示す必要があります。

2. 源泉徴収漏れ(特に使用料の支払いに関する源泉徴収漏れ)

源泉徴収漏れに関しましては、使用料以外については特に判断が必要とされる箇所は少なく、基本的にはミスによる源泉徴収漏れを指摘されます。そのため、こちらに対しては源泉徴収漏れの原因を把握し、漏れをなくしていくことが有効となります。一方、使用料については、該当取引が使用料(ロイヤリティ)に該当するか否かの判断が難しいケースが多く、税務調査にて該当取引を使用料認定され源泉徴収漏れという指摘を受けてしまうケースが見受けられます。

外資系日本企業が税務リスクを低減させる方法

先に述べた外資系日本企業の税務調査で特に指摘されやすいポイントに対し、有効な対応策を解説します。

1. 移転価格に関する指摘に対する税務リスクを低減させる方法

移転価格に関する指摘に対する有効な手段として、移転価格税制で作成が要求される文書を適時適切に作成し、また文書の精度を上げることが重要となります。移転価格文書作成には非常に高度なスキルが要求されるため、専門家に依頼することが一般的ですが専門家によっても文書のクオリティ、説得力が大きく異なってくる非常に難易度の高い文書となります。そのため、専門家の選定の段階で既に税務調査対応が始まっているといっても過言ではないです。片方の国(日本)の事情のみを考慮して作成できるものではなく、両国間の事情を考慮に入れて文書化していく必要があるため、国際税務に明るく、かつ両国への知識を有した経験豊富な専門家が適任です。

2. 源泉徴収漏れに関する指摘に対する税務リスクを低減させる方法

源泉徴収漏れは主に①源泉徴収対象取引の認識漏れ、および②租税条約適用申請漏れにより生じます。

①の源泉徴収対象取引の認識漏れを防ぐために海外居住者(個人・法人ともに)へ支払いを行う場合には源泉徴収の必要性について都度確認を行うことをおすすめします。日本国内取引では源泉徴収の対象とならない性質の取引であっても海外取引であれば源泉徴収となるケースが多々あり注意が必要です。また、申告納税期日については日本では源泉所得税は翌月の10日が申告納税期限ですが、海外取引にかかる源泉所得税に関しても当該期日は同様です。

次に②の租税条約適用の申告漏れについてですが、海外取引にかかる源泉所得税は租税条約を適用することにより、日本国内法と租税条約それぞれに規定されている税率のうちいずれか低い方が適用されます。海外取引の相手居住国との租税条約内容によって異なりますが、多くのケースで租税条約を適用することにより源泉所得税率が低減されますため、租税条約を適用することは経営上においても重要です。注意すべき点は、当該租税条約は自動的に適用されるわけではないという点で、上記の通り、租税条約を適用することにより、源泉徴収税率を低減させることが可能ですが、一方、適用申請を失念し低減税率にて源泉徴収を行ってしまっている場合、源泉徴収漏れとなります。租税条約を適用するか否かは任意ですが、適用申請しないのであれば国内法に従った源泉徴収が必要になる点留意が必要です。

主な源泉徴収漏れは以上の①、②の通りですが、もう1点付け加えると、使用料(ロイヤリティ)に関する源泉徴収漏れの指摘が多くなされます。これは、租税条約における使用料に該当するか否かが明確でないケースが多く、判断の余地があるためです。会社は当該取引について使用料ではなくサービス料の支払いと判断し租税条約を適用することにより源泉徴収無しとして処理した一方、税務調査において当該取引を使用料として税務署に認定され、源泉徴収漏れとして追徴課税の指摘をうけるケース等があります。海外支払取引については送金前に都度顧問税理士に確認をすることや、使用料か否か判断の余地のある性質の取引については顧問税理士と相談し契約書の記載内容を検討し、取引の性質を明確にしておくなどの対応策が有効になります。

まとめ

本記事にて見てきた通り日本の税務署として税務調査のトピックは海外取引であると言えるため、必然的に海外取引が多い外資系日本企業はこれまで以上に税務リスクを認識し対処する必要があります。海外取引について税務調査で指摘を受け、外資系日本企業において追徴課税されたとしても、相手国サイドで自動的に当該是正が反映されるわけではないため、グループ間における移転価格や源泉徴収漏れなどに起因する指摘についてはグループ全体で二重課税となってしまう可能性があります。また、グループ間以外の源泉徴収漏れであっても、源泉徴収漏れが生じた金額について相手先より返金を受けるということも簡単ではないケースが多く、ペナルティに加え、本税についても支払側で負担せざるを得なくなるケースも生じえます。

そのため、規定ペナルティ料率以上に負担を強いられる可能性を秘めていることを認識し、本記事にて解説した対策を講じていくことが重要になります。また、事前に自主的な修正申告をすることにより不適用となる加算税もあるため、過去の税務業務に不安がある場合においてもまずは会社の状況を正確に把握したうえで、必要に応じて修正申告の必要性も選択肢にいれながら顧問税理士と対応について検討していくことをおすすめします。

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