税務デューデリジェンス(税務DD) | RSM汐留パートナーズ
税務デューデリジェンス(税務DD)
M&A(合併・買収)の局面では、財務デューデリジェンスに加えて、対象会社の抱える過去の税務リスクや税務ポジションの調査を行うために、税務デューデリジェンスを実施することが重要です。RSM汐留パートナーズでは、税務やデューデリジェンスの専門家がチームを組成し、M&A(合併・買収)の局面で対象会社の税務デューデリジェンスを実施します。
税務デューデリジェンスの目的
税務デューデリジェンスは、一般的には以下を目的として実施されます。
1. 対象会社の抱える過去の税務リスクを把握する
税務リスクは、法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税、消費税・地方消費税税等多くの税目に内在しています。典型的な税務リスクとしては、買収後に税務調査があり、過年度の税務処理や税務申告書の内容に誤りがあり、追徴課税を受けるというものです。そのリスクを事前に定量的に計算するという目的があります。
2. ストラクチャーを策定するために対象会社の税務ポジションを把握する
M&Aスキームによって税務上のリスクが生じないかという観点も重要です。ストラクチャーを策定するために対象会社の税務ポジションをあらかじめ把握しておくことも税務デューデリジェンスの目的の1つです。例えば、組織再編税制に係るリスクや欠損法人の欠損金利用に関するリスク等を検討します。
3. バリュエーションへの反映
税務デューデリジェンスにより明らかになった税務リスクは、企業価値評価(バリュエーション)において重要な考慮事項となります。特定された税務リスクは、企業価値に直接影響を及ぼす可能性があり、定量的に計算の上買収金額や契約条件の調整において考慮されます。
4. PMI計画の策定に役立てる
税務デューデリジェンスの成果は、経営統合プロセス(Post-Merger Integration、PMI)計画の策定においても考慮すべきものとなります。特定された税務上の問題は、統合プロセスにおいて対処すべき重要な項目であり、効果的かつ効率的な経営統合を実現するためのPMI計画に反映されます。
税務デューデリジェンスを行うタイミング
税務デューデリジェンスは、M&A(合併・買収)のプロセスにおいて適切なタイミングで行われる必要があります。例えば、以下は税務デューデリジェンスを行うべき主なタイミングです。
1. 取引の初期段階
取引の検討が始まった初期段階で税務デューデリジェンスを行うことにより、潜在的な税務リスクや税務論点を早期に把握することに役立ちます。これにより、買収価格の交渉、契約条項の検討、リスクへの対応に関して一定の情報に基づいたアプローチを取ることができます。ただし、この段階において実施するケースはまれであり、すでに税務リスクが顕在化している場合や重要性を有している場合などです。
2. 意向書(LOI)の交渉前
M&買収の意向書(Letter of Intent、LOI)の交渉前に税務デューデリジェンスを行うことで、交渉過程における買収条件の設定に具体的な税務リスクや税務論点の内容を反映させることが可能です。すでに税務リスクが顕在化している場合や重要性を有している場合が想定されます。
3. 詳細なデューデリジェンスのフェーズ
買収対象企業に関する詳細なデューデリジェンスが実施される段階で、財務デューデリジェンスと並行して税務デューデリジェンスを行います。このフェーズで税務デューデリジェンスを行うことが一般的で、全体的な税務リスクの評価を行い、より深い理解を得るためにも重要です。
4. 買収後の統合計画策定時
買収完了後に税務デューデリジェンスを実施することは通常はありませんが、統合計画を策定する際に税務デューデリジェンスの結果を活用することで、税務面での統合戦略を効果的に策定できます。
税務デューデリジェンスの流れ
税務デューデリジェンスは、一般的には以下の流れで実施します。
Step
01 ヒアリング等を通じて対象会社の事業内容や商取引の流れを把握する
対象会社の税務リスクを把握する上で、事業内容や商取引の流れを把握することは極めて重要です。経常的な取引については事業内容をよく理解して税務リスクがないか検討し、また、非経常的な取引については、金額的あるいは質的に重要なものは個別に税務処理に問題がないかを検討します。税務デューデリジェンスが財務デューデリジェンスと同時に行われる場合には、チーム間・担当者間で情報を共有して効率的に実施される必要があります。
Step
02 過去の税務調査の内容や税務当局との争いの内容について確認する
過去の税務調査の内容については、実際に修正申告や更正の決定となった事項や、それ以外に税務調査時に検討の場に上がったが修正には至らず要改善事項となっている論点等も含めて網羅的に確認を行います。また、過去・現在において、税務当局と争いとなっているものがあればその内容について確認を行います。
Step
03 ヒアリング等を通じて対象会社内で議論されている事項について確認する
税務調査で指摘を受けていなくても、経理や税務の担当者あるいは顧問税理士が自身で税務リスクの存在を認識している論点等が存在することがあります。そのような場合には、当該事項についても確認を行いますので、関連する方々へのヒアリングが重要となります。
Step
04 税務申告書等の内容をレビューし分析を行う
調査対象税目の税務申告書等の内容をレビューし、単純な計算ミスから認識誤りなどを含めて問題のある事項がないか分析を中心に調査を行います。課税所得の計算過程が正しいか、申告調整項目におかしなものがないか、税額控除の適用に問題がないか等について検討します。
Step
05 会社固有の税務論点について深堀する
例えば国際的に事業を行っている会社、海外に関係会社を有していて取引がある会社などにおいては、移転価格税制、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)、過小資本税制、租税条約、PE認定、源泉税、出向者人件費の寄付金認定リスク等の詳細な項目について把握し、必要に応じて1つずつ深堀りしていきます。
Step
06 税務デューデリジェンスの結果をまとめたレポートを作成し報告会を行う
税務デューデリジェンスを行った結果について、調査対象者がレポートにまとめます。その内容については、ドラフト段階で一部ヒアリング担当者へ確認を行うなどして、内容に誤りがないよう慎重に作成していきます。レポートの作成が完了したら、関係者が集まった報告会を行います。財務デューデリジェンスや企業価値算定の報告と合わせて報告会が行われることもあります。
税務デューデリジェンスの調査対象法人
税務デューデリジェンスの調査対象となる法人は、例えば以下のような法人になります。
税務デューデリジェンスの調査対象税目
税務デューデリジェンスの調査対象税目は多岐にわたりますが、例えば以下のような税目を中心に実施します。
税務デューデリジェンスの調査対象期間
税務デューデリジェンスの調査対象期間は、一般的に買収対象企業の過去の税務状況を包括的に理解するために定めなければなりません。通常、この期間は次のように設定されます。
- 標準的な期間
多くの場合、過去3年間が調査対象とされますが、5年間とすることもあります。この期間は、企業が直面する可能性のある税務リスクを十分に把握し、評価するのに一般的に適切であるとされています。
- 特定の要因による調整
企業が過去に重大な再編、事業モデルの変更、または税務調査を経験している場合、それらの出来事が含まれるように調査期間を延長することがあります。また、特定の業種や事業活動に特有の税務リスクがある場合も、より長い期間をカバーすることがあります。
- 地域や国による違い
調査対象期間は、買収対象企業が事業を行っている地域や国の税法にも依存します。一部の国では、日本よりも長期間の税務記録を要求する場合もあります。
最終的に、税務デューデリジェンスの調査対象期間は、買収対象企業の状況、取引の複雑性、潜在的な税務リスクの性質などに基づいて個別に決定されます。
税務デューデリジェンスの調査対象項目
税務デューデリジェンスでは、買収対象企業の税務に関する様々な側面について検討を行います。以下は、税務デューデリジェンスにおいて重点的に調査される主要な項目です。
税務デューデリジェンスの実施者・実施期間
税務デューデリジェンスは、企業のM&Aプロセスにおいて、財務デューデリジェンスとともに重要な役割を果たすプロセスであり、その実施には専門的な知識と経験が必要です。一般的に税務デューデリジェンスは、税理士法人や会計事務所の税理士の資格を持つメンバーを含むチームによって実施されます。
税務デューデリジェンスの実施期間は、対象となる企業の事業規模や複雑さ、調査の範囲によって異なります。一般的に、調査とレポーティングのプロセスには2~3週間程度が必要とされます。しかし、状況によってはさらに短期間で完了することもあり、特に緊急性が高いケースでは1週間程度で実施されることもあります。一方で、調査すべき項目が多岐にわたる複雑なケースでは、より詳細な分析が必要となり、実施期間が1ヶ月以上となることもあります。
税務デューデリジェンスを行う上での注意点
税務デューデリジェンスを行う際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを適切に考慮することで、効果的な税務デューデリジェンスを実施し、M&Aに関連する税務リスクを適切に評価・管理することが可能となります。
税務デューデリジェンスにより税務リスクが認識された場合の対応
税務デューデリジェンスによって買収対象企業の税務リスクが認識された場合、適切な対応戦略を立てることが重要です。対応策は税務リスクの性質と重要性に基づいて異なりますが、一般的には以下のようなステップを踏むことになります。
税務デューデリジェンスと財務デューデリジェンスの連携
税務デューデリジェンスと財務デューデリジェンスは、企業のM&A(合併・買収)プロセスにおいて重要な役割を果たしますが、これら二つのデューデリジェンスは密接に関連しており、効果的に連携させることで、より総合的で正確な企業評価が可能になります。
1. 連携の重要性:総合的な企業評価が可能となる
財務デューデリジェンスは、企業の財務状態、利益、キャッシュフローなどを評価します。税務デューデリジェンスは、税務コンプライアンス、過去および将来の税負担、税務リスクなどを中心に行います。両者を連携させることで、財務面と税務面の両方から総合的に企業評価を行うことができます。
2. 情報の共有と分析:デューデリジェンス実施結果の相互活用
M&財務デューデリジェンスで得られた情報は、税務デューデリジェンスにおける税務リスクの特定や評価に役立ちます。逆に、税務デューデリジェンスの結果は、財務状態の再評価や将来の財務計画の策定に重要な情報を提供します。
3. 統合された評価の活用:戦略的な意思決定や交渉が可能となる
税務と財務の両面から得られる情報を組み合わせることで、M&A取引の戦略的な意思決定や交渉を行うことが可能になります。これには、取引価格の調整、契約条項の最適化、リスクマネジメント戦略の策定などが含まれます。
税務デューデリジェンスと財務デューデリジェンスの連携は、M&A取引の成功において重要です。M&Aに関する予算の関連で、ディール金額が小さい場合には財務デューデリジェンスのみにとどめるケースも多いのが実情ですが、税務リスクを見落とすことにより、M&Aが失敗とならないように留意すべきです。
買収対象会社が外国法人となるクロスボーダー案件では税務デューデリジェンスが特に重要な理由
買収対象会社が外国法人となるクロスボーダー案件の税務デューデリジェンスは、特に注意を必要とします。異なる国々に存在する税制度の複雑さと理解の難しさに起因するためです。各国独自の税制度があり、その複雑性は単に税率や税目の違いに留まらず、申告方法や頻度、税務調査の方法や頻度、税に関連する法律や規則、さらに租税条約などにも及びます。
ここで留意すべき点は、財務デューデリジェンスや株価算定業務を日本の専門家に依頼したとしても、税務デューデリジェンスは通常日本の専門化では対応が難しいという点です。国内の専門家は日本の税制に精通しているかもしれませんが、買収対象会社が外国法人となるクロスボーダー案件では、対象国の税務について精通している専門家のサポートが必要となります。
日本在住の日本の有資格者であれば、対象国の税務については明るくないことが一般的ですので、対象国でラインセンスを持つ専門家へ依頼することをおすすめします。当社グループではRSMのネットワークを通じてクロスボーダー案件へのご対応も可能です。
RSM汐留パートナーズの税務デューデリジェンスの特徴
フットワークが軽くスピード感をもったご支援が可能
デューデリジェンスはタイムリーであることが求められるため、スピード感が非常に重要になります。また、とりわけ税務デューデリジェンスに関しては対象会社の抱える税務リスクや税務ポジションの調査を網羅的、多角的に行うことが求められますが、それは時間をかければいいというものではありません。クライアントのニーズにフットワーク軽くお応えし、網羅性とスピード感を両立した税務デューデリジェンスをご提供いたします。
公認会計士による財務DDと税理士による税務DDのワンストップサービス
当社は広範な領域をカバーするプロフェッショナルの集まりです。その特性を活かし、ワンストップで多角的なデューデリジェンスをご提供することで、クライアントのコストは勿論、時間の無駄も省くことで、コストパフォーマンス向上に貢献します。財務デューデリジェンスと税務デューデリジェンスを同時に進めながら、必要に応じて法務デューデリジェンスや労務デューデリジェンスをご提供可能です。
海外ネットワークを用いたクロスボーダーでのサポートが可能
昨今、M&Aをはじめとしてクロスボーダーの取引は、ニーズが高まっております。国内市場縮小に直面する日本企業にとって、海外進出をはじめとしたクロスボーダーの取引は今後ますます避けては通れないものとなります。当社は加入している国際会計グループであるRSMのネットワークを最大限活用し、海外企業のM&Aに関する財務・税務デューデリジェンス等の業務をご提供いたします。
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ご契約
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税務デューデリジェンス(税務DD)の料金体系
税務デューデリジェンス(税務DD)の料金体系については想定業務範囲に基づく想定工数から算出した定額方式又はタイムチャージ方式にてお見積をさせていただいております。ご相談事項によっては、定額方式でのご支援が難しい場合もございますが、RSM汐留パートナーズはクライアントのご予算内で費用対効果抜群のサービスをご提供させていただくことをミッションとしています。まずはお気軽に当社コンサルタントまでご相談ください。