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RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年2月号

2024年2月1日

2024年度税制改正大綱・2024年問題について・自社株買いの留意点

日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「2024年度税制改正大綱」、労務より「2024年問題について」、司法書士法人より「自社株買いの留意点」について取り上げます。

労務よりお伝えする「2024年問題」は、2019年4月より適用が始まっている労働時間の上限規制に関わるものです。大企業は2019年、中小企業でも2020年から適用が開始された罰則付きの労働時間の上限規制について、適用を猶予されていた業種の猶予期限が、2024年4月1日に迫っていることから注目されています。この問題について、規制の適用に向けて対応が急がれている建設業や運送業、医療の業種ごとに規制適用に係るポイントを確認しています。直接影響のある業種は限られますが、改めて労働時間の上限規制についてご確認頂く機会になるかと思いますので、是非ご確認ください。

 

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はじめに

今回は、2024年度税制改正大綱の中で、個人所得税における注目論点を取り上げます。

所得税・個人住民税の定額減税

居住者の2024年分の所得税額から特別控除の額が控除されます。即ち、合計所得金額が1,805万円以下の納税者の所得税額から、本人及び配偶者を含めた扶養家族1人につき、2024年分の所得税3万円、個人住民税1万円の減税がなされます。給与所得者の場合の減税実施方法は、所得税は2024年6月1日以後最初に支給される給与等(賞与を含む)の源泉徴収額から特別控除の額を控除し、個人住民税は2024年6月の給与支給時の特別徴収は行わず、特別控除の額を控除した金額を11分割した金額を、2024年7月から2025年5月までに支給給与から毎月徴収するといった方法となります。事業所得者等や公的年金等の受給者の場合も同様の考えで、2024年分の納付額、もしくは受給される公的年金等の源泉徴収税額から特別控除の額が控除されます。

ストックオプション税制の利便性向上

1.株式保管委託要件の緩和
非上場会社が発行したストックオプションで、権利行使により交付される株式が譲渡制限株式である場合に、証券会社等への株式の保管委託が不要となり、発行会社自身により、当該譲渡制限株式の管理が可能となります。

2.年間の権利行使限度額の限度額引上げ
ストックオプションを行使した際の経済的利益部分で課税の繰り延べができる1年あたりの権利行使価額の限度額が、現行の1,200万円から、設立5年未満の会社は2,400万円に、設立後5年以上20年未満の非上場会社及び上場後5年未満の上場会社は3,600万円に引き上げられます。

3.新株予約権付与対象者の拡充等
ベンチャーキャピタル等から最初に出資を受ける時点で、資本金の額5億円未満、かつ従業員数900人以下といった要件が撤廃され、社外高度人材の対象範囲が拡大されました。

子育て世帯支援に関する政策税制

1.住宅ローン控除の拡充
子育て特例対象個人が認定住宅等の新築等をして、2024年中に入居した場合の住宅借入金の控除対象借入限度額が上乗せされます(認定住宅は500万円、ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅は1,000万円)。

2.生命保険料控除の拡充
23歳未満の扶養親族がいる場合に、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の適用限度額が、現行の4万円から6万円に引き上げられます(合計適用限度額は、現行の12万円から変更なし)。

おわりに

前回から2回に渡って2024年度税制改正大綱を見てきました。取り上げた論点以外にも消費課税のプラットフォーム課税の導入、国際課税のグローバルミニマム課税やCFC税制の見直し等、重要論点はあります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

 

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「2024年問題」について

今回は、厚生労働省が推進している働き方改革の中でも、「2024年問題」といわれている、建設業・運送業・医師等に新しく適用される時間外労働上限規制について、業種ごとのポイントを解説し、対象企業が求められる労務管理について見ていきたいと思います。

1.概要

働き方改革の一環として、労働基準法に時間外労働の上限が規定され、2019年4 月から適用されていましたが、一部の事業・業務については、適用が 5 年間猶予されていました。2024年4月からは適用猶予が終了し、他の企業と同様の規制が適用されることになります。
適用が猶予されていた事業・業務は以下の通りです。

  • 工作物の建設の事業(建設業)
  • 自転車運転の業務(運送業)
  • 医業に従事する医師(医療)
  • 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業

バスやタクシー、トラック運転手、建設業や医師等の業種は特に、これまでにも長時間労働が問題となっており、労働者の健康と労働環境を改善すべく、政府が様々な取組みを進めています。特設サイトも開設されています。是非ご参照ください。

適用猶予業種の時間外労働の上限規制 特設サイト はたらきかたススメ|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

それでは、業種ごとのポイントをまとめていきます。

2.建設業の場合

2024年4月以降、災害時における復旧及び復興の事業を除き、時間外労働の上限規制が原則通りに適用されます。建設業はその性質上、プロジェクトの進行状況や天候などの要因により、時間外労働が発生しやすいことが問題となりますが、事業主はこれまで以上に労働時間管理や労働生産性の向上が求められます。

また、いわゆる「手待ち時間」や「移動時間」、「着替え、作業準備等の時間」、「安全教育などの時間」が労働時間にあたるのかどうか、という問題も、きちんと把握しておく必要があるでしょう。

3.運送業の場合

自動車運転者は、特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となります。なお、一般の労働者と異なり、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制及び、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されません。

さらに、運送業の場合は「改善基準告示」も改正されるため、1年・1ヶ月の拘束時間、1日の休息期間の変更点を見直しておきましょう。詳細はこちらです。

自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示) |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

4.医師の場合

医師には、以下の上限規制が適用されます。

  • 特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外・休日労働の上限が最大1860時間(※)となります。
  • 時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制は適用されません。
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されません。
  • 医療法等に追加的健康確保措置に関する定めがあります。
    ※ 令和5年4月発行 医師の働き方改革2024年4月までの手続きガイド.pdf (mhlw.go.jp)

5.求められる労務管理

労働時間短縮のためには、デジタル化や自動化などの新しい技術を導入し業務の効率を向上させなければなりません。これまでの業務内容を見直し、さまざまな「ムダ」を1つずつなくしていきましょう。さらに、長時間労働を業界の常識と認識されている場合も多く、経営者層の労務管理に対する意識改革も求められます。

 

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はじめに

株式会社が発行済みの株式を株主から買い取りたい(株主が自己が保有する株式を発行会社に売りたい)というニーズがあったときに、どのような手続きが必要となるでしょうか。株式会社が、発行した株式につき特定の株主から合意により有償で取得するときは、会社法が定める手続きを踏むことが求められており、当該特定の株主との合意のみによって取得することはできません。無償で自己株式を取得するのであれば、他の株主の権利を害することはありませんので、発行会社と株主の合意のみによって取得することが可能です。ここでは、種類株式を発行していない非公開会社である取締役会設置会社が、特定の株主から有償で自己株式を取得する手続きの概要を記載しています。株主との合意に基づく取得を前提としていますので、強制的に取得するのであれば株式併合等の手続きをご検討いただくことになります。

分配可能額を確認する

自己株式の取得には分配可能額による財源規制が定められていますので、自己株式の取得をするときはその効力発生日における分配可能額を超えないよう注意が必要です。分配可能額がない場合はそもそも有償での自己株式の取得をすることができません。

定款の内容を確認する

定款に会社法第164条第1項の定めがあるかどうか確認します。この定めがある場合、特定の株主以外の株主に対して下記「株主への通知」をする必要がなくなるため手続きを行いやすくなります。

株主への通知

定款に別段の定めがない場合、下記株主総会の1週間前までに、下記④に自分も追加することを下記株主総会の3日前までに請求することができる旨を通知します。

株主総会の決議

株主総会の特別決議によって、次の事項を定めます。この株主総会において④に該当する株主は、他の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合を除き、議決権を行使することができません。

①取得する株式の数
②株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及びその総額
③株式を取得することができる期間(1年以内)
④下記⑴乃至⑷の通知を特定の株主に対して行う旨及び対象となる株主

取締役会の決議

株主総会の決定に従い、取締役会の決議によって次の事項を定めます。

⑴取得する株式の数
⑵株式1株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
⑶株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額
⑷株式の譲渡しの申込みの期日

特定の株主への通知

株式会社は、上記④の株主に対し、取締役会で定めた事項を通知します。

譲渡しの申込み

通知を受けた上記④の株主は、その申込みに係る株式の数を明らかにして、その有する株式の譲渡しの申込みをします。

自己株式の取得

株式会社は、取締役会で定めた⑷の期日において、上記④の株主が申込みをした株式の譲受けを承諾したものとみなされます。対価を株主に支払い、株主名簿を書き換えて手続きは終了です。