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RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年3月号

2024年3月1日

新NISA制度の概要・2024年10月からの社会保険適用拡大・デジタルノマドビザ

日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「新NISA制度の概要」、労務より「2024年10月からの社会保険適用拡大」、行政書士法人より「デジタルノマドビザ」について取り上げます。

労務で取り上げる「社会保険適用の拡大」は、パート・アルバイトなどの短時間労働者の社会保険適用に関わるものです。現在は、従業員数101人以上の企業でなければ、短時間労働者は社会保険に加入する必要はありません。これについて、2024年10月以降は、従業員数が51人以上の企業は短時間労働者を社会保険に加入させる必要があります。この論点について、社会保険の加入要件や副業・兼業等の注意点などについてまとめています。

多くの企業にとって影響のある論点かと思いますので、今月のニュースレターをご確認頂き、自社の見直しにお役立てください。

 

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はじめに

2024年1月から新NISA制度が開始され、多くの人が税務メリットを享受しつつ、資産形成を図れるようになりました。今回は、確定申告期限が近づく中で、新NISA制度の概要や、税務メリット/デメリットについて、改めて見ていきたいと思います。

新NISAの概要

新NISAでは、非課税保有期間が無期限化され、年間投資上限額が360万円(内、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円)に拡充されました。その上で、富裕層に恩恵が偏らぬよう、生涯投資枠1,800万円(内、成長投資枠は1,200万円が上限)が設定されています。即ち、これらの投資枠内で、新NISAで取得した株式等を売却した場合には、翌年にその売却株式等の購入時の金額分の投資枠が復活することになります。新NISAについてポイントをまとめると以下の通りです。

新NISAのポイント

つみたて投資枠成長投資枠
年間投資枠120万円240万円
非課税保有期間無期限化
非課税保有限度額1800万円(内、成長投資枠は1,200万円が上限)
口座開設期間恒久化
対象年齢18歳以上
投資対象商品金融庁の基準を満たした長期・つみたて・分散に適した投資信託等上場株式や投資信託等

税務メリット

新NISAの最大の税務メリットは、投資から得られる利益である配当金や株式等売却益が非課税になる点です。即ち、通常、株式等の配当金や売却益に対しては、約20%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の税金がかかりますが、NISA口座で受け取った株式等の配当金や売却益に対しては課税されません。また、確定申告時にこれらの利益を申告する必要がなく、手続き面でも簡素化が図られている面もメリットといえます。

税務デメリット

NISA口座で損失が出た場合、その損失を、他の特定口座や一般口座の利益と損益通算(*1)することができません。よって、損失発生時には、課税口座を利用して投資した場合よりも税負担が大きくなる可能性があります。

(*1)損益通算とは、税務上、一定期間内に生じた利益と損失を相殺することができる制度を指します。これにより、全体としての納税額を減少させることが可能となります。

また、NISA口座では損失の繰越控除(*2)が認められていない点も、損失発生時に、課税口座利用時よりも税負担が大きくなる要因といえます。

(*2)繰越控除とは、損失をその年の利益と相殺しても控除しきれない場合に、翌年以降に繰り越して利益と相殺し、納税額を減少させることができる制度をいいます。株式や投資信託の損失は最大3年間繰越可能とされています。

おわりに

新NISA制度は、日本において個人の資産形成を大きく後押しするものとなるでしょう。但し、NISA口座では投資から得られる利益が非課税になる一方で、損失発生時に損益通算や損失の繰越控除ができないといったデメリットも理解しておく必要があります。これらを踏まえた上で、税務メリットを最大限に活用すべく、長期的な視点で資産運用することが重要と思われます。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

 

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2024年10月からの社会保険適用拡大について

2022年10月1日より「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が施行されたことでパート・アルバイトなどの短時間労働者(以下「パート・アルバイト従業員」といいます)の社会保険適用範囲が拡大されています。2024年10月からは、社会保険に加入する対象がさらに広がり、従業員数51人以上の企業も対象となります。

今回は、2024年10月からの社会保険適用拡大について、より詳細に探っていくこととしましょう。

1.対象となる企業は従業員数51人以上

現行の法律では、従業員数(ここでの「従業員数」とは、厚生年金に加入している被保険者数のことを指します)が101人以上の企業でなければ、パート・アルバイト従業員は社会保険に加入する必要はありません。ところが、2024年10月からはこの人数要件が変更され、51人以上の企業であればパート・アルバイト従業員でも社会保険に加入させる必要があります。

従業員が51人以上かどうか、特に100人以下で51人以上の従業員がいる企業は、新しく拡大される対象事業所です。まずここが大きな区切りとなります。自社の従業員数の把握、対象労働者がいるかどうかの確認を進めましょう。

2.パート・アルバイト従業員の加入要件4つ

従業員数が51人以上の企業だった場合、次の4つの要件にすべて該当するパート・アルバイト従業員が社会保険に加入することになります。

  1. 1週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 賃金の月額が88,000円以上であること
  3. 雇用期間が2か月超見込まれること
  4. 学生でないこと

ここで注意すべきポイントは、4つの要件「すべて」にあてはまるかどうかです。どれか1つでも該当しない場合は対象とはなりません。パート・アルバイト従業員のうち、誰が対象者となるのか、早期のチェックが必要です。

3.副業や兼業に注意

正社員のようなフルタイマーとは異なり、短時間の勤務となるパート・アルバイト従業員は、副業や兼業といった掛け持ちをしているケースも多くみられます。この場合は、「被保険者所属選択/二以上事業所勤務届」という届出が必要となります(参照 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き|日本年金機構 (nenkin.go.jp))。

4.対象従業員とのコミュニケーション

社会保険に加入すると、ご家族の扶養から外れてしまったり、給与から社会保険料が控除されることで手取額は少なくなってしまったりことがあることから、社会保険への加入に消極的な従業員もいるかもしれません。そのため、社会保険に加入するメリットを理解していただいたり、今後の働き方について話し合ったり(手取りが減らないように、労働時間を増やしたい、など)と、事前にコミュニケーションを取っておくことが望ましいです。

2024年10月からの社会保険適用拡大に備え、対象となる企業では即座な対応が不可欠です。パート・アルバイト従業員の労働条件の確認、対象労働者の把握や整理、どういった届出が必要になるのかなど、ステップを踏んで柔軟かつ適切な対策を進めましょう。

厚生労働省からも特設サイトが開設されていますので是非参考にしてみてください。

51ninijyou.pdf (nenkin.go.jp)

 

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はじめに

国際的にリモートで働く「デジタルノマド」のためのビザが創設され、3月末までに制度開始予定とされております。以前からこのようなビザの問い合わせは企業様からいただいておりましたが、適切な在留資格がなくアドバイスに窮しておりました。今回は現在まで明らかになっている事項についてご説明させていただきます。

創設の背景と各国の制度

新型コロナウイルス感染の前の世界と後の世界で劇的に変化があったものとしてテレワークの普及があります。これにより世界のどの場所にいても仕事が可能という産業や特定の人物が増えました。場所に縛られることなく、世界中を旅行しながらIT技術を活用して自分のペースで働くいわゆる「デジタルノマド」は世界全体で3500万人ほどいるとされております。このような情勢を背景に日本政府も海外企業に勤めるITエンジニアらが日本に在留しやすくなる資格の創設に至りました。一定の条件を満たせばタイは5年、スペインは1年以上滞在できるという専用の資格があり、英国、ドイツ、台湾にも類似の制度があります。

どのような要件が必要か

現在わかり得る要件としては大きく3つ挙げられております。

  1. 査証免除国かつ日本と租税条約も締結する国・地域の国籍
  2. 年収1000万円以上
  3. 民間医療保険に加入

1の査証免除国とは、観光や親族訪問など短期滞在で日本へ来るときは本来ビザ(査証)の取得を必要とされているところ、ビザ(査証)手続きが免除措置がされている国・地域のことです。日本は70の国・地域に対してビザ免除措置を実施しております。例えばアメリカもその1つでこれによりアメリカ国籍の外国人はビザ(査証)なしで日本に観光(短期滞在)に来ることができます。

租税条約とは二重課税の除去や脱税や租税回避の防止等を目的としたものです。

年収は1000万円以上とされており、民間医療保険の加入も要件とされております。また、民間医療保険に加入を条件に家族の帯同も許可される見込みです。

日本の就労ビザの多くに必要とされる日本企業との契約は必要なく、6カ月の滞在が許可される予定です。在留期間の更新が可能か否かは現時点では言及されておりません。

その他注意事項

すでに多くの企業様からお問い合わせをいただいており、関心の高さが伺えます。3月末の制度開始となりますが入管法の問題はもとより、税法や労働関係諸法令についても知識が必要なところです。当グループであれば税法、労働関係諸法令についてもグループ内の税理士法人、社会保険労務士法人でワンストップで対応可能です。

デジタルノマドのビザに関して何かご質問等があればいつでもご連絡いただければと存じます。