新設された在留資格「特定技能」が建設業に従事する外国人労働者に与える影響-従来からの在留資格「技能実習」との相違点
2024年9月9日
はじめに
本コラムでは、2019年4月1日に施行された「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律(以下、改正出入国管理法)」に従い、外国人労働者の受け入れ拡大を図り人材不足の解消をすすめるために新設された在留資格「特定技能」について、建設業への影響を確認します。
在留資格「特定技能」が建設業に与える影響
①「技能実習」と「特定技能」
建設業における外国人労働者の在留資格の代表として、「技能実習」があります。この「技能実習」は、日本の技能、技術、知識を移転することで発展途上地域の未来を担う人材づくりを目的としているため、労働者の需給の調整手段ではないとされています。一方で今回、改正出入国管理法において新設された「特定技能」は、人材不足の解消を意図した単純労働を含む外国人労働者の在留資格で、「技能実習」とは全く別の趣旨となります。
以下の表にて、技能実習と特定技能の制度を比較してみます。
技能実習と特定技能の比較
技能実習 | 特定技能 | |
---|---|---|
目的 | 国際貢献の一環としての外国人研修 | 人材不足への対応としての労働力確保 |
在留期間 | 技能実習1号:1年以内 技能実習2号:2年以内 技能実習3号:2年以内(計、最長5年) | 特定技能1号:最長5年 特定技能2号:更新により上限なし |
技能水準 | なし | 特定技能1号:相当程度の知識又は経験 特定技能2号:熟練した技能 |
入国時の試験 | なし | 特定技能1号:技能水準、日本語能力水準を試験で確認(技能実習2号修了者は試験免除) 特定技能2号:技能水準を試験で確認 |
家族の帯同 | 不可 | 特定技能1号:不可 特定技能2号:可 |
転籍・転職 | 原則不可。ただし、実習実施者の倒産等やむを得ない場合、2号から3号への移行時などは転籍可。 | 同一の業務区分内、又は試験によりその技術水準の共通性が確認されている業務区分間において転職可能。 |
上図の通り、技能実習者としての外国人労働者は、研修が目的であることから、技術取得後は母国に帰国する前提であり、単純労働は目的に適さないとされていました。これに対し、特定技術者としての外国人労働者は、即戦力となる人材確保の目的で入国していることから、建設現場の単純労働者としても受け入れ可能な点で、大きく異なっています。
②建設業界における外国人の受け入れ規模
技能労働者の高齢化と引退及び処遇未改善による若者の入職回避などの問題から人材不足が深刻化している建設業は、「特定技能1号」及び「特定技能2号」の対象業種どちらにも挙げられています。このことからも、今後ますます外国人労働者の受け入れが増えていくことが考えられます。
おわりに
改正出入国管理法において新設された「特定技能」の在留資格で働く外国人には、日本人と同等以上の報酬を支払うよう定められています。しかし現在、建設業界は技能実習生としての外国人労働者に対する低賃金や劣悪な労働条件といった問題を抱えています。業界が直面する構造的な問題である人材不足への対応には、外国人労働者受け入れ窓口の拡大以外にも、早急な根本的な部分での労働環境の改善や整備が重要になってくるでしょう。