ホーム/コラム/会計・税務/日本でのビジネスをサポートする士業(会計士、税理士、社労士、弁護士、行政書士、司法書士)の役割と違い
シェア
前川 研吾 Kengo Maekawa

この記事の著者

前川 研吾 Kengo Maekawa

ファウンダー&CEO  / 公認会計士(日本・米国) , 税理士 , 行政書士 , 経営学修士(EMBA)

日本でのビジネスをサポートする士業(会計士、税理士、社労士、弁護士、行政書士、司法書士)の役割と違い

2024年6月19日

はじめに

日本でのビジネス活動を成功させるためには、関連する法律や会計・税務の知識が不可欠です。これを支えるのがいわゆる「士業」と呼ばれる専門職です。

士業とは、「○○士」のような国家資格を有した専門的な職業を意味します。

日本の代表的な士業として以下の6つがあげられます。

  • 公認会計士
  • 税理士
  • 社会保険労務士
  • 弁護士
  • 行政書士
  • 司法書士

この記事では、これら日本における主要な6つの士業の役割とその違いについて詳しく説明します。

公認会計士

公認会計士は日本では一般的に会計士と呼ばれ、主に企業の財務諸表の監査業務を行います。監査業務とは、企業の財務諸表が適正に作成されているかどうかを独立した立場から検証することであり、投資家や金融機関に対する信頼性の向上に寄与します。その他にも、会計士は財務アドバイザリー業務やコンサルティング業務も手掛けることがあり、企業の経営戦略や内部統制の強化にも役立ちます。

このうち、監査業務については公認会計士の独占業務であり、日本では公認会計以外が監査業務を行うことができません。

公認会計士は後述する税理士と混同されますが、その違いは主に業務範囲にあります。
公認会計士は監査業務が中心であり、税務申告の代理は行いません。一方、税理士は税務申告や税務相談を専門としています。

税理士

税理士は、企業や個人の税務申告を代行し、税務相談を行います。日本の税制は複雑で頻繁に改正されるため、専門知識を持つ税理士のサポートが不可欠です。また、税理士は節税対策や税務調査対応など、クライアントの税務リスクを最小限に抑えるための助言も行います。

税理士にも公認会計士と同様に独占業務があり、「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」がそれに該当します。

税理士は上述の会計士とは異なり、業務範囲が税務に特化しています。会計士が財務諸表の監査を主な業務とするのに対し、税理士は税務申告や税務相談を中心に行います。

社会保険労務士

社会保険労務士は、日本では社労士と略されて呼ばれることもあります。

労働基準法や社会保険法令に基づく手続きの代理や相談を行います。具体的には、労働条件の整備や就業規則の作成、労働保険・社会保険の手続き代行、人事・労務管理のコンサルティングなどです。社会保険労務士の業務は、企業の人事労務部門の負担軽減や労働問題の未然防止に役立ちます。

労働及び社会保険に関する法律に基づいて申請書や帳簿の作成・提出手続の代行が社会保険労務士の独占業務となります。

社会保険労務士の業務は会社の人事労務に特化しています。弁護士が法律全般に関する業務を行うのに対し、社会保険労務士は労働法や社会保険法に特化しています。

弁護士

弁護士は、法律に関する幅広い業務を担当します。企業法務、訴訟代理、契約書の作成・チェック、法律相談などが主な業務です。企業法務では、取引先との契約締結やトラブルの予防、訴訟リスクの分析などを行います。

弁護士は法律全般を扱うのに対し、他の士業は特定の分野に特化しています。例えば、行政書士は書類作成を専門とし、司法書士は不動産登記や商業登記を専門とします。

行政書士

行政書士は、行政手続きに関する書類の作成や提出代行を行います。具体的には、許認可申請書や契約書、定款の作成などです。行政書士は、ビジネスの立ち上げや運営に必要な各種許認可の取得をサポートします。

行政書士は書類作成とその手続き代行に特化しており、法的代理権を持ちません。弁護士や司法書士とは異なり、裁判所での代理人として活動することはできません。

司法書士

司法書士は、不動産登記や商業登記の手続き、簡易裁判所における訴訟代理などを行います。不動産取引の際の登記手続きや、会社設立時の商業登記手続きをサポートすることで、企業の法的安定性を確保します。また、相続手続きや遺言書作成の支援も司法書士の重要な業務です。

日本で会社を設立しようとした際に、登記に関しての手続の代理で手続を行えるのは司法書士のみになります。

司法書士は主に登記手続きを専門とし、弁護士とは異なり、簡易裁判所での訴訟代理に限定されています。弁護士が法律全般を扱うのに対し、司法書士は登記手続きに特化しています。

各士業の海外との比較

各士業について、海外ではどのように呼ばれ、どのような位置づけになっているのでしょうか。

公認会計士

海外では、会計士は一般的にCPA(Certified Public Accountant)と呼ばれ、企業の財務諸表監査や税務相談、経営コンサルティングを行います。米国や欧州では、会計士が幅広い業務を担当することが一般的です。

税理士

税理士に相当する職業は、米国ではTax ExpertやEnrolled Agentと呼ばれます。税務に特化した業務を行い、税務申告や税務相談を担当します。

社会保険労務士

社会保険労務士に相当する職業は、米国ではHuman Resources ConsultantやLabor Law Specialistとして知られています。労働法や社会保険に関するコンサルティングを提供します。

弁護士

弁護士は世界中で存在し、法律に関する業務を広く扱います。米国ではLawyerもしくはAttorneyと呼ばれ、企業法務や訴訟代理を行います。

行政書士

行政書士に相当する職業は、国によっては存在しない場合もありますが、Administrative Scrivenerとして知られています。行政手続きや書類作成の代行を行います。

司法書士

司法書士に相当する職業は、米国ではJudicial Scrivenerとして知られています。不動産登記や商業登記の手続きを行います。

外資系企業が日本に進出する際の士業の活用

外資系企業が日本に進出する際、各士業の専門家を適切に活用することが重要です。

外資系企業で想定される各士業の活用方法は以下の通りになります

公認会計士

日本の会計士基準に沿った会計処理、または本国親会社が適用する会計基準に沿った会計処理を行えるよう助言を受ける。

税理士

日本の税制に準じた税務処理・税務申告を代行してもらう。

社会保険労務士

人事労務管理体制の整備や日本の労働基準法や社会保険法に基づく手続きを適切に行う。

弁護士

契約書の作成や法的リスクの分析などの企業の法務面のサポートを受ける。

行政書士

事業の立ち上げや運営に必要な各種許認可の取得を協力してもらう。

司法書士

会社設立時の登記手続きを依頼する。

士業に依頼の際の注意点

士業に依頼する際の注意点として、以下のポイントがあります。

専門性の確認

士業の専門分野を確認し、必要な業務に適した専門家を選定することが重要です。

コミュニケーション

日本語が主な業務言語となるため、英語対応が可能な士業を選ぶか、信頼できる通訳を用意することが推奨されます。

費用の確認

事前に費用の見積もりを確認し、費用対効果を考慮した上で依頼することが大切です。

おわりに

日本でのビジネスを成功させるためには、各分野の専門知識を持つ士業のサポートが不可欠です。公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁護士、行政書士、司法書士は、それぞれが特定の役割を持ち、企業の法務、税務、人事労務、登記手続きなど多岐にわたる業務を支えています。

これらの士業を理解し、適切に活用することで、企業は法令遵守を徹底し、事業運営の安定性を確保することができます。また、外資系企業が日本市場に進出する際には、これらの専門職のサポートを受けることで、法制度の違いを乗り越え、スムーズにビジネスを展開することが可能となります。各士業の特性を踏まえた上で、信頼できる専門家を選び、効果的に活用することが、事業拡大の鍵となるでしょう。

お問い合わせ