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前川 研吾 Kengo Maekawa

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前川 研吾 Kengo Maekawa

ファウンダー&CEO  / 公認会計士(日本・米国) , 税理士 , 行政書士 , 経営学修士(EMBA)

IPOによるNASDAQ(ナスダック)上場事例:ハートコア

2023年11月29日

日本企業がIPOによってNASDAQ上場した事例として、ハートコアを取り上げて深堀りしていきたいと思います。会社概要・上場概要から申請書類の提出スケジュール、上場時の財務数値をまとめています。

会社概要

NASDAQに上場したのはハートコア株式会社の親会社である「HeartCore Enterprises, Inc.」という会社になります。しかし、こちらは持株会社であり実際に事業を行っているのは子会社であるハートコア株式会社であるため、会社概要はハートコア株式会社を中心に見ていこうと思います。

商号ハートコア株式会社
所在地東京都品川区東五反田1-2-33 白雉子ビル3F
設立2009年6月
代表代表取締役社長 神野 純孝(本名:山本 純孝)
事業内容デジタルトランスフォーメーション(DX)を支える様々なソリューションの開発・販売・保守
  • デジタルマーケティングテクノロジーを利用したCMS(コンテンツ管理)及びCXM(顧客体験管理)の 開発・販売・保守
  • RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)の開発・販売・保守
  • プロセスマイニング・ソリューション「myInvenio」「Apromore」の販売・保守
  • タスクマイニング・ソリューション「CONTROLIO」の販売・保守
  • 3D-VR撮影(Matterport)+オリジナルサービス「VR360」の開発・販売・保守
  • 経営コンサルティング業務
資本金1億円

ハートコアは、東京を拠点とする主要なソフトウェア開発企業であり、2つの事業部門を通じてソフトウェアを提供しています。

1つ目の事業部門は、カスタマーエクスペリエンス事業です。当該ビジネスはマーケティング、セールス、サービス、およびコンテンツ管理システムなどから成る「CXMプラットフォーム」を含み、企業がカスタマーエクスペリエンス全体で顧客を引き付け、関与させるためのツールや統合機能を提供しています。また、CXプラットフォームを活用して成功するための教育、サービス、およびサポートも提供しています。

2つ目の事業部門は、デジタルトランスフォーメーション事業です。ロボティクスプロセスオートメーション、プロセスマイニング、タスクマイニングを提供し、企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させています。また、大企業の特定のニーズをサポートするソフトウェアを開発するための技術革新チームも運営しています。

また、実際に上場した親会社「HeartCore Enterprises, Inc.」は2021年5月18日にデラウェア州で設立され、子会社であるハートコア株式会社を通じて事業活動を行っています。

上場概要

ハートコアは2022年2月にNASDAQ Capital Marketへ新規上場しました。上場の方法としては、米国の持株会社であるHeartCore Enterprises, Inc.がIPOした形になります。日本のハートコア株式会社はその子会社として事業を行っています。

ティッカーシンボルは「HTCR」で、発行される株数は3,000,000株となっています。(オーバーアロットメントオプション行使時に最大で3,450,000株)。公開価格は1株$4.00から$6.00の範囲で、上場申請時においては1株$5.00を前提としています。

IPO前の普通株式の発行済み株式総数は2022年2月8日時点で15,915,943株であり、IPO後は発行済み株式数18,915,943株になる予定です。調達した資金の用途は、技術開発、他社の買収(M&A)、運転資金、一般的な企業目的に充てられる見込みと上場申請書類には記載されています。

また、公開後12か月間は、会社、取締役および役員全員、発行済み証券の1%以上を所有する者は、代表の事前の書面による同意なしに普通株式を売却しないことに同意しています。配当ポリシーについては、IPO後普通株式に現金配当を実施する予定はないようです。

なお、上場の際の外部関係会社は以下の通りです。

  • 証券会社:Boustead Securities, LLC
  • 弁護士法人:Anthony L.G., PLLC
  • 監査法人:MaloneBailey, LLP

上場申請書類の提出スケジュール

ハートコアの上場申請書類の提出スケジュールは以下の通りです。

日付内容
2021/11/21DRS(上場申請書類のドラフト)を提出
2021/12/9提出したDRSに対するSECのコメントレターを受領
2022/1/3S-1(上場申請書類)を提出
2022/1/20提出したS-1に対するSECのコメントレターを受領
2022/1/25S-1のコメント箇所を修正し再度提出
2022/2/7提出したS-1に対するSECのコメントレター再度受領
2022/2/8S-1のコメント箇所を修正し再度提出
2022/2/9上場申請書類が承認
2022/2/10424B4 Prospectus(目論見書)が発行

出典:EDGARを基に作成

このように最初に書類を提出してから約3か月間SECとやり取りを行い、複数回にわたって申請書類修正し、上場が承認されました。

上場時の財務数値

ハートコアが提出した上場申請書類S-1に記載されている上場時の財務数値は次の通りです。

科目2020年12月期
総資産10,356,802ドル
純資産△1,060,272ドル
売上高9,026,463ドル
当期純利益150,955ドル

出典:HeartCore Enterprises, Inc.S-1

上場の背景

上場時にハートコア株式会社の代表取締役社長 神野純孝氏は以下のようにコメントしています。

「当社は日本で設立し、事業展開してまいりました。そのような中、日本経済を活性化させるためにグローバル展開が必須と感じ、この度の上場によりシリコンバレーを中心としたIT技術を日本にも展開し、日本経済も活性化させたいと考えております。また技術だけでなく、働き方・給与体系についてもグローバルで戦える体制を整えてまいります。」

引用:ハートコアHP(https://www.heartcore.co.jp/news/20220214.html

このようにNASDAQ上場の背景には、事業のグローバル展開・日本経済の活性化が挙げられています。

その他

今回取り上げているハートコアはその会社自身が上場したわけではなく、親会社として米国の「HeartCore Enterprises, Inc.」を持ち、その親会社がNADAQ Capital Marketに上場した事例である点に留意して頂きたいと思います。

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